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『おひさまエネルギーファンド株式会社に関する証券取引等監視委員会の勧告』
についてのISEPの見解と提起
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2014年5月16日付けで、証券取引等監視委員会(以下、「委員会」)からおひさまエネルギーファンド株式会社(本社:長野県飯田市、代表取締役:原亮弘、以下「おひさま社」)に関して上記の勧告が行われています。
おひさま社の市民ファンドは、当研究所が当初の立ち上げから今日に至るまで、密接な支援・協力関係にあること、および当研究所が全国各地で支援・協力している地域エネルギー事業の関係者のみなさまとも無関係ではないことから、このたびの証券取引等監視委員会による勧告(以下、「勧告」)の内容に関する当研究所の解説と見解を述べるとともに、誤解の見られる複数の報道について是正すべき点を提起いたします。
1. 委員会勧告とそれに対するおひさま社の説明
証券取引等監視委員会の題記勧告は、同委員会ホームページにて公開されています(5月16日付「おひさまエネルギーファンド株式会社に対する検査結果に基づく勧告について」)。
それを受けて、「おひさま社」の説明も同社ホームページにて公開されています(5月17日付「証券取引等監視委員会の検査結果に基づく勧告について」)。
委員会からの重要な付言
委員会からの勧告の際には、上記各指導と合わせて、おひさま社には以下の意見が付言されていますので、ここに再掲いたします(出所:おひさまエネルギーファンド社ホームページ)。
私的な流用や、資金の消失は認められないこと
実態のない事業に対する出資募集ではなく悪質なものではないこと
当社を始め再生可能エネルギー分野への健全な投資が進むことに期待して改善を促すための勧告であること
2. 委員会勧告に関する当研究所の解説と見解
勧告のポイントは、以下の2点です。それぞれ解説とISEP見解を述べます。
分別管理の状況に関する勧告
当局への虚偽報告に関する勧告
@ 「分別管理の状況」に関する勧告
第二種金融商品取引業者(本件ではおひさま社)は、金融商品取引法の規制によって「分別管理」を求められています。
「分別管理」とは、文字どおり「出資者のお金を分別して管理すること」を意味します。
市民ファンドの場合、匿名組合契約のファンド出資者の持分(出資者のお金)と匿名組合契約の営業者(自分のお金)との分別、および、営業者が複数のファンドを運営している場合には、ファンドごとの収益がわかるようにする資産の分別があります(ある事業への出資者のお金と別の事業への出資者のお金の分別)。
今回のケースでは、おひさま社は、市民ファンド毎に会社(営業者)を立てていることを持って「分別管理ができている」(すなわち、特定の営業者=特定の市民ファンド)という認識のもとで運営してきていたものです。当然、弁護士・税理士とも相談しての運用でした。
ところが金融庁では、営業者固有の銀行口座と匿名組合契約のファンド出資者の口座を分けるよう指導しており、両者の認識間でずれがあり、結果として委員会から分別管理が不徹底との勧告と指導が行われました(参考図)。
なお、前記「重要な付言」で述べたとおり、委員会も「悪質なものではない」こととしていることに加えて、おひさま社は金融商品取引法が成立(2007年)する以前(2005年)から事業で区分した会社毎の分別を行ってきていた事情を考えれば、これまでの運用で「分別管理ができている」という解釈していたことは十分に理解できるものと考えます。
「流用」の有無について
一部の報道で「流用」とされた件ですが、こちらも2つの営業者の間で「一時的な資金の貸借」であり、委員会も「私的な流用や、資金の消失は認められない」と付言しています。
この「一時的な資金の貸借」が営業者固有の資金融通であれば、法的に何ら問題がなかったのですが、参考図にあるとおり銀行口座を分けたかたちでの分別管理を行っていなかったために、金融商品取引法が認めていないファンド間の資金流用と見えなくもない、というグレーゾーンの状況から改善を勧告されたものです。
