http://www.asyura2.com/09/eg02/msg/1111.html
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環境省と通産省が国立公園内での地熱開発を禁止したのが昭和47年春。オイルショックはその翌年の末頃に起こっている。もし、オイルショックが昭和46年に起こっていれば、国立公園内での地熱開発禁止などできなかったし、やろうとしなかっただろう。
オイルショックは、基本的にはリビアのカダフィ大佐が1969年に無血クーデターでk政権を取り、その後、リビア国内の石油発掘会社を国営化して行く過程で起こったもの。
国立公園内の地熱開発禁止がされた昭和47年は1972年であり、カダフィ大佐の無血クーデターの3年後であり、どんぴしゃりのタイミング。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140329/trd14032920290008-n1.htm
2004(平成16)年9月、九州電力の子会社で電力コンサルティング事業の「西日本技術開発」(福岡市)地熱部のエンジニアの田篭(たごもり)功一=現執行役員地熱部長=は、インドネシア・スマトラ島に向かった。
南端の港町・バンダールランプンから約130キロ。最後は車を降りて地元の若者が運転するオートバイの後部座席に乗り、ぬかるむ山道を走ると、ジャングルとコーヒー畑が広がる高原地帯に出た。
インドネシア政府は、200億円を日本からの円借款で調達し、ここにスマトラ最大の地熱発電所建設を計画していた。
火山帯のスマトラ島では、地下1〜3キロ地点に岩盤の割れ目に熱水がたまる「貯留層」が豊富に存在する。この層まで井戸を掘り、蒸気を地上に取り出し、発電タービンを回そうという構想だった。
田篭の業務は「本当に十分な地熱エネルギーが眠っているか」を調査し、発電所建設の可否を判断することだった。
田篭は1週間以上にわたって特殊な機器を駆使しながら地下のデータを解析し、岩盤の構造や貯留槽の規模を推定した。導き出した結論は「地熱資源として有望であり、円借款するのに適している」。この報告書を受け、資金提供元の国際協力銀行や日本の商社、デベロッパーも一斉に動き出した。
2012年10月、インドネシアの国営電力会社PLNが運営する島内最大級のウルブル地熱発電所が完成した。出力は11万キロワット。十数本の井戸を擁し、深い緑の中に白い蒸気をもうもうと立ち上らせ、島の経済活動を支える重要な基幹電源となっている。
長きにわたってこのプロジェクトに携わった田篭は誇らしげに語った。
「インドネシアは国策としてどんどん地熱を増やそうとしている。世界一になろうという必死な思いを感じますね。それを日本の技術力でサポートするのだから責任重大です」
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「世界各国が化石燃料への過度の依存状態から脱しようと奮闘しているが、多くの国にとってその解決策は膨大な地熱資源を上手に利用していくことだ。私はインドネシアを世界最大の地熱エネルギー利用国にするつもりだ」
インドネシアのユドヨノ大統領は2010(平成22)年4月26日、地熱業界の関係者が集まり、バリ島で開かれた世界地熱会議の開会式でこう胸を張った。
インドネシアは経済発展と人口増加に伴い、電力消費量が増え、2003年には石油輸出国から輸入国に転じた。
そこで大統領が着目したのが地熱発電だった。
地熱発電は、再生可能エネルギーでは屈指の安定性を誇る。太陽光や風力のように天候に左右されることはなく、365日フル稼働できるベースロード電源だ。燃料費はゼロな上、化石燃料のように温室効果ガスも排出しない。
2005年に発布した大統領令では、当時86万キロワットだった地熱の出力を20年後の2025年に950万キロワットにまで増やすという野心的な目標を掲げた。計画はやや遅れているが、すでに120万キロワットを超え、米国、フィリピンに次ぐ世界3位の地熱発電大国となった。
インドネシア同様に経済発展著しいアフリカやアジア、中南米の多くの国々も地熱開発に力を入れる。
西日本技術開発を始めとする日本の技術力への期待は大きい。
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とはいえ、日本での地熱発電はお寒い限りだ。国内で稼働中の電気事業用の地熱発電所は13カ所、自家発電用も含めた総出力は53万キロワットにすぎない。
このうち5カ所(計21万キロワット)は九電が運営する。阿蘇など数多くの活火山があり、至る所で温泉がわく九州は地熱発電にもってこいの地域だからだ。
西日本技術開発が地熱部を発足させたのは昭和53年。背景には、昭和48年の第1次石油危機があった。政府は49年に新エネルギー開発を進める「サンシャイン計画」を策定し、地熱発電を中心的存在に位置づけた。
そこで西日本技術開発は、九電とともに国内最大の八丁原発電所(大分県九重町、出力11.2万キロワット)をはじめ、次々に地熱発電所を手がけた。資源探査から施設設計、維持管理まで一貫して担える企業は、今も世界中で西日本技術開発しかない。
