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http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920010&sid=aj8n1mkLs88Y
12月9日(ブルームバーグ):ノーベル平和賞は通常、国と国の距離を近づけた人に与えられるものだ。しかしノルウェー・オスロで現地時間10日に開かれる今年の授賞式は、世界にとって不可欠な米中2カ国間の距離がいかに離れてしまったかを示すだろう。
中国の民主活動家、劉暁波氏のノーベル平和賞受賞に激怒した中国に対し、米国は急ペースで成長を遂げる中国での人権問題にこれまでないほどの注目が集まることに興奮を隠せないようだ。
だがこのノーベル平和賞をめぐる騒動は波乱の幕開けにすぎない。G2(主要2カ国)とも言える米中関係は順調に進むと夢見ていた人たちは、厳しい現実を目の当たりにするだろう。中国が北朝鮮への影響力行使に消極姿勢を見せていることもG2の関係が困難な段階に入ったことを示唆しており、市場を不安にさせる。
14兆ドル(約1170兆円)規模の米経済は依然として中国を圧倒している。しかし、巨額債務や長引く戦争に加え、影響力の衰退といった米国側の事情が中国に勢力を伸ばす大きなチャンスを与えている。この力学を米当局者は十分把握できていないようだ。これから1年間で米中間の緊張は一気に高まる恐れがある。考えられる4つの火種は以下の通りだ。
まずは通貨問題だ。今年は両国関係が極端に冷え込んだことから、反動で来年は改善するとの見方がある。その可能性もないわけではないが、米失業率が10%に近づくなか、中国への反感が一段と高まる公算の方が大きい。
都合のよい悪役
米国の政治家は、雇用の乏しさの理由を知りたがる有権者に対し、中国を都合のよい悪役に仕立てるだろう。しかし、社会の安定のために輸出主導型成長を維持しようと必死になっている中国が、米当局者を満足させるために大幅な人民元上昇の容認に合意するとは考えにくい。
この問題だけでも、米中両国が世界経済の回復のために手を組むという見方がいかに絵空事かが分かる。クリントン国務長官が昨年、当時のラッド豪首相に対して語った言葉がすべてを物語っている。民間内部告発ウェブサイト「ウィキリークス」が公開した米外交公電によると、クリントン長官は中国を米国のバンカーと表現し、「バンカーに対してどうすれば厳しく対処できるでしょうか」と問い掛けたという。
これは核心を突いている。中国が8840億ドル相当の米国債を保有している事実は、米国が中国に政策手段を要請することはできても強く要求することはできないことを意味する。しかし多くの議員はそのことを理解していない。
北朝鮮とサイバー戦争
第2に北朝鮮問題だ。砲撃事件を起こした北朝鮮の金正日総書記は、韓国だけではなく、中国にとってのリスクも高めている。諸問題を抱えている中国に対し、米国は向こう1年間、金総書記への働き掛けを強めるよう求めるだろうが、中国は恐らくそれを拒否するのではないか。このため市場と信用格付けは不安定となっている。
第3の問題は、中国の愛国的なハッカーