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この「'09春のテポドン騒動」を読み解く記事を探していた所、合致したのは12年前のもの。 即ちこの干支一回りの間、誰も「誇大宣伝」により作られる「今ここに在りもしない危機」と、「黒幽霊産業」との繋がりを自覚出来ないままに居ることが解る。
================(引用ここから)
http://nikkankiroku.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_0381.html
「鎌田慧の現代を斬る/テポドン騒ぎが生みだす虚構産業の儲け」
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■月刊「記録」1998年10月号掲載記事
* * *
■「ミサイルの威を借るタカ」
東アフリカのケニアとタンザニアの大使館の爆破テロにたいする報復として、アフガニスタンとスーダンにクリントンがミサイルを打ち込んだのは、世界の最強国としての傲慢さのあらわれだった。このあと、八月三一日の北朝鮮ミサイルの一発は、金正日の国防委員会委員長への就任と建国五〇周年への景気づけだったようだが、これまた国際感覚ゼロの無謀な強がりだった。
このテポドンの号報を、あたかも幕末の黒船に匹敵する大事件のようにあつかおうとしているのが日本のタカ派連中である。まるで、風が吹けば桶屋が儲かるというたぐいのコンタン、「我田引ミサイル」ともいえる汚いやり口である。
本国会で棚上げにされる予定だった「ガイドライン(新日米防衛協力指針)」は、この一発のミサイルによって急浮上させられようとしている。「ガイドラインを成立させるべきだ」と主張する自民党議員などタカ派を、にわかに景気づかせているのだ。「虎の威を借る狐」ならぬ、「ミサイルの威を借るタカ」ともいえる。
新ガイドラインは、これまでも述べてきたとおり、「周辺事態」という極めてあいまいな規定によって、米国の戦争に加担させられるというとんでもない法案で、あちこちから次第に批判がたかまっている。
「野党側では、自由党がいち早く、『ガイドラインにかかわる法制の整備や有事法制の整備などを速やかに進めるべきだ』(野田幹事長)と積極姿勢をしめした。また、民主党からも『今の政府案のままで賛成するつもりはないが、審議は早くやったほうがいい』(伊藤英成政調会長)との声が出ている」(『朝日新聞』・一九九八年九月二日)
これまでガイドラインに公然と反対する見識のなかった野党議員は大喜びである。自民党内では、さっそくガイドライン法案の審議を促進すべきだという声が相次いでいる。
これらタカ派がしきりと批判しているのが、ミサイルの捕捉情報の遅れである。この批判を追い風に、自民党政府は偵察衛星の導入を固めた、とか。さらに調査費だけを計上しているTMD(戦域ミサイル防衛構想)を、さらに推し進めようとしている。
このTMDは、研究開発から早くとも二〇年かかるという代物であるうえに、一兆円を超える費用が必要といわれている。飛んできたミサイルを迎撃しようというこのシステムは、レーガン時代に計画された、ミサイル迎撃構想であるスターウォーズ計画の名残である。当時、巨額な資金がかかるため、実現不可能とされたのだが、またぞろこの計画が復活したのである。
しかもミサイル攻撃にたいする最上の戦略は、報復手段をもつことである、と公然と語られはじめた。すでに、一九五六年二月には「日本にミサイル攻撃が行われた場合、発射基地を攻撃するのも自衛の範囲内に含まれる」という国会での政府答弁が残されている。つまりミサイルでの殴り合いに参加しようとしているのである。
■テポドンより危険な米軍機
一方、日本で北朝鮮にたいする過剰な警戒感が高まる前から、米軍は北朝鮮の地形にむいた訓練を再開した。北朝鮮などの山地に見立てた日本の七カ所の飛行ルートを使い、米軍の低空飛行訓練が行われている。かつて三沢や岩国などに所属するハリヤー攻撃機が、東北山地や広島県などで実施していたものとおなじ練習だ。
ところがこの低空飛行訓練は、とんでもない練習である。ことし二月には、イタリアのスキー場で米軍海兵隊の攻撃機が、訓練の失敗からロープウェイのケーブルを切断し、観光客ら二〇人を死亡させている。また日本でも広島県で墜落事故が発生している。
低空飛行ばかりではない。
八月下旬には三沢基地を出発したF1支援戦闘機が訓練中に二機行方不明(墜落)となった。そもそも米軍および自衛隊の戦闘機の墜落は、三沢沖や沖縄など訓練の激しい地域では日常的に発生している。命中精度の低いテポドンより、事故を起こす米軍機の方がよほど危険なのである。軍隊の存在は、日常的に市民生活を脅かしている。だが米軍と比べられないほど、北朝鮮のミサイルにたいしては感情的な反発が増幅されてる。
これは懸念されることである。むろん北朝鮮ミサイルの発射を支持するつもりはない。だが一日の衆院安全保障委員会では、自由党の西村真吾議員が高村正彦外相に「在日朝鮮人に再入国を許可しない、送金は禁止するというふうな対抗処置をとる覚悟はあるか」などと迫っている。在日の歴史をつくりだした日本の責任に無頓着で、ただ北朝鮮憎しの声だけが高まっている状況は、非常に危険だ。
■国民の財産を盗みだすネズミ達
北朝鮮のミサイル発射直後に起こったのが、防衛庁高級官僚の逮捕である。先に防衛庁の上野憲一元防衛施設本部副本部長が逮捕され、つづいて彼の上司だった諸富増夫前防衛施設庁長官が逮捕された。
