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「ベースロード議論」の幻は消えつつある
2014年2月28日 トーマス・コーベリエル 自然エネルギー財団理事長
http://jref.or.jp/column/column_20140228.php
自然エネルギーは、化石燃料火力や原子力よりも低コストである。
風力はもちろん、最近では太陽光も、原子力発電所を新設するより低い投資額で建設できる。
そして、いったん完成すると、太陽光や風力は、燃料費をかけずに発電し続ける。
にもかかわらず、なぜ原子力発電は政府に支援され続けるのだろうか。残された論拠は、それが重要な「ベースロード電源」だ、ということらしい。
もともと「ベースロード電源」とは、建設費用はややかかるが、燃料や運転コストが最も安い発電所を指していた。そのような発電所は、電力システムの中で「ベースロード」、つまり「最小限必要な消費電力量」をカバーするまで増設され、いったん稼働し始めたら、可能な限り動かし続けるものだった。
半世紀前は、大規模な石炭火力や原子力がその典型だった。そして、突然停止しては、送電網の安定性を脅かし、停電を引き起こすなど、送電網に問題をもたらしてきた。
今や、多くの国で「ベースロード電源」を、燃料費ゼロの太陽光や風力が担っている。
発電量の変動は予測可能な範囲であり、多くの発電所が並行して稼働しているので、発電所が一箇所停止しても、技術的な問題を引き起こす危険がない。
更に、電力消費者は、電力供給の低コスト化の恩恵を受けている。欧米では、自然エネルギー容量が新規に増えているおかげで、電気の卸売市場価格が下がっている。
一方で、古い石炭火力や原子力を所有する旧来の電力会社が競争力を失っている。
石炭火力や原子力による発電所の稼働率が下がり、稼働した時も、電力価格は低いままだ。
したがって、旧来の電力会社が新しい電源の市場参入を止めたいと思うのも、驚くことではない。
自然エネルギーは、電力コストを下げて産業の競争力を高めるので、電力を購入する産業や家庭は恩恵を受ける。
一方で、従来の電力会社にとっては収入減となるので、競争は嫌なのだ。
以前、日中の「ピークロード」をカバーするために使われていた調整電源は、現在は、低コストの自然エネルギーで電力需要を賄いきれない時に稼働する。しかし、電力需要が最も高い日中は、低コストの太陽光発電が電力を供給できるので、調整電源を必要としないことが多い。
もはや廃れてしまった「ベースロード」などの専門用語が、時代遅れの企業や官僚の思考を混乱させている間にも、近代的なシステムは加速的に発展している。
そして、成功を収めた国々は、更に先へ進もうとしている。デンマークでは風力だけで電力の30%を越え、バイオマスのコジェネと合わせて、電力の50%を自然エネルギーで賄っている。
デンマーク議会は更に目標をあげ、2020年までに風力だけで電力の50%達成を掲げている。そうなれば、従来の需要の数百%を発電してしまう供給過多も生じるだろう。その際は、風力は再生可能燃料の製造に使われたり、熱として蓄えられたりすることになるだろう。
日本の電力会社は、日本を原子力事故の危険にさらし続け、燃料を輸入し続けたがっている。そして政府は電力会社に忠実で、電力会社による風力の送電網接続拒否を許している。風力のほうが、低コストの電力を供給できるのにもかかわらず。
日本の産業界や消費者は、このような資源の浪費を、なぜ容認しているのだろうか。
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