http://www.asyura2.com/09/dispute30/msg/259.html
| Tweet |
冷戦の崩壊以降、宛も明治前半の「欧化主義」を彷彿とさせる「グローバリズム」が社会を覆い尽くしたかに見えた２０年でしたが、一昨年の「リーマンショック」「オバマ大統領」に続く昨年の「政権交代」で、何やら歴史が一回りして、振り出しに戻ったかのような感覚を少なからず人に与えた様です。
言うならばそれは、Ｆ．フクヤマの言う「歴史の終焉」論※（1）の終焉で、歴史の復元作用が働き、「文明開化」更には近代化の下に埋もれていった歴史の古層が現れ出たかのようで、昨今の動かし難い「幕末ブーム」は社会の底流で起きてるこの変化の現れと見るべきなのかも知れません。
例えば、「普天間」で浮上した「在日米軍」の問題は、幕末のペリーの「砲艦外交」の結末を示すものと言えるし、その時結んだ二つの条約に比べて日米安保条約とどちらがより不平等条約か？と言ったら、当然、後者でしょう。 何故なら、軍事占領を合法化し、事実上、軍事的保護下に置いたものなのだから。
だとすると、何の為の明治維新だったのか？ 一体、明治維新の意義が在ったのか？ ーといった問い掛けが、当然、為されて然るべきでしょう。 何故なら、「倒幕」の大義名分は強力な攘夷論、即ち弱い権力（幕藩体制）であることをやめ、強力な統一中央集権体制を創る事によって攘夷を実現するという処に在ったのだから。 そして、この点から観る限り、昭和２０年の敗戦はその大義名分の完全な破産を示して余り有るはずです。
にも関わらず、敗戦の時点で、更には今に至るまで、この認識が共有されることは無かった。 それは、多くの人が倒幕＝明治維新ではないと看做しているからに他なりません。 だとすると明治維新とは何か？ ーその意味で、明治６年の政変から西南戦争へ到る過程が極めて重要な意味を帯びて浮かんで来るのです。
「征台の役」（明治７年）、「江華島事件」（明治８年）、「日鮮修好条規」（明治９年）
政権内の西郷派を追放した「政変」以降、立て続けに起きたこれらの外交事件を見れば、従来の教科書的な説明ー大久保等「内政重視」派対西郷「外政（征韓論）」派の対立で「内政」派が勝ったーが完全に誤りであり、寧ろ外交方針を巡っての対立であったということが見えて来ないでしょうか？ しかもこれが、倒幕に至る過程で、日本がアメリカから強いられたことを、攻守立場を変え、しかも隣国相手にそれをやるーアメリカの様に振舞うーという事に他ならないとなると、「倒幕の大義」＝攘夷論との絡みはどうなってくるのか？
何となら、「攘夷論」それ自体、西洋列強の進出を前にして、同じ様な立場に在る中国や韓国にも突きつけられてるのであり、それ故日本だけで完結するものでも止まるものでもないからです。 従って、「攘夷論」は隣国と共有出来るはずという確信こそが、維新後、権力を奪取するや直ちに、西郷をして中国（清）や韓国（李氏朝鮮）への交渉に向かわしたのであり、対等・平等を謳った「日清修好条規」（明治４年）はその第一の成果と言えるものでした。 これで分かる通り、西郷隆盛の真意は、内に外に「強力な攘夷の体制」を築くということに在り、その為の「維新」であったとみて間違いない。
しかしながら、これが英国等列強に事実上の「軍事同盟」ではないか？という疑いを抱かせ、折から欧米の視察から戻った（そうした欧米の眼差しを皮膚感覚で感じた）大久保や岩倉等により路線の大幅な変更を求める圧力が重なり、それが明治６年の政変に繋がって行く。※（2）
ーこのように観てくれば、「政変」以降の政府の姿勢は、西郷側からすると、維新の大義への、公然たる裏切りに見えたことでしょう。 また逆に、政府側からすると、そうした姿勢は西欧列強の疑念を払拭することにも在った、と言えるかも知れません。
そうだとすると、西南戦争に向かう際の”政府に尋問の筋これ在り”という西郷の言葉は（大義であるはずの）「攘夷を止めたのか？」の意味以外には考えられない。
そうして又、こうした観点から見ると、それへの回答が「脱亜入欧」ということになるのです。
※（1）アメリカニズムの勝利を謳う、それ自体如何にも歴史の無い国に相応しい、自画自賛の言説
※（2）この辺りは、昨年の政権交代から今回の「政変」に至る経緯に、何となく似てる様には思えませんでしょうか？
小沢氏を西郷隆盛に擬える向きがありますが（江藤淳）、あながちそれは当たってないこともない。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます（表示まで20秒程度時間がかかります。）
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