この防衛施設庁にまつわる問題は、過剰請求事件である。兵器メーカーが、防衛装備品調達(兵器)の納入のときに、数億も吹っかけた値段を請求して利益を貪り、それが露見すると、こんどは過大請求分の返済額をごまかす。煮ても焼いても喰えない連中で、それを指導したのが防衛庁幹部なのだから、恐れ入るしかないのである。
兵器メーカーである東洋通信機が過大に請求し、国に返還すべき額は、利息を含めて最低でも二五億六四一万二〇〇〇円にものぼる。ところが実際の返済額は、八億七四三三万六〇〇〇円しかなかった。差し引き一六億八九七七円分を、ちょろまかしたことになる。国民の米倉に侵入した兵器メーカーのネズミが、倉庫番の手引きで俵の米を食い散らかしている、と考えればわかりがはやい。
装備費とは兵器の購入費を指す。防衛産業は防衛力の基盤といわれており、これまでさんざん優遇されてきた。ライバルメーカーはすくなく、ほとんどヒモ付き、もちろん国相手の商売だから取引先の倒産はない。さらには前倒し金と称して、メーカーは先に支払いを受け取っている。
これほど甘やかされたメーカーに、さらに防衛庁幹部が天下りして、水増し請求を示唆していた。つまり防衛庁と兵器メーカーは、根っから腐った関係にあるのだ。 このような関係を如実にしめしているのが、天下りの人数と大手企業による契約高の独占率である。たとえば昨年度の調達予算、一兆三千五五五億円のうち七六パーセントの一兆三億円が契約高二〇位までの大手企業に独占されている。この独占大手企業にどれほど防衛庁から天下っているのかは、九七年一二月九日の『毎日新聞』に掲載されている。
「上位二〇社へ天下った将官(将と将補)OBは、昨年度までの五年間で総勢九二人。受け入れた人数が最も多いのは、受注額が常にトップの三菱重工業で計一五人。次いで、川崎重工業(昨年度の契約高三位)と東芝(六位)の各一一人、三菱電機(二位)の八人、石川島播磨重工業(四位)、NEC(五位)、富士重工業(一三位)の各六人の順だ。二〇社のうち過去五年間に将官OBを採用していない企業は四社のみだった」
上野・諸富が逮捕された事件でも、この防衛庁とメーカーの腐った関係が表面化している。
「防衛庁の装備品をめぐる巨額背任事件で、四日に逮捕された前防衛施設庁長官(元防衛庁調達実施本部長)、諸富増夫容疑者(五九)が、過大請求した砲弾メーカーについては『刑事事件ものだ』などと厳しい処分を行う意向をしめしていたのに、その次に発覚した東洋通信機(東京都港区)の過大請求については途中で態度を一転させ、部内の会議で返還額の減額を『まあ、こんなところか』と発言していたことが、関係者の証言でわかった。東洋通信機の不正はこのメーカーに比べはるかに悪質だった。東京都地検特捜部は、諸富前長官が元副本部長の上野憲一容疑者(五九)としめし合わせて方針を変更、東洋通信機を優遇したことを裏付ける事実として重視している模様だ」
九八年九月五日の『毎日新聞』には、このように書かれている。受注する側と発注側が相互に依存して退廃を起こし、発注した連中がメーカーに天下ってくる図式は、あまりにも醜い。そうかといって、中央官庁と業界との関係でではどこでもこのようなことが起こっている。 通産省の高級幹部が鉄鋼・造船・電機メーカーなどに入り、大蔵省の高級幹部は銀行へ、運輸省や警察庁の高級幹部が交通関係の会社などに収まるっているのが、日本社会の現状なのだ。
■腐敗を深化させる密室化
さて、防衛庁にはこのような中央官庁に比べて、さらに悪質な体質がある。それは汚職現場を防衛秘という壁が幾重にも囲っていることだ。
軍事機密という鎧で守られた「防衛秘」は無数だ。しかも、あらゆるものが防衛秘として増殖しつづけている。防衛庁とメーカーの関係が防衛秘というガードによって密室化し、たがいに腐敗を深化させていった。日があたらないところにはカビが生えやすい。メーカーは限定され、コストはもちろんこと、コスト計算も発表されない。もちろん競合もしないという独占料金体制である。独占は腐敗を産む。
「防衛生産」という名の軍事生産は、巨大な虚構(フィクション)である。
日本の軍隊は「自衛隊」であって、戦争をしないのが前提である。戦争をしない軍隊に人殺しの兵器を納入するのも奇妙な話である。しかも、その兵器は実戦において試されることなく、生産しつづけられている。戦争がないという現実と、戦争があるというフィクションの間に挟まっているのが、防衛生産といえる。
防衛費のうちでも、兵器購入量である調達費をいかに増やすかが、メーカー側の狙いになっている。しかも金の掛かるミサイルや、そのミサイルを使って迎撃体制を整えるTMDなど、金喰い虫であればあるほど、メーカーに落ちるカネも大きい。
このような構造で生みだされたからこそ、国庫にすに一五億円以上の損害をあたえたことが発覚しても、防衛体制はびくともしない。
こうして、国民の気づかない間に防衛予算がどんどん増え、そのたいがいが、装備という名の兵器生産にまわり、そのなか中で防衛庁幹部と兵器メーカーとの癒着が強まってきた。兵器生産はムダな要素だが、そのムダにたかって、各自がフトコロを肥やした。
コストばかりが、危機を「過剰請求」してメーカーは国民の税金をポケットにいれてきた。兵器メーカーと防衛庁幹部の結託は、平和日本の象徴である。北朝鮮のミサイルを迎撃するために、さらに防衛力を強化するという過大宣伝は、またまた過大請求の基盤をつくることによる。「日本の防衛」は、すべてフィクションなのである。 (■談)
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