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再生エネ活用、独で浸透
中小も売電、小遣い稼ぎ
再生可能エネルギーの普及に熱心な国として知られるドイツ。今や太陽光、風力などで生み出される電力は国内全体の約4分の1を占め、国民にとってきわめて身近な存在だ。一般家庭や中小企業は電気料金の値上げに悲鳴を上げるが、一部の中小企業は自ら発電を始めて「小遣い稼ぎ」するなど自己防衛に走る。
ドイツ鉄道が誇る高速鉄道「ICE」から車窓を眺めると、ドイツは再生エネ大国だということを痛感する。広大な用地に敷かれた太陽光パネルが突然現れたかと思えば、数十分後には10基あまりの白い風車がゆっくり羽根を動かす姿が飛び込んでくる。
2013年のドイツの総発電量に占める再生エネの比率は23.4%。10年前の03年は7.5%だったのが急激に拡大し、過去最高を更新し続けている。メルケル政権が決めた22年までの脱原発方針に基づき、再生エネシフトが順調に進んでいるようにみえる。
投資に動くのは発電会社ばかりではない。昨年から初の電気自動車(EV)の生産を始めたBMW。東部ライプチヒの工場に自ら風車4基を設置した。理論上はEVの生産に必要な電力は自社の風力発電機で生み出すことが可能で、余剰分は他のラインにも供給することができる。
BMWの場合、走行時に化石燃料を使わないEVの「グリーン価値」を高めるため、発電も見直す狙いがあった。資金力のある大企業ならではともいえるが、興味深いのは中小企業にも広がっている点だ。
「当社のビールの環境貢献アピールが半分、外から買う電力を減らすのが半分なんですよ」。独西部ワルシュタインにあるビール醸造会社、ワルシュタイナーのフスターマイヤーさんはこう明かしてくれた。
同社はこれまで500万ユーロ(約7億円)以上を投じ、自社の敷地に風車とコージェネレーション(熱電併給)システムを設置。自家消費の拡大で電力会社からの購入分を減らし、合計で年間130万ユーロを削減した。最終的に投資額は800万ユーロに達する可能性があるが、それでも6年あまりで回収できる計算だ。
背景には、政府が保証した再生エネの高値での固定価格買い取りと電気料金の急上昇がある。欧州連合(EU)統計局によると、ドイツの13年の産業用電力の料金は1キロワット時あたり0.086ユーロ、家庭用は同0.14ユーロ。産業用の場合、水準としてはEU平均(0.094ユーロ)を下回るが、05年と比べた上昇率は86%。昨年加盟のクロアチアを除くEU27カ国でみると同期間で最も高い伸び率だった。
原因は燃料となる原油・天然ガス価格の上昇に加え、再生エネ普及にかかったコストを電気料金に上乗せする「賦課金」。賦課金は14年、前年比18%増えた。
ただし政府は「国際競争力を損ねないため」として、鉄鋼、化学などエネルギー消費量が多い企業には賦課金の減免措置を導入。その分のしわ寄せは中小企業や一般家庭に及ぶ。
もっとも再生エネが高値で買ってもらえるのを逆手にとって「自給自足」から一歩進んで、売ってしまう考え方もありだ。独北部の港町、ハンブルクでカフェを運営するランゲさんはもともと「再利用できるエネルギーを考えていた」。
8年前に自らの建物に10万ユーロを投じて小型の風力発電機を設置した。昨年には太陽光発電所にも参画した。かつては年間で11万キロワット時を購入していたが、半減に成功した。さらに太陽光が寄与して昨年は約17ユーロ(約2400円)の売電収入もあったという。
独政府は電気料金の上昇を抑えるため、再生エネの導入量に上限を設けたり、陸上風力の買い取り価格を下げたりする方針という。「政府は一貫性がない」と中小企業の関係者は批判する。中小は国内が地盤で、大企業のように低コストの新興国にすぐ新工場をつくるわけにもいかない。政策に振り回されながらも、したたかに生き延びる策を練っている。
(フランクフルト=加藤貴行)
ドイツの再生可能エネルギー法 風力、太陽光など再生可能エネルギーの普及拡大を目的に2000年に施行された。政府が送電会社による固定価格での買い取りを保証し、新規の発電事業参入を促したのが特徴だ。市場価格との固定買い取り価格の差額分の総額は「賦課金」という形で電気料金に上乗せされる。日本も類似した制度を12年7月から導入した。
二酸化炭素(CO2)削減やエネルギーの自給率向上という目標が根底にある。また再生エネビジネスで世界を先導する産業政策の思惑もあった。ただ、ドイツの多くの太陽光パネルメーカーが、市場の伸び鈍化や中国製の割安品との競合で破綻・撤退するなど必ずしも成功とはいえない。
[日経新聞5月27日夕刊P.2]
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