だが、西日本技術開発は20年ほど前から海外に主戦場を移さざるを得なかった。国内の地熱発電“熱”がすっかり冷めてしまったからだ。
九州では、平成8年11月に稼働を始めた滝上発電所(大分県九重町、出力2.7万キロワット)を最後に、電気事業用の地熱発電所は建設されていない。全国的に見ても11年3月の東京電力八丈島発電所を最後にどこにも建設されていない。
資源エネルギー庁によると、火山国・日本の地熱資源量は出力に換算して2347万キロワットもあり、米国(3千万キロワット)、インドネシア(2779万キロワット)に次ぐ世界第3位。フルに生かせば、原発20基に相当する。
ところが、現在の総出力(54万キロワット)は世界8位。国内すべての発電設備の総出力に占める割合は0.2%にすぎず、米国(309万キロワット)、インドネシア(120万キロワット)、フィリピン(190万キロワット)に大きく水をあけられている。それどころか人口32万人のアイスランド(58万キロワット)より少ないのはあまりに寂しい。
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地熱開発“熱”が冷めたのには理由がある。地熱資源の79%が国立・国定公園内に集中していることだ。
昭和47年3月、環境庁(現環境省)自然保護局長と通商産業省(現経済産業省)公益事業局長は連名で「当分の間、国立・国定公園の景観維持上、支障があると認められる地域においては新規の調査工事および開発を推進しない」と通知した。主導したのは環境庁。これにより国立・国定公園内の地熱発電は「基本的にダメ」となった。
ある政府関係者は「当時、通産省は原発さえあれば代替のベースロード電源は必要ないと考え、環境庁側に押し切られた」と打ち明ける。
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ところが、福島第1原発事故を受け、再び潮目は変わった。「電力を安定供給できる地熱発電は再生可能エネルギーの中でもっとも将来有望だ」とみるエネルギー専門家は少なくない。
地熱用蒸気タービンは、富士電機、三菱重工業、東芝の3社が世界シェアの7割以上を占めていることも強みだ。地熱発電は資源から施設建設・運営まで純国産のエネルギーなのだ。
環境省も少しだけ態度を軟化させた。24年3月、国立・国定公園の特別地域の外から地域内の地下に眠る地熱資源へ「斜め堀り」することを容認したのだ。
これを受け、全国50カ所以上で発電所建設に向けて地下構造などの基礎調査が始まった。
だが、電力会社や研究者の間では「斜め堀りは掘削距離が長くなりすぎて実用的でない」との見方も強い。
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もう一つ、地熱普及の障壁がある。温泉地の反対だ。
平成24年4月27日、全国約1400のホテル・旅館が加盟する社団法人「日本温泉協会」は声明を出した。
「わが国は豊富な地熱資源を十分に生かしきれていないという意見も聞かれますが、すでに日本は『温泉』として最大限利用している世界有数の地熱利用国です。(中略)この温泉を無秩序な開発で失ってよいのでしょうか」
震災後、熱を高める地熱発電推進派への宣戦布告とも言えなくもない。
温泉関係者は、地熱発電所建設による湯量減少や湯質変化へ懸念を抱く。
電源開発(Jパワー)が計画し、西日本技術開発が調査解析を担当した小国発電所(大分・熊本県)も地元住民の「温泉を守る会」の反対により用地取得に行き詰まり、14年に中止となった。
実際には、地熱発電による温泉への悪影響は科学的は立証されていない。温泉の深さが通常200〜300メートルなのに対し、地熱発電は1〜3キロで利用する層がまったく異なるからだ。発電に使った蒸気を水に戻し、地下に還元することも義務付けられている。
それでも温泉関係者は生計がかかっているだけに、そう簡単には納得できない。温泉協会担当者は「すべて反対とは言わないが、リスクを完全に払拭でき、地域住民みんなが納得できない限りは反対です」と語った。
純国産エネルギー、地熱発電の普及には環境省のさらなる協力と、温泉地の理解が欠かせない。
地熱発電に積極的に取り組む温泉地もある。九重観光ホテル(大分県九重町)は、深さ350メートルと400メートルの2本の井戸で取り出した蒸気で自家発電している。出力は990キロワットで、47室のホテルで使う電力の100%をまかなう。
杉乃井ホテル(大分県別府市、1900キロワット)や霧島国際ホテル(鹿児島県霧島市、100キロワット)も同様に取り組んでいる。
これらは小規模な自家発電なので、電力会社の事業用発電とは異なる。しかし、地熱の恵みで温泉が湧き出て、温泉街の電力もまかなえる−。そんな地熱発電所と温泉地が共存共栄する「エコ温泉地」が誕生するかもしれない。(敬称略)
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