http://www.asyura2.com/09/dispute30/msg/360.html
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英語教育の背後にある格差拡大政策
英語教育は戦後から一貫して格差拡大のための教科として使われてきた。現在でもそれは続いていて、中学で週3時間、高校のそれも底辺校で週4時間の英語授業が行われている。中学で英語嫌いになり、学習意欲が低下しているところへ中学よりも30%も多い授業時数を割り当てているのが現在の教育政策だ。昭和の40年代は中学の英語授業時数は週4時間が標準だった。それが国民の一割が英語を学べばそれで十分だと言う論争が仕掛けられ、結果的に中学での英語授業時数が減らされた。事実として、英語を使って仕事をする人は国民の数パーセントにも達しないだろう。だから、もしこのことを理由として学校教育から英語を外すのなら高校でも英語を外すべきであった。週時数を底辺校では1時間でもいいことにし、その代わり、ワープロやインターネット、簿記会計などを充実するべきだったのだ。大学進学は推薦枠をある程度とればそれで十分に機能するはずだった。
しかし現実は、底辺校でさえ英語授業が週に4時間から5時間行われ、英語の単位が取れないから退学する生徒や英語授業に反発して退学する生徒がかなり存在する。そして、このことは、別の角度から見ると、小学校段階で英語に慣れ親しむことが出来る生徒が英語で良い成績を取り、教員もそのことに頼ることでごく普通の生徒を置き去りにしてしまう授業体制を作り出すことになる。小学校段階からの塾通いが英語を小学校で取り上げることでより一層促進されるのだ。そして、当然のことながら、家庭の経済格差が学力格差になる構造を作り出す。算数や理科なら、教科書や問題集をやることで一人学習がかなり容易にできるが、英語は音声が関わってくるので、多くの生徒や保護者は家庭での一人学習が不可能だと思いがちだ。つまり、それだけ、塾の役割が大きくなるのが小学校での英語なのだ。
おまけに、高校入試や大学入試でも英語はほぼ必修科目であり、小学校段階で英語嫌いにされてしまったら、かなり大きなハンディを背負わされることになる。
金沢市で以下の記事に示すように小学校からの英語一貫教育が行われている。しかし、その成果はあまり見るものがないように思える。
まず、中3終了時での英検3級取得者の倍増、つまり、以前の22%から42%への増加が成果として強調されているが、これは、単に中学での週4時間授業で達成できるものだし、事実として中学での週4時間授業で達成されたものであるはずだ。なぜこれが言えるかと言えば、週3時間だと多くの場合、ひと月に一週は英語授業が1時間もないことがあり得るが、週4時間組まれているとほぼ必ず週1時間の授業ができるからだ。週3時間の授業時数はそれほど実際には授業に結びつかないのだ。
更に言えば、金沢市での実践を初めとして、ほとんどすべての小学校での英語授業が学年進行を考慮していない。つまり、小学校3年生でやることが小学校4年生でやることにつながらないのだ。別の言い方で言えば、導入過程や基礎固めといった部分が抜け落ちて、突然会話が始まることを意味している。基本的に小学校では文字を取り上げないので、いわゆる本に頼った学習ができにくい。そして、このことが、多くの保護者に親が子供へ勉強を教えることを不可能だと信じ込ませてしまっている。
しかし、高校入試や大学入試を含めて、文字を通した英語理解が日本国内では圧倒的なのだ。現実のビジネスの場であっても、音声が必要な場面は多くはない。ビジネス文書という形で英語が必要になることが圧倒的に多いのだ。これは、日本が島国であり、国内産業がかなり発達していることに関係がある。外国と直接交渉する部門は一部の会社が担うことで十分に産業交流が可能になっているからだ。
小学校での英語教育を必修化するのなら、どうしても文字を使った学習ができるような英語教科書を作るべきだ。何も文法教育をしろというのではない。自学自習ができるように教科書が必要であり、文字を使った学習過程が必要だと言っている。そして、小学校では文章を取り上げずに、単語の学習に絞るべきだ。会話は本当に基礎のクラスルームイングリッシュだけにすればいい。単語だけなら、漢字学習と同じで、多くの生徒は独力で取り組むことが出来るし、努力すればその成果がそのまま報われるから、英語嫌いも出にくいものになるはずだ。
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http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/jijou/tiiki/20110120-OYT8T00266.htm
小中一貫の英語教育 成果
金沢市が英語の小中一貫教育で成果を上げている。中学卒業時に英検3級レベル以上の生徒が5年間で倍増した。
同市は2004年、国から「小中一貫英語教育特区」の認定を受け、全市立小、中学校で一貫指導に乗り出した。小学校で英語を本格的に教えるのは3年生から。毎週1時間、3〜5年生は市独自の副読本で、「聞く、話す」から始め、段階的に「読む、書く」を学習。6年生は中学1年の教科書を前倒しして学ぶ。
