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中国の最近の行動は、米国の下院議員が自らの筋肉隆々の威圧的な写真をライバルにツイッターで送りつけるようなものだ。
中国政府は先ごろ、ベトナムとフィリピンに対し、中国が両国とそれぞれ領有権を争う南シナ海の海域で石油の探査活動を行なわないよう警告した。先月末には、中国海軍の船舶がベトナムの地震探査船の調査用ケーブルを切断したとされている。フィリピン政府が中国に対して申し立てている苦情も同様に深刻だ。フィリピン政府によると、中国はフィリピンの石油探査船を妨害して、領有権を争っている海域に石油掘削基地を建設するための物資の荷卸しを違法に行なったうえ、ベトナムの領空に戦闘機を送り込んだという。
どうやら、アジアの海域で半年間も行儀よく過ごすというのは、中国政府の幹部にとって少々無理なようだ。中国は東シナ海と南シナ海でいくつも挑発事例を起こしてきたが、米国のクリントン国務長官が昨年7月、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラムの場で公に厳しく批判してからは、行動を控え、近年中国に多くの成功をもたらした微笑外交に立ち戻ろうとした。だが、もう我慢できなくなった。中国は近隣諸国を再び脅している。
中国政府はベトナムやフィリピンが共同探査をめぐる合意に違反したと主張しているが、国際社会は、中国が自らの満足のいくように紛争を解決しようと、増大の一途にある軍事力を行使することに何の良心の呵責も感じていないことを懸念すべきである。国力と軍事力が増大するに従い、中国は海域をめぐる領有権の一切について、譲歩するつもりはなさそうだ。
中国政府はこの10年間、米国政府の決意がどれほどのものか、試してきた。最近も、西太平洋で実弾演習を行なうと発表、具体的な海域は明らかにしていないが、日本と米国の軍事基地の近海で実施するとみられる。中国のこのところの行動を受けて、ベトナム政府は同国中央部沿岸で実弾演習を実施すると発表した。限定的とはいえ、実弾演習が行なわれれば不安さは増すばかりだ。
アジア諸国と米国は、中国が平和的隣人に示している自己主張に対処する方法をまだ見つけ出していない。少なくとも3つの理由から、正しく対処することは重要である。
何よりもまず、中国は、意図的であるかないかにかかわらず、近隣諸国が自らの国益に関係なく中国の要求に従わざるを得ないと感じる状況を作り出している。そのような対応が当たり前になれば、その時には、中国はアジアの地域政治の性質を大幅に、おそらく根本的に変えてしまっているだろう。
そうなれば、中国は、際限なく他の要求もできるようになるだろう。その中には、海洋開発計画への反対や航行の自由への干渉など、今は非現実的とも思えるものも含まれるだろう。ひとたびそのような分岐点に達すれば、多国間による協力的な行動パターンにすぐに引き返すことは、不可能ではないにしろ難しくなる。
第2に、中国が近隣諸国を威嚇したり妨害したりしても許されれば許されるほど、北朝鮮のようなその他の破壊的な政府は、ますますつけあがり中国と同じような行動に出ようとするだろう。その結果、ゆっくりと進んでいた地域の不安定化がさらに進み、自由主義の国にとって、国際ルールに従うと合意することがさらに困難になる。そうなれば、米国は、人手も金も使い果たしつつあるというときに、安定の確かな守り手としての役割を維持するよう、ますます圧力を受けるようになるだろう。
最後に指摘したいのは、中国の威嚇に対するベトナムの反応が示すとおり、小国は必ずしも黙って脅迫を受け入れるわけではない、ということだ。ゲイツ米国防長官が今月、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で警告したように、軍事力を背景とするつばぜり合いや衝突の可能性が増大するだろう。
中国の行動はすでに、さらに広い海域のインド太平洋地域で軍拡競争をもたらしている。海軍装備品の発注は過去数年間で劇的に増加している。インドだけでも、海軍の増強に500億ドル超の支出を計画している。一方、日本は潜水艦隊を増強すると同時に、航空機が離発着できるほど大規模なヘリ空母を建造している。
こういった事態によって、米国の役割はさらに難しくなると同時に、重要になっている。中国に不信感を抱き、恐れているにもかかわらず、アジア諸国の中には、米国の側について中国とバランスを取っていると受け取られてもいいと考えている国はほとんどない。また、米国の同盟国の多くは今後、国防費全体を現状の水準で維持するか、削減することを予定している。
要するに、米国は、万事うまくいくと信じようとしないかぎり、中国を取り込む努力を続ける一方で、現在の安全保障上の責務を維持し、さらに、合理的な行動の基準を支持し続ける以外に選択肢はない。
世界経済は中国経済も含め、アジアの安定と成長に依存している。しかし、近年の傾向を見ると、アジアの未来が平和であるとの前提には疑問符がつく。変化の大部分は海の底に隠れているが、アジア大陸周辺の海域はさらに荒れつつある。半世紀にわたって驚異的な経済成長を経験したアジアは今、不確実性やそれ以上に悪い事態を恐れている。もし中国が大国として尊敬を集めたいと思うのであれば、自らの要求を抑え、自制心を持つことを学ばなければならない。
(マイケル・オースリン氏はアメリカン・エンタープライズ研究所の日本部長でウォール・ストリート・ジャーナル電子版のコラムニスト)
ウォール・ストリート・ジャーナル 6月15日(水)11時21分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110615-00000009-wsj-bus_all
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