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深夜電力、オール電化の行き着く先
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日本に出張中にドイツで興味深い出来事がありました。電力4大大手の一つ、EnBWがヒートポンプ、蓄熱暖房器用の電力料金を大幅に値上げするというニュースです。
これまでとりわけ電力大手においては、電力で暖房&給湯を行うことを促進するために(顧客の依存度の向上を図るために)、日本と同様に特別な電力料金制度を採用してきました。省エネ政令などでほとんどのケースで、深夜電力蓄熱暖房装置については、新設の制限や既設の取替え義務がありますが、最近はとりわけ電力式のヒートポンプを設置させるために、見かけ上、採算がとれるように、電力大手は、特別に安価な電力供給を行って来たわけです。
例を見ましょう。これまでEnBW社との契約で、ヒートポンプ式の給湯&床暖房システムを導入した場合、昼間は15.12セント/kWh、夜間は11.02セント/kWhで熱用の電力販売制度がありました。公正取引委員会の調査でも指摘されていますが、このどちらとも採算は取れていません。要するに、通常の電力料金を支払っている人から多めにとって、大量に電力を消費する人たちへ助成し、熱需要の増加、つまり電力会社への依存度を向上させるためにこうした電力制度を採用してきたわけです。
詳しく見てみましょう。夜間の電力の販売額11.02セントのうち、消費税+環境税+電力系統権利金+再生可能エネルギー促進のための上乗せ金+コージェネ促進のための上乗せ金で、およそ7.5セント必要になります。つまり原価3.5セントでEnBW社は電力を調達し、同時に系統に載せて送電する料金、販売・営業手数料などをやりくりしなければなりませんが、平均的にはそれぞれ深夜で調達コストが4セント、送電費用が3セント、販売・営業手数料で2セント必要になると言われていますから、ヒートポンプのための熱供給深夜電力では、販売すればするほど、毎キロワット時5〜6セントの赤字になっていたわけです。
脱原発の云々の前に、昨秋の段階からEnBWの株主は、この現状に大変不満を持っていたらしく(当然ですよね)、価格算定の見直しを始めていたのですが、最終的にこの夏から、ヒートポンプへの電力供給料金は、昼夜一律の17.16セント/kWhにするということです(一般電力価格はおよそ23セント/kWh)。これなら利益はほとんどないものの、コスト分は完全にカバーされます。
困ってしまうのは、ヒートポンプ式の暖房&給湯を選択している家庭です。深夜電力式蓄熱暖房機の場合、こうしたリスクはドイツでは十分に社会に浸透していますし、よほど何らかの意図がない限り、すでに長らく新築で採択するケースは稀になっていますから社会的にインパクトはありませんが、電力式のヒートポンプは近年、新築の25%近くに設置されるようになっていますのでインパクトは強烈です。
昼夜の電力で13%、深夜の電力で56%の値上げが敢行されるわけですから、今後、暖冬が続くことを願うしか手はありません。EnBWに限らず、他の電力大手もそろそろ撒いてきた餌を回収し始めるということですから、電力式の熱供給システムを選択した人たちは、今後、ランニングコストの急騰で悩まされることになることでしょう。
日本でも、福島原発事故以降、オール電化、深夜電力制度については、すでに電力各社のビジネスモデルが破綻していますから、このようなことが現実にならないことを願うしか手はありません。
それでは、熱供給を電力&ヒートポンプではなく、高効率のガスで行っていればよかったのでしょうか? 答えはNOだと私は考えます。ドイツの場合、ここ10年で天然ガスの価格は2倍になっていますし、これは今後も北海油田の出来次第ですが、継続してコスト上昇してゆくと考えられるからです。
EUが2020年を目処に計画し、各国もそれに従って国内法を整備し始めているように、そもそも住宅の分野ではそれほど難しくないため、熱供給がほとんど必要ないレベルの躯体性能の建物を建てるべきであった(新築の場合)、既築であっても、暖房や給湯の機器に、あるいはランニングコストにお金をかけるのではなく、例えば金融危機対策でかなりの助成金がついていた時期に躯体性能を高める省エネリフォームを行うべきであったと総括することができるでしょう。
日本では、住宅や建物のランニングコストについては、躯体性能だけではなく、各種の機器の性能と使用状況(日本人特有の我慢も含めて)をすべてひっくるめて話しすることが多いようですが、まずはある一定レベルの優れた外皮の性能、躯体性能があり、その上で、余った予算で機器(ソーラーも含めて)を考慮するようにならないと、電力事業者や原油の取引価格に依存する今後数十年を送らなければならなくなります。
そのためにも、私たちは外皮の性能表示を統一した計算方式で表示することのできるエネルギーパス制度の普及を推進しています。こうした取り組みが私たちだけではなく、社会に広く普及され、この意図が多くの国民に理解されることを願って止みません。
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