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【石平のChina Watch】
中国、震災「日本応援コール」の背後に「道徳崩壊寸前」への深刻な反省
2011.3.31 10:30 :産経新聞
未曽有の大震災がわが国を襲って以来、隣の中国では、かつて見たことのない「日本応援コール」が巻き起こっている。
震災直後、ネットとマスメディアで上がってきたのはまず、日本人に対する称賛の声だ。災難に際しての日本国民の冷静沈着さと秩序感覚、非常事態の中でも他人様(ひとさま)に迷惑をかけない心構え、さらには「震災後の品不足の中でも便乗値上げが見られない」という「不思議な」現象など、日本では「当たり前」とされる事柄のすべてが、多くの中国人に多大な衝撃を与えて、彼らを大いに感心させたようである。
そのことの持つ意味は非常に大きい。日本国民が自らの行いをもって、江沢民政権以来の反日教育が中国国民に植え付けた「悪魔的な日本人像」の一角を崩したことになるのと同時に、中国人自身の意識変革の発端ともなりうるからだ。
というのも、震災に際しての日本人の諸々の美徳に対する称賛の背後にあるのは、まさに中国社会の「美徳の喪失」への深刻な反省なのである。そう、多くの中国人は、まさに日本国民の行いを鏡にして、「道徳崩壊寸前」といわれる中国社会自身の醜さを照らしてみて、「われわれは一体どうなっているのか」と自問しているのである。
震災の最中、日本国民に声援のコールを送ったり実際の支援を呼びかけたりする動きが中国で見られたことも特筆すべきであろう。中国の百人の学者が人民日報傘下の環球時報で「日本に温かい支援の手を差し伸べよう」と題する声明を発表したことや、中国映画「唐山大地震」の馮小剛監督が50万元(約620万円)を被災地に寄付したことはその最たる例である。
台湾で馬英九総統夫妻も登場して邦貨にして約21億円もの義援金を集めたチャリティーイベントが開催されたことと比べれば、中国国内の震災支援の動きはまだまだ小規模なものにとどまっているが、このような動きが出ていること自体、実に喜ばしい。
私自身も、かつての祖国から「日本支援」の声が聞こえてきたことを大変うれしく思っている。そしてそれは、近年の市場経済の発達とともに「市民社会」が広がっている中で、人間尊重や人道主義などの「普遍的価値」に、中国の人々が徐々に目覚め始めたことの表れでもあろう。
その一方、「日本支援」を主張する一部の有識者やマスメディアの論調の中には、たとえば次のようなものもある。曰(いわ)く、「わが中国は文明度の高い大国であるから、懐の深さと包容力の大きさを持っている。したがってわれわれは、日本民族の犯した罪を傍らにおいても、今の日本人民に救いの手を差し伸べるべきだ」と。
このような論調は明らかに、「歴史」の視点から日本への一方的な断罪を求めながら、「日本人に懐の深さを見せてやろう」というものだが、その背後にあるのはやはり、中国人自身の「屈折した被害者意識」と、近隣国を上から見下ろすような相変わらずの「中華思想」であろう。
われわれ日本国民としては、中国人からの応援コールを感謝の気持ちをもって素直に受け入れるのと同時に、いわば「高いところからの日本支援論」には心を惑わされる必要はない。好意には感謝すべきだが、「懐の深さ」云々(うんぬん)はご免被りたいのだ。
そして26日、日本が震災で苦しんでいる最中、東シナ海の海域で中国ヘリが海自護衛艦に近接飛行した事件も起きた。「火事場の泥棒」と称すべきこの挑発行為からも、「大国」としての中国の本性はよく分かるのではないか。
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【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
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