http://www.asyura2.com/09/dispute30/msg/348.html
Tweet |
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C07143.HTML よりコピー:
2010.12.26(その2)
森田実の言わねばならぬ【1195】
平和・自立・調和の日本をつくるために[1195]
「角を矯めて牛を殺す」(日本の諺)
-------------------------------------------------------------------------------
1年4カ月にわたる民主党政権の失敗の中で、最大の失敗の一つは霞が関解体を本当にやってしまったことである。
民主党は、予算を伴う選挙公約(マニフェスト)の実行で躓いた。確たる財源の見通しもないまま、財源がなければ実行できない政策を、ただ選挙に勝つ目的で選挙公約にしたため、政権をとってから右往左往することになった。
ところが、直接予算上の制約を受けないテーマでは暴走してしまった。前原(前)国土交通相(現外相)の八ッ場ダム中止声明が、その一つである。マスコミは前原国交相の八ッ場ダム中止声明を支持したが、つくり出したのは混乱だけだった。いまもこの混乱状態は続いている。
後任の馬淵国交相は「これからは中止を口にしない」と言明したが、ダム工事を続けるか中止するか不明の状況が続いている。これほど非人道的な行政はめずらしい。関係者を困らせただけである。非人道的政治を行った政治家は責任をとらなければならない。
民主党の2009年総選挙マニフェストの中でマスコミがこぞって支持し支援した公約は「政治主導、脱官僚、霞が関解体」だった。総選挙に勝った民主党はさっそく「脱官僚、霞が関解体」に取り掛かった。ほとんどすべての中央官庁で、政務三役(大臣、副大臣、政務官)がすべてを取り仕切ることを宣言した。ある中央官庁では、大臣が事務次官、局長ら幹部の仕事をすべて取り上げてしまった。事務次官、局長は大臣の承認なしに行動することができなくなった。その上、天下りを全面禁止とする国家公務員法改正案が作成された。法案作成段階で一部手直しされたが、中央官庁内の空気は一変した。政治家の天下り批判に便乗したマスコミの反官僚キャンペーンが展開された。多くの官僚は使命感を減退させた。この改正案は廃案になったが、中央官庁のしらけた空気は元に戻ることはなかった。
民主党は百数十名の国会議員を大臣、副大臣、政務官として中央官庁に送り込み、官僚の仕事を奪おうと試みたが、中央官庁約30万人の官僚の仕事を百数十名の国会議員で請け負うことは、もともと不可能なことだった。民主党の指導者たちの考えはあまりにも幼稚だった。このため民主党政権になってから、行政は著しく停滞することになった。
もっともひどかったのは国土交通省と外務省だった。ここでは外務省を取り上げる。外相に就任した岡田氏(現民主党幹事長)は、脱官僚・政治主導実現の第一歩として主要国の大使に外務省OBを登用しないことにした。
民主党の指導者は、官僚を命令と強制だけで抑えつけようとしたが、これは大失敗に終わった。政治主導の実現は、説得活動を主にすべきだった。政治主導とは、政治家の主導権のもとに官僚をうまく働かせることにある。ところが民主党は官僚の仕事を、少数の政治家が代わって請け負おうとした。民主党政権は役人を人間として扱わなかった。
役人もまた人間である。プライドをもって仕事をしている。民主党の指導者たちは、役人を人間として扱わず、役人のプライドを踏みにじった。こんな乱暴なことをしていては官僚を働かせることは不可能だ。民主党の政治家は、総選挙に勝ち政権をとってから、非常に傲慢になった。この傲慢状況はいまも続いている。
このような民主党の霞が関解体で最も大きな負の影響を受けたのが外務省である。とくに米国、中国、ロシアとの外交が滞った。鳩山首相と米国首脳との関係が乱れたとき、これを修復するための外交的努力が行われなかった。外務省は積極的に動くことができなかった。中国との尖閣諸島をめぐるトラブルのときも、外務省、大使館はほとんど機能しなかったようだ。ロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問のときも、外交関係者はほとんど動かなかったようである。
民主党政権が発足し、外交に未経験な政治家が外交権を握り、外交を担当した。その上、補佐役の外務官僚に仕事をさせない状況をつくってしまった。これによって、日本外交は事実上ストップしてしまった。この状況はいまも変わっていない。菅政権は官僚に接近しているが、失ったものが大きすぎるのである。
外交関係ほど極端ではないが、ほとんどの省庁で外務省と似たことが起きた。 民主党は政権交代を実現すると、「政治主導確立、脱官僚、霞が関解体」のマニフェストをストレートに、子どもじみた無邪気さに燃えて、実行した。そして本当に霞が関を解体した。政治と国民の間をつないできた中央官庁を解体してしまった。日本国民と世界をつなぐ役割を果たしてきた外務省を有名無実化してしまった。大げさに言えば、民主党は政権をとったことによって国家組織を解体し、角を矯めて牛を殺してしまったのである。中央官庁は無用の長物と化した。
このことが、民主党政権の政治を止めてしまった。この結果、民主党は国民から見離されつつある。国民の政権交代への希望は民主党政権の幼稚化と無定見によって裏切られ、潰されたのである。(つづく)
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。