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小型の家庭用太陽光発電、ドイツの全量買取制度と日本の余剰買取り(その3)
http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/51707587.html
ドイツ・フライブルク市から地球環境を考える 村上 敦
さて、本題の両国の制度についてです。
ドイツの屋根置き型の小型PVは固定価格による全量買取りが基本ですが、2009年の改正から、「自家消費ボーナス」というものを採用するようになり、近年では、屋根設置の大型に至るまでになったり、そして自家消費の割合を多少の義務化を図るようになったり、自家消費をドンドンと促すように制度を改善させています。
この制度を簡単に解説すると、
イ)全量買取制度で発電した電力をそのまま系統に売電すると、発電者は、Xセント/kWhの売電収入を得ることになりますが、
ロ)自家消費した分は、自家消費によって買わなくて済んだ、つまり浮いた分の電力購入の料金分のYセント/kWhに加えて、電力系統事業者からZセント/kWhのボーナスが支払われるという仕組みです。
また、FIT制度では、Xの値と、Yの値をモニタリングしながら、「X<(Y+Z)」となるように、ボーナスの値を決めていますので、一般的なPV設置者は、こぞって、できるかぎり多くのY+Zを得るために、日中のPV発電時に電力消費行動のメインを移すような行動をすることになります。とりわけ今年の4月からのようにXがYよりも小さくなってしまうグリッドパリティが到来してくると、この動きは本格化します。
また、新しいモニタリング・通信機能付きのインバーターやPVシステムでは、天気予想とリンクさせた形で常に更新する「週間発電予報」などを表示版やWEBに流すようになっていますので、例えば、「電動芝刈機を使った芝刈りは、今日は止めておいて、発電が期待される明後日にしよう」だとか、「溜まった洗濯物は、今日でなく、明日にしましょう」だとか言った行動が可能になり、PV発電量が多くなるときに、電力を多く使い、PV発電量が少ない時には、電力消費をできるだけ避けるような市場原理が、FITの中には組み込まれています。
つまり、日中の正午前後には、電力系統の25%を占有するようになったPV電力が、すべて系統に流れ込むのではなく、できるだけその瞬間に電力を使えるように、配慮した「電力系統の安定化」に寄与する制度とシステムがドイツでは実施されているわけです。
翻って、日本の現状は、その正反対となります。(PV普及を前提とするならば)電力系統をより不安定化させる思想が組み込まれています。
ご存知のように日本の余剰買取制度は、日中のPV発電時に、出来る限りたくさん余剰電力を販売することで、もとを取ろうとする制度です。日中のPV発電時は、電力使用を控え、その代わりに、PV発電がない夜間に電力消費をして、翌日の日中に備えます。
また、さらに最近、具合の悪いことに、PVシステムのメーカーやハウスメーカーなど各社は競って、バッテリーと見える化を組み込んだ「スマートハウス」なるものを販売する戦略に出ています。
深夜電力でバッテリーを満タンにしておいて、日中、バッテリーからの電力で家庭の消費電力をまかないながら、ほとんど100%の電力を余剰電力として売電して、PV、バッテリー、そしてシステムなどのもとを取ろうとする戦略が取られています。
例えばこんなモノが、時には日中の消費電力の「ピークカット」、あるいは「エコ」、「ソーラー推進」「スマート」「セロエネ」という名のもとに販売されています:
http://www.asahi-kasei.co.jp/j-koho/press/20120330sonae/index/
http://www.daiwahouse.co.jp/release/20110920101418.html
http://www.panahome.jp/company/news/release/2012/0201.html
・・・こんなふうにして挙げはじめるとキリがないほど、ほとんどのハウスメーカーですね。
つまり、日本の法制度と各社の取り組み、販売戦略は、一方では「PV推進」と言いながら、他方では、「その行き着く先は、ドイツのように電力系統が感じるほど大きなPV出力になってしまってはうまくない」という矛盾を抱えたものとなっています。
つまり、今の程度の、PVがほとんど電力系統には感じない程度の状況が続いてくれないと機能しないものを、やれ「HEMSだ」、とか「スマートハウスだ」とか言っているわけです。
もし、PVシステムが車と同じように5〜10年で買い換えてしまう性格の商品であるならば問題はないでしょうが、住宅ローンは35年、PVは最低でも20〜25年は使えると誰もが考えて購入するものですから、ここはいち早い矛盾の解決を期待しています。選ぶなら、次のどちらかであれば、矛盾しません:
イ)PVなんて、そもそも推進しない
ロ)PVを推進するので、バッテリー&メカメカ、PV&深夜電力消費を止めて、本気で系統安定化を考慮した制度へ移行する
また、日本でいつの日にかグリッドパリティが達成されるようになると(PV電力が余剰買取りの価格より安価になると)・・・そもそも補助事業などで投入を図ったにもかかわらず、バッテリーはほとんど使う目的がなくなり、単に日中PV発電中に、電力を消費するという、HEMSやスマートハウス投入以前の普通のエネルギー消費行動の世界へと逆戻りというわけですね。
なにやってんだか。
さらに、これに対して無理やりバッテリーを用いて、日中のPV電力を貯蔵し、夜間にもこの電力が使えるように無理やり企てると・・・夏期の晴天時には、午前中から日中にかけてバッテリーに蓄電し、系統には一切PV電力を皆が流さないのに、バッテリーが満タンになった瞬間(これは、ほとんどの家庭で同じ大きさのPV、バッテリーが設置されていることから同じ時間帯に集中して)、いきなりゼロから高出力のPV電力が同時に系統に流れ込み系統は安定化どころか、ブラックアウトへ・・・
さらに、さらに、その不安をなくすために、バッテリーの容量を大きくすると、お金はかかるは、年のうちほとんどは使わない容量が遊んでしまうわで、意味が本当になくなってしまいます。
本当になにやってんだか。そうそう、こういうシナリオは、もちろんドイツの専門家たちは数多くのシミュレーションをして、学術的な結論「いわゆるスマグリの役立たず論」を出しています。
日本にはこうした社会としてのシステムを考えられる知性が存在しないのが怖いところですね。
ということで、終わりです。
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