授業は、市教委が雇った英語インストラクターが、担任教師とペアを組んで実施。インストラクター46人のうち44人は日本人。海外生活などを経験し、日英両語に通じている強みを生かして、担任と息のあった授業を目指す。
明成小学校で11日に行われた4年2組の授業。担任の谷田遥教諭(25)が英語で「田中先生はどこにいますか」と尋ねると、「ヒー・イズ・イン・ザ・スタッフルーム(彼は職員室にいます)」と、元気な声で答えが返ってきた。すかさず、インストラクターの川瀬薫さん(36)が「パーフェクト!」とほめた。
中川響君(10)は「英語が話せてうれしい。もっと話せるようになりたい」とほほ笑む。
毎年、市立中の3年生が受検する「英語能力判定テスト」(日本英語検定協会主催)では、英検3級相当以上の生徒が、04年度の22・5%から、09年度は42・5%に倍増。市教委は「小中一貫の指導が効果を上げている」と胸を張る。
新年度から全国の小学校で英語が必修化されると、中学校の英語教育と、どう接続させていくかが課題になる。その意味で、同市の取り組みから学ぶことは多そうだ。(金沢支局 藤元陽)
(2011年1月20日 読売新聞)
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http://www.kanazawa-city.ed.jp/edu/edu_set4_3.html
金沢市は、平成16年3月24日に「『世界都市金沢』小中一貫英語教育特区」に認定され、平成16年度4月より、特区による小中一貫英語教育がすべての市立小中学校で行われています。(平成20年より名称が「教育課程特例校」に変更となった。)
1. 標準となる内容
(1)教育課程
●
小学校3年生以上の「総合的な学習の時間」で「国際理解に関する学習の一環としての外国語会話」として、「触れたり」「慣れ親しむ」ことなどが可能
●
中学校英語科の授業は週3時間(標準授業時間は年間105時間)
(2)教科書等
●
小学校における教科書はない
●
中学校では英語科教科書が該当学年に給与される
2. 学校での実施内容
【小学校】
●
小学校3年生以上の「総合的な学習の時間」に国際理解教育として週1時間程度の英語活動を実施
【中学校】
●
学習指導要領の内容に基づき週3時間の必修英語を実施
●
各学年に、習熟に応じた指導を充実させるために選択教科に英語科の開設が可能
1. 金沢市に適用される規制の特例措置
(下記の2つの特例措置は平成20年4月より全国展開されました。)
(1)教育課程の弾力的な運用が可能となりました
●
小学校3年生以上に、年間35時間の「英語科」を設置
●
中学校英語科に、より高い目標を設定し、その目標に応じた指導内容を充実するとともに必修英語の授業時数を週4時間(標準時間は年間140時間)に拡大
(2)教科書の早期給与が可能となりました
●
小学校6年生に、中学1年生の英語教科書を早期給与
●
中学校1・2年生に、それぞれ上学年の英語教科書を早期給与
2. 学校での具体的な変更ポイント
【小学校】
●
標準指導時数35時間以上の英語科授業の実施
●
標準指導時数以外に、週に1回以上15分程度のショートタイムによる指導の実施
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3年生以上で金沢版小学校英語副読本及び6年生では中学校1年生英語教科書を主たる教材として使用し、中学校1年前期程度の内容を指導
【中学校】
●
週4時間の必修英語を小中一貫英語カリキュラムに基づき実施
●
中学校英語教科書の指導内容を段階的に早期終了し(平成18年度入学生より3年12月に終了)、金沢版中学校英語副読本の活用により、金沢の歴史や文化を発信できる英語力の習得をめざした指導
●
学力の程度に応じた習熟度別少人数授業や個別指導を充実
小学校英語科授業の様子 中学校英語副読本を活用した授業
金沢版小学校英語副読本を活用した授業
副読本の内容と特徴は…
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登場人物と場面設定により、ストーリー性のある展開となっています
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コミュニケーション体験につながる内容で構成されています
●
「自分」から始めて、家族・友達・学校・地球・世界を広げていくことを基本にした単元内容です
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副読本の内容に対応した音声CDやピクチャーカードを、デジタル教材を併せて活用します。
子どもの学習状況に応じた指導の充実に向けて
●
小学校英語インストラクターやALTなどによる指導体制の充実を図ります
●
習熟の程度に応じた少人数授業や個別指導を中学校で充実させます
●
市外からの転入生等に適切に対応するため、放課後等における個別指導体制の充実を図ります
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