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裁判記録を読んで湧き上がってきた「オウム事件」疑問の数々 110214週刊現代
週刊現代 2011年02月14日号
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この十数年、書こうかどうか迷いつづけてきたテーマがある。オウム真理教が引き
起こした一連の事件の探層である。麻原彰晃元被告の死刑判決は確定したが、オウム
事件には訳の分からぬことが山ほど残っている。
その一例を挙げよう。教団がリンを生成しているのを警察がつかんだのは、地下鉄
サリン事件(1995年3月) が起きる約半年も前だった。山梨県上九一色村(当時)
で異臭騒ぎが起きたため調べたところ、第7サティアンの側溝からサリン分解物質
が見つかった。駒年6月の松本サリン事件への教団の関与を示す決定的証拠である。
にもかかわらず警察は強制捜査に踏み切らず、地下鉄サリン事件を招いてしまった
1。なぜ警察はこんな奇妙な行動をとったのか。私の知る限り、まだ誰もその謎を解
明していない。
’89年11月の坂本弁護士一家殺害事件も、教団の犯行を疑わせるデータが多数あった。
翌年2月ごろには実行犯の1人が坂本弁護士の長男の遺体を埋めた場所の地図を神奈川
県警などに匿名で送った。同県警はいちおうその場所を捜索したが、なぜか遺体は見
つからなかった。
それから5年後の切年9月に遺体が発見された時、遺体があった場所の地下約70cmか
ら、錆びたスプレー缶が出てきた。かって神奈川県警が捜索した際、地表面に碁盤の
目のように線を引いて区分けするために使ったラッカーだった。
神奈川県警は「たまたま遺体近くまでしか掘り起こさなかったため発見できなかっ
た」と釈明したが、約402mの狭いエリアなのに、その一部しか掘らないのはあまりに
不自然だ。もしかしたら警察は事件を振りつぶしていたのではないか。
オウム事件の裁判記録を読むと、そんな疑問が次々と湧いてくる。事件の首謀者と
された麻原元被告の人物像もそうだ。報道では彼は自らの罪を免れるため、元弟子た
ちに責任をなすりつけようとした男である。
だが、実際に責任逃れをしようとしたのは元弟子たちのほうだろう。麻原元被告は
彼らの悪口を一度も言っていない。彼らから糾弾されても気にせず、彼らをかばう姿
勢を崩さなかった。
浅原弁護団は元弟子たちの暴走で事件が起きたことを立証しようとした。そのため元
弟子たちの証言の矛眉を追及した。すると彼らは言い逃れができなくなって窮地に陥
る。そんな場面になると、たいてい麻原元被告が「子供をいじめるな」と言いだし弁
護側の反対尋問を妨害した。「ここにいるI証人(地下鉄サリンの実行犯) はたぐ
いまれな成就者です。この成就者に非礼な態度だけではなく、本質的に彼の精神に悪
い影響をいっさい控えていただきたい」
それが麻原元被告の一貫した主張だった。彼は自分の生死には無頓着で、元弟子た
ちの魂が汚されることをひたすら恐れていた。裁判記録からは、そうした彼の宗教家
としての姿勢がはっきりと浮かびあがる。
としたら、なぜ彼の教団は凄惨極まりない事件を次々と引き起こしたのか。先ほど
触れた警察の不可解な動きや、元弟子たちの教団内での確執、それにオウムの教義の
変遷の歴史を丹念に調べていけば、謎は自ずから解けていく。私は最近になってそう
思うようになった。
折から麻原元被告の親族が2度日の再審請求をした。松本サリンや地下鉄サリンの
実行犯・遠藤誠一被告の控訴審での新証一石をもとにしたものだ。遠藤被告は両事件
とも「(刺殺された教団ナンバー2の)村井秀夫が独断でやったと思う」と述べてい
る。別の元弟子は、麻原元被告から犯行を指示されたという自らの法廷証言を一部否
定する手紙を書いた。
事件の真相が関係者の口からじわじわと漏れ、検察が組み立てた壮大な虚構が崩れ
る兆しが見えだした。遅ればせながら、私も本格的な取材に踏み切ることにした。近
いうちに本誌でその結果をお伝えできると思う。
この欄は、魚住昭氏、森功氏、岩瀬達哉氏、青木理氏のリレー連載です
うおずみ・あきら/151年熊本県生まれ。共同通信社に入社後、社会部などを経て’9
6年退社。『野中広務 差別と権力』(講談社)で講談社ノンフィクション賞受賞。
著書に『特捜検察の闇』(文垂春秋)など
参考
オウム事件の背後に潜むもの/日本の闇を探るC/石井紘基氏の握っていた秘密とは?(日本人が知らない 恐るべき真実)
http://www.asyura2.com/0610/nihon21/msg/199.html
投稿者 gataro 日時 2006 年 10 月 16 日 10:16:16: KbIx4LOvH6Ccw
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