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(回答先: 川勝と「教育再生会議」や「つくる会」とのつながりはネットで調べればすぐにわかること 投稿者 南青山 日時 2009 年 9 月 21 日 21:39:42)
http://www.the-journal.jp/contents/aikawa/2009/09/jal.html
【Commons】
JAL経営再建 まず高コスト体質を改善せよ
10年ほど前のことだ。懇意にしていた長野県のある幹部が、恥ずかしそうに打ち明けてくれた。職場の忘年会についてだ。福岡市内のふぐ料理店で開くという。「それは豪勢なことですね」というと、相手は浮かぬ表情を見せた。聞けばそれもそのはず。わざわざ福岡で忘年会を開くのは、何か特別な趣向があってのことではなかった。県営の松本空港から旅客機に乗ることが、主目的。JAL福岡便の搭乗率が低迷しているため、少しでも旅客者数を増やそうと、わざわざ福岡市内での忘年会開催となったという。聞けば、新年会も同じ理由から札幌市内で行ったという。
長野県庁から松本空港まで1時間半はかかる。そこから旅客機に乗り換え、海を越えて忘年会(新年会)場へ。もちろん、福岡、札幌ともに日帰りはかなわず、泊りがけになるという。職員の絆を深める効果ありかもしれないが、何ともご苦労なことだ。
こうした県職員の自腹を切っての努力にも限界がある。路線の黒字化には、焼け石に水だ。当人たちには申し訳ないが、むしろ、無意味な行為と言わざるをえない。松本空港を離発着する旅客機の利用は低迷を続け、就航路線は現在、伊丹、福岡、札幌各便が日に1往復あるのみ。もともと需要の乏しいところに空港を建設したことが、苦戦の要因だ。
空港を創りさえすれば、需要が泉のように湧き出てくるものでもない。また、官(行政)の力で需要を創り出せるものでもない。二--ズを無視してことを強引に進めれば、どこかに歪みが生まれてしまう。空席を飛ばす航空会社にまず、皺寄せがくる。
鳩山内閣が成立した前日の9月15日、地方空港を揺るがす大事件が起きていた。経営再建中の日本航空(JAL)が経営改善計画の素案を、国土交通省が組織した有識者会議に提示した。2011年度までに国内線の2割弱に当たる29路線と国際線21路線の廃止、そして、国内7空港からの撤退を検討するというものだ。グループ社員6800人削減のリストラ策である。
JALが撤退候補にあげた地方空港は、冒頭に紹介した松本空港(管理者・長野県)の他に静岡空港(静岡県)、神戸空港(神戸市)、広島西空港(広島県)、丘珠空港(札幌市)、奥尻空港(北海道)、粟国空港(沖縄県)である。いずれも不採算路線を抱え、経営のお荷物となっている地方空港だ。しかし、地元はどこも、撤退という言葉に大騒ぎとなった。なかでも驚きの声が上がったのが、静岡県である。
6月4日に開港したばかりの静岡空港は、日本で一番新しい地方空港だ。県が総力を挙げて建設し、例の立木問題で躓きながらも6社8路線での開港にこぎ着けた。その主力エアラインが福岡便(3便)と札幌便(1便)を飛ばすJALで、静岡空港発着便の約3分の1を占める。
静岡県はJALと特別な関係を構築し、路線開設を実現させた。福岡便への搭乗率保証である。目標とする年間搭乗率7割を下回った場合、県が不足座席分(1席につき1万5800円)をJALに補てんするものだ。JALの福岡便に限定した厚遇策で、税金の使い方としてどうかという批判が出た。
この搭乗率保証は、前知事が強引に推し進めたものだ。「まさかのときの下支え」と説明し、反対論を封じ込めた。充分な需要があるので、実際に補てんするような事態にはならないと、強調したのだ。しかし、需要が本当に見込まれるなら、航空会社は自らの判断で路線を開設するはずだ。就航を渋るJALを知事自ら直接訪問し、搭乗率保証といういわば禁じ手を使って3便就航させたのが、実態である。
では、就航後の現実はどうか。9月15日までのJAL福岡便の搭乗率は62.5%。仮にこの水準で今後も推移したら、静岡県がJALに支払うカネは年間約2億円以上になる計算だ。まさかどころではないのである。
前知事の後継者(自公推薦)を破った川勝平太知事(民国社推薦)は、搭乗率保証の見直しを公約に掲げていた。そして、8月末にJALの西松遥社長と会談し、直接、廃止を求めていた。
その一方で、空港の利活用を促進させる新たな策を講じた。空港と周辺のJR駅間のアクセスを改善しようと、バス便の増発をバス会社に要請。増発で生じる赤字分を県が補てんする奇策を提示した。補正予算案に今年度末までの費用として約4800万円を計上し、9月議会に上程している。空港アクセスバスへの乗客率保証である。このほかにも搭乗率アップのために、旅行代理店に一席当たり500円の奨励金を出すなど、総額で1億円の税金を投じる予定である。
こうした経緯もあり、JALの撤退計画が報道された(9月16日)直後、川勝知事は怒りを爆発された。「利用促進の努力を逆なでするもので、けしからん」と語気荒く語っていた。
その翌日の17日。静岡県に足を運び、県議会を傍聴した。県の担当者にも話を聞いたが、県庁内の雰囲気は想像していたものとは異なっていた。意外であった。わずか一日で、JAL撤退への危機感が薄らいでいるように感じられたのだ。それはなぜか?
2つの要因が考えられた。ひとつは、16日夜の新しい国土交通相の就任会見での発言だ。前政権下で国交省が設置した有識者会議による、JALの再建計画検証の枠組みの白紙化である。県はJAL側からも「決定したことは何もない」との説明を受け、「撤退はないと考えている」とコメントした。事態を楽観視しているようだ。正確には「そうであって欲しい」という願望なのかもしれない。
もっとも、現実は地元自治体が考えている以上に厳しい。JALが提示した再建策では問題の先送りにすぎず、より抜本的な策が求められるはずだ。
静岡県に危機感が乏しいもう一点は、地元のリージョナル航空会社フジドリームエアラインズ(FDA)の存在だ。76人乗りの小型機で現在、静岡と小松、熊本、鹿児島間を結んでいるが、もともとは福岡便就航を検討していた。大手エアラインとの競合を避けるため、福岡便を見合わせた経緯がある。仮にJALが完全撤退となった場合、FDAがそれにとって代わることも考えられる。最悪の事態は避けられるとの思いがどこかにあるのであろう。だが、仮にそうなった場合、それではJALの就航は一体何だったのかと誰もが思うだろう。JALと静岡県がともに、金と時間、そしてエネルギーを浪費させたとはならないか。
JALの経営再建は高コスト体質の脱却にかかっている。そうした「親方日の丸」の企業風土と裏表の関係にあるのが、経営への政治介入である。利益誘導に躍起となる族議員たちの暗躍だ。また、地方空港の低迷は、空と新幹線、高速道路などの高速交通網がグランドデザインなきまま野放図に整備された結果ともいえる。交通政策の不備である。空港、新幹線、高速道路のフルセットを望む地域エゴが自らの首を絞めることにつながっているとも言える。搭乗率を上げるために血道をあげるなど、本末転倒だ。静岡県の各課の忘年会は今年、福岡市での開催となるのではないか。
投稿者: 相川俊英