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石油を始めとする化石燃料は、今から約2億年前から6千万年前にかけて作られたとされている。 化石燃料は、大量の植物プランクトンの死骸が分解されないまま堆積し、温度、圧力などの条件が整った地層で石油や天然ガスに変化したものだ。 通常、植物プランクトンの死骸は有機物を分解する好気性細菌によって分解され、死骸がそのまま堆積することはあり得ない。死骸がそのまま堆積するのは海洋が無酸素状態となり、酸素を必要とする好気性細菌が死滅した場合だ。海洋が無酸素状態になることを「海洋無酸素事変」という。 地球規模の海洋無酸素事変は過去に少なくとも3回起きたことが確認されている。この事象が起きた年代の地層には大量の植物プランクトンや陸生植物その他の生物の死骸が分解されないまま堆積していることが特徴で、そうした地層が特定の年代かつ広範囲にわたって見られることや、その葉理の様子から、海洋無酸素事変の発生が見いだされる。最近ではジュラ紀前期および白亜紀中 3期間で認識されている。 この海洋無酸素事変の発生に関係しているのが「海洋ベルトコンベア」の停止だ。海洋ベルトコンベアとは、海洋の表層を流れる海水が北極付近で海水温が低下することによって比重が重くなり深海に潜り込む。深海には海洋表層とは逆方向の海水の流れがあり、約1500年をかけて地球を一周していると考えられている。深海の流れは赤道地帯と北太平洋で海水面に湧き上がっている。海洋ベルトコンベアが極地方で深海に潜り込む際に、大量の酸素も同時に海水中に取り込むことによって海水中の酸素濃度が保たれている。 海洋ベルトコンベアの流れが停止すると、海水中に酸素が取りこめなくなり、海洋は酸欠状態となる。海洋ベルトコンベアは、氷が無くなるほどに極地方が温暖化すると、海水温が低下せず、比重が変化しなくなるため深海への潜り込みが起きなくなる。このことで海洋ベルトコンベアの流れは停止する。 既に北極地方の極端な温暖化の進行は数多くの報道で多くの人の知るところとなっている。一方で海洋ベルトコンベアの流れが遅くなってきているのではないかとする報告がなされている。 「海洋ベルトコンベアベルトの変動」 海洋研究開発機構 むつ研究所 地球観測研究センター このまま温暖化が進行すれば、北極地方の氷の溶解が進み、海水温の上昇を招き、それがさらなる氷の溶解という正のフィードバック状態に陥ることになる。一旦、この状態に陥ると元の状態に戻ることは不可能となる。揺れるカヌーには自己復元力があるが、限度を超えてカヌーを揺らせばカヌーは転覆してしまう。 既に温暖化は後戻りできない状態にはまり込んだとする見方もある。 地球温暖化はもう止められない、気象学の世界的権威が新論文 海洋ベルトコンベアの流れが停止すると、局地的な変化としては暖流の流れが止まることによって北西ヨーロッパ地方に極端な寒冷化をもたらす。もっと重要な変化は、海洋全体が極端な無酸素状態になることだ。この状態の海洋では、植物プランクトンは死滅し、酸素を必要としない硫黄還元細菌が大量発生して海水中に硫化水素を排出する。海水中で飽和した硫化水素は地上へも広がり、そのことで生物の大量絶滅が発生する。 過去に起きた海洋無酸素事変は、全地球的規模での火山活動の活発化により、温室効果ガスである二酸化炭素濃度の上昇を招き、地球大気の気温上昇によって海洋ベルトコンベアが停止したためと考えられている。 現在の地球温暖化の原因は火山活動のためではない。ましてや太陽活動のせいでもない。皮肉にも数億数千年過去の海洋無酸素事変を経て生成された化石燃料を人類が大量消費することによってわずか100年で二酸化炭素濃度の急上昇を招いたことが原因だ。 人類はそのことで次なる化石燃料の生成開始のスイッチオン、つまり海洋無酸素事変をもたらそうとしている。過去にそうであったように、海洋無酸素事変を引き起こせば人類をも巻き込んだ生物の大量絶滅を引き起こす。まさに人類は自らの運命と引換えにその生存活動によって消費した化石燃料に見合う分だけの次なる化石燃料の生成開始のスイッチを入れようとしている。 |