この運用を「流用」と書いた報道機関は明らかに行き過ぎであり、「誤報」もしくは憶測に基づく「飛ばし記事」と批判されてもしかたのない報道と指摘できます。
自然エネルギー市民ファンドについて
(株)自然エネルギー市民ファンド(以下「市民ファンド社」)は、いわばおひさま社の「兄貴分」として2001年から自然エネルギーに関する市民ファンド事業を行ってきており、2007年の金融商品取引法の成立と同時に、おひさま社と同様に第2種金融商品取引事業者の資格を得ています。
その市民ファンド社は、現在、ISEPの協力のもとで、石狩厚田・会津・小田原・山口の「日本全国ご当地エネルギー市民ファンド」を公募していますが、これらはいずれも各営業者に対して固有の資金と出資者の資金を銀行口座単位で分別管理していることを確認した上で、それぞれの市民ファンドを募集代行しており、このたびの委員会勧告の指摘には該当しないことを申し添えておきます。
A「当局への虚偽報告」に関する勧告
上記のとおり、おひさま社は、会社毎の分別をもって「分別管理」できているという解釈と認識のもとで関東財務局長による平成25年6月28日付の報告徴取命令に基づく報告をしていることから、これを「虚偽報告」とすることは表現が適切とは思えません。
今回の検査によって是正勧告を受けている事項であることから、せいぜい「遡っての報告修正」が適切と考えます。
3. 一部報道機関の報道のあり方についての是正の提起
今回の委員会勧告に関する各報道機関の中には、疑問を感じざるを得ない報道がいくつか散見されました。
中でも委員会勧告の前日(5月15日)に先行報道したNHKとそれに追随したいくつかの報道(*)は、明らかに事実誤認を含んでいる上に、視聴者に大きな誤解を招きかねない表現ぶりで報道しており、公正中立な報道規範を侵害する重大な問題をはらんでいる恐れがあると考えます。
問題のあると思われるいくつかの報道
NHK首都圏 5月15日11時44分「太陽光発電会社 資金を流用か」(リンク切れ)
NHK全国 5月16日18時06分「資金流用の太陽光発電会社への処分を勧告」
毎日新聞「長野のファンド:再生エネ資金管理ずさん 監視委勧告へ」(牧野宏美記者) 2014年05月15日 12時36分(最終更新 05月15日 13時45分)
産経新聞「出資金ずさん管理、太陽光ファンドに行政処分 監視委勧告へ」(無署名記事) 2014年05月15日 13時33分
日本経済新聞「長野のファンドに行政処分勧告へ監視委、ずさん管理で」(無署名記事) 2014年05月15日 13時50分
朝日新聞「太陽光投資会社に処分勧告 監視委方針、資金ずさん管理」(伊木緑記者) 2014年5月15日16時30分
上記の報道で「流用」という表現や「ずさん」という、委員会も付言で否定したネガティブなレッテル張りが行われたことは、おひさま社の信用を著しく毀損する恐れがある上に、出資者をはじめとする多くの関係者に誤解や心配を与えた可能性があると思われます。
このことは、たとえば同じ「金融商品取引法違反で業務改善命令」である以下の事件は「運用失敗」どころかはるかに悪質であるにもかかわらず、以下の報道は、ことの重大性を含めて著しくバランスを欠いた報道と言わざるを得ません。
朝日新聞「厚生年金基金106億円損失 プラザアセット社運用失敗」2014年5月21日05時48分
報道機関各位におかれては、少なくとも、せめて関係当局の公表の後に、しっかりと事実関係を検証していただくとともに、バランスの取れた報道をしていただきたいと存じます。
また、上記で該当する報道機関におかれては、速やかに紙面上でおひさま社に対する謝罪表明や訂正記事を流していただくことが、社会の公器たる報道機関の責任であるのではないかと問題提起させていただきます。
以上
環境エネルギー政策研究所
文責:飯田哲也
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