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(回答先: M23、コンゴ、二人のライス(1) 投稿者 グッキー 日時 2012 年 12 月 05 日 21:54:21)
M23、コンゴ、二人のライス(2)
http://huzi.blog.ocn.ne.jp/
M23、コンゴ、二人のライス(2)
前回の記事には数多くの有意義なコメントを寄せて戴き、いろいろの事を学びました。一番嬉しく有難く思ったのは、議論のやりとりが、断定的なポレミック調に行なわれていないことです。以前どこかで引用させてもらったと思いますが、その昔、ミシェル・フーコーが「私はポレミシストでないし、ポレミックは好きでない。私は議論から学びたい。ポレミシストは自分の立場を変えるつもりはなく、ひたすら議論の相手に勝とうとする」という意味の発言をしたことがありました。今回問題になっている「族」という用語について、私は1974年出版の拙著『アメリカン・インディアン悲史』以来、差別語としての意識が足らなかったと反省しています。今後は注意しましょう。実は“インディアン”という言葉にも明白な問題がありますが、北米先住民(原住民)自身があまりこだわりなく使っているので現在でも私は使用しています。差別語の使用排除を何処まで厳しくするかというのは、実際問題として、難しい問題です。これに連関して、このブログの読者に注意を払って頂きたい事柄があります。日本の報道では、事件の被疑者を最初の段階から「男は・・・」「女は・・・」と呼び捨てにします。実に徹底した慣習で、私は近頃これが破られた例に出会ったことがありません。「男性は・・・」「女性は・・・」という言葉使いにしてほしいと思います。
さて、前回に掲げた新聞記事についてのコメントを続けます。「コンゴ反政府組織と戦闘続く 政府軍終結、前線緊迫」というタイトルの本文記事に就いてです。前回すでに指摘した通り、代理戦闘軍団「M23」はルワンダの独裁者カガメによって動かされており、カガメの背後には米国が控えているという所に問題の核心があります。「M23」のあまりにも目に余る侵略行為の度が過ぎて、米欧、つまり、いわゆる“国際社会”が、「カガメ、そりゃちょっとやり過ぎだ。もう少しうまくやりなさい」と、手綱を少し引き締めたのが現状です。しかも、その見せかけの引き締め方が、事情に暗い世界の大衆をまるで馬鹿にしたもので、カガメにすえたお灸はたった20万ドルの援助資金の保留というものです。最近数年の援助資金の年額は2億ドルですから全額の0.1パーセントの保留、しかも一方で米国は、国連大使スーザン・ライスの強力な根回し工作で、カガメのルワンダを国連安全保障理事会の非常任理事国の地位につけました。国連安全保障理事会は5カ国の常任理事国と10カ国の非常任理事国から構成され、今回ルワンダが新しく非常任理事国に選出されて2013年1月1日から2014年12年31日までこの国際的に重要な席を占めます。ですから、“国際社会”からのカガメへのメッセージは明らかです。たった20万ドルの援助資金の保留は、カガメにとっては、手の甲をチョットつねられて後すぐ撫でて貰っただけのことに過ぎません。今後は勇み足に注意しながらカガメは自分に付託された仕事の最終的目標を見据えながら進むことでしょう。 これが今回の「M23」のゴマ制圧、停戦、撤退という奇妙にコントロールのきいた行動の背景ですから、『政府軍終結、前線緊迫』という見出しは殆ど意味がありません。この主要記事は代理戦闘軍団「M23」の実体が何であるかに就いては“反政府勢力”と呼ぶだけで全く触れず、「M23」と戦っているコンゴ側集団「マイマイ」の悪口ばかりを並べ立てます。記事には「略奪や集団強姦に関与しているとして悪名高い組織だ」とあります。この悪名が米欧側の宣伝だと言い切る証拠を私は持ち合わせませんが、根幹的にはルワンダのツチ勢力の軍団であるM23 がコンゴ東部の現地人からなる反政府勢力であるという偽装の目的もあって、戦乱で平常な生活基盤を全く失った現地人少年に自動小銃を与えて、M23 兵士としてリクルートしている証拠は持っています。心理的に荒廃した若者たちは自分の両親でさえ衝動的に射殺すると言われています。しかし、こうしたことよりも、「マイマイ」の司令官が「M23 はルワンダの支援を受けている。敵はルワンダだ。我々は愛する祖国のために戦っている」とまくし立てた事の方に、特派員の方はもっと重点を置いて報道をしてほしかったと思います。マイマイは「水水」を意味し、魔法の水の力で銃弾では死なないのだと彼らが信じている滑稽さなどどうでも宜しい。コンゴ軍の指揮官が愛する祖国のために戦っていると興奮して語るのにはそれなりの理由があるのです。コンゴの人々は自国の存続が危機に曝されていることを意識しているからです。
カガメに付託された仕事の最終的目標とは何か? それを知り、それを、カガメとは別の、私たちの立場から見据えるための好個の新聞記事が11月30日のニューヨーク・タイムズに出ました。タイトルは
『To Save Congo, Let It Fall Apart (コンゴを救うというのなら、コンゴがばらばらになるに任せよう)』
という誠に直裁な本音の表白です。筆者は J. Peter Pham 、アメリカの名立たる国際問題シンク・タンク「The Atlantic Council 」のアフリカ・センターのディレクターです。次のように始まります。:
■ THE Democratic Republic of Congo, which erupted in violence again earlier this month, ought to be one of the richest countries in the world. Its immense mineral reserves are currently valued by some estimates at more than $24 trillion and include 30 percent of the world’s diamond reserves; vast amounts of cobalt, copper and gold; and 70 percent of the world’s coltan, which is used in electronic devices. Yet the most recent edition of the United Nations Development Program’s Human Development Index ranked Congo last among the 187 countries and territories included in the survey.
(コンゴ民主共和国は、今月はじめ又しても戦乱暴力が噴出したが、元来ならば世界で最も豊かな国の一つである筈なのだ。その巨大な量の鉱物資源は現在24兆ドル以上と見積もる向きもあり、30%の世界ダイヤモンド埋蔵量、膨大な量のコバルト、銅、金;それに世界中のコルタンの70%を含む。コルタンは電子機器に使用されている。それにも関わらず、国連開発計画の人間開発指数(HDI)の最近版によれば、調査に含まれた187の国や地域の中でコンゴは最下位にある。)■
何故そんな悲惨なことになるのか −−− コンゴ人が駄目だから。これがこの著者の断定です。このファム氏の論説は、吐き気を催さずには読了出来ませんが、これがアメリカ政府の思考、政策そのものを反映していることは、アトランティック・カウンシルという組織の過去と現在を検討すれば、必然的に結論出来ます。この組織の力の物凄さは少しネット上でお調べになれば直ぐ分かります。そして、そこからスーザン・ライスという女性のイメージも鮮明に浮かび上がってきます。コンゴについての米国の基本政策のベクトルは東部資源地域のルワンダ領化に向いています。ファム氏の論説は、アトランティック・カウンシル/オバマ政府の政策の表明の域を超えて、既にその政策の実現のための情宣活動の一端と看做すべきものでしょう。
もう一度、前回に掲げた「M23」のゴマ制圧、停戦、撤退についての新聞記事を読んでみましょう。新聞の一般読者の大部分は、これらの現地報道記事から一体何を学ぶのでしょうか。「コンゴ政府軍というのはひどいものだなあ」という印象以外に何が読み取れるでしょうか。このような記事は読まない方がむしろましだと私は考えます。
ルワンダの鋭敏冷血の独裁者ポール・カガメ、日本のメディアも過去約10年間褒め称えてきた男の実像も、もはや、明々白々に露呈されました。もし、ルワンダの国連安全保障理事会の非常任理事国入りがなければ、そしてコンゴの人々の叫びが天に響くならば、ポール・カガメは大量虐殺と政敵多数暗殺の罪により国際法廷で裁かれることになって当然の人物です。
藤永 茂 (2012年12月12日)
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