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マカオのカジノ産業に見る中国本土事情:井川さんもはめられはまったジャンケットシステムなど
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投稿者 あっしら 日時 2011 年 12 月 16 日 21:27:34: Mo7ApAlflbQ6s
 

マカオのカジノ産業に見る中国本土事情

2011.12.16(金)
(英エコノミスト誌 2011年12月10日号)

中国沖合いのギャンブルのメッカを見て、中国のビジネスについて分かること。

中国の沿岸部から程近いマカオのカジノは、超金持ちのエネルギーと奔放な振る舞いに満ちている。大理石の柱や金の装飾、そしてカネが街中に溢れている。だが、光り輝く外観の裏には、もっと暗い予兆が見え隠れする。

 マカオの成功は、純粋に賭け事に対する中国人の情熱だけで成り立っているわけではない。不安に駆られ中国本土から逃げ出す大量の資金も、マカオの原動力となっている。マカオの裏舞台をのぞくと、中国の汚職の実態と、多くの中国人ビジネスマンがいかに本土の政治情勢に怯えているかが明らかになる。

 2004年に米国のカジノ運営会社がマカオに最初の施設をオープンして以来、マカオはディーラーがチップをさばく以上のスピードで成長を遂げてきた。

ラスベガスの4倍の規模に急成長

 今年1〜11月期の賭博収入は、2010年同期より44%も多かった。マカオは今やラスベガスの4倍の規模を誇る。旧ポルトガル植民地で、1999年に中国の「特別行政区」になったマカオは今、世界のギャンブルの首都なのだ。

 個室に入って借りたカネで賭博に興じる野心家――VIPと呼ばれる人々――は昨年、235億ドルに上るマカオの賭博収入の約72%を生み出した。

 中国本土では賭博が違法なため、中国人にとってはマカオが格好の目的地となる。この島特有の「ジャンケット」システムが、裕福な中国人をマカオに呼び込むのに一役買っている。
 ジャンケットは、大金を賭ける人にカネを貸したり、宿泊施設を手配したりする仲介人で、カジノが得る収入の40%相当を報酬として手にする(ラスベガスでは、カジノがギャンブラーの身元を調べ、直接カネを貸す)。

 だが、今年1〜10月期に1320万人以上の本土の中国人をマカオに呼び寄せたのは、カードゲームへの情熱だけではない。多くの人は、人民元の国外持ち出しに対する中国の厳しい制限を逃れるためにマカオを訪れるのだ。
 例えば、公金を着服した政府関係者がジャンケットを介してマカオで賭博に興じることもあるだろう。
 その人物がカジノに到着すると、既にチップが用意されている。清算の際には儲けが香港ドルで支払われ、香港の銀行に隠し置かれたり、もっと遠くまで運ばれたりする。

 「マネーロンダリング(資金洗浄)の方法は、我々が考える以上にたくさんある」とマカオ大学の経営学準教授、デイビス・フォン氏は言う。

マネーロンダリングの温床

 ジャンケットを避け、代わりに質屋や様々な店舗を利用する人もいる。そうした人たちは人民元で商品を購入し、すぐにマカオの通貨パタカか香港ドルで商品を買い戻してもらう。もちろん、ここでは店主の手厚い取り分が差し引かれる。
 マカオでどのくらい資金がロンダリングされているのかは誰にも分からないが、「死ぬほど法外な金額に上るだろう」とある居住者は言い切る。

 中国本土では、個人資産を保護する法整備が整っていない。富裕層――手抜き仕事などで金持ちになった人も多い――は、突然すべてを失う恐れがあることを知っている。また、多くは、中国共産党が次世代の指導者を選出する来秋に、政界の後ろ盾を失うことを危惧している。彼らがカネや家族の避難先を探そうとするのも無理はない。

 資産や富裕層を調査する「胡潤報告書」によると、裕福な中国人の14%程度は既に国外に出たか、外国のパスポートを取得するため申請手続きを進めているという。このほか46%の人が、どちらかの選択を検討しているという。

 バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが最近出したリポートは、今年、「熱銭(ホットマネー)」が中国から急速に流出したことの撹乱効果について警告を発している。

 マカオ経由でカネが流出していることに北京の中央政府は気付いており、2008年に本土の中国人に対するマカオのビザの発給件数が一時的に絞られたのはそれが原因かもしれない。

 オンラインのトラブルメーカー、ウィキリークスが公開した公電によると、ほかにもマカオを監視しているところがある。
 2009年12月に香港の米国総領事館から国務長官宛に送付されたメモには、マカオの驚異的な成功は、マネーロンダリングを奨励するとまでは言わないまでも容認する風潮の上に成り立っている、と書かれていた。
 2008年の公電では、当時、駐香港米国総領事だったジョセフ・ドノバン氏が、「本土から来る中国人の一部は、着服した公金や汚職によって手に入れた収入で賭博を行っており、そうした資金の大部分はマカオでないとしたら中国本土の組織犯罪集団に流れている」と書き記している。

中国経済が減速したらマカオへの打撃は・・・

 多くの人は、中国の「闇金融」システムの安定に対する懸念もあって、ジャンケットの財務状態を心配し始めている。
 もし裕福な中国人のビジネスが破綻したり、不動産投資の価値が急落したりしたら――中国本土の経済が減速すれば、そうなる恐れがあると一部の人は懸念している――、マカオで営業している200前後のジャンケットはギャンブラーからカネを回収するのが難しくなるかもしれない。よくても、貸せるカネが減るだろう。

 だが、債権を回収できないジャンケットが破綻して、彼らにカネを貸し付けてきたカジノが巨額の損失を負う可能性もある。カジノ幹部の多くは、ジャンケットにいくらの貸しがあるかも知らないらしく、デフォルトがどのくらいの規模になるかを判断することさえ困難だ。
 カジノの運営会社は顧客と同様、今でも将来の儲けに対して楽観的な見方をしている。アナリストらによれば、これまでに大手のジャンケットが融資の焦げ付きを報告してきた例はないという。

 あるカジノ幹部は最近、ジャンケットが潰れることより、マカオの政府関係者が汚職スキャンダルに巻き込まれたり、カジノで殺人が起きたりすることへの不安の方が大きいと語った。ひとたび大きな犯罪が起きれば、恐らく中国はマカオのビジネス――特に賭博産業――への介入を強めるだろう。

VIPではなく、大衆を呼び込め

 カジノの運営会社は間違いなく、そうした事態を回避したいはずだ。実際に彼らは、娯楽としてギャンブルを楽しみたい「大衆市場」の顧客をもっと呼び込もうとしている。
 そうした人たちはカジノで遊ぶためにカネを借りなくてもいいし、カジノにとっては利幅が大きくなる。カジノがジャンケットに手数料を払わなくてもいいからだ。

 広東省からマカオに建設中の高速鉄道が完成すれば、そうした客を呼び込みやすくなる。一部のカジノはブラックジャックのスペースを減らし、店舗や劇場、レストランのスペースを増やしている。

 こうした動きは、市民に外貨よりは宝石を買ってほしいと思っている北京政府をなだめることになるかもしれない。だが、中国本土に資金を置いておく不安が残る限り、カネを持ち出そうとする動きは止まらない。そして、マカオは非常に都合のよい場所なのだ。

© 2011 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/32980

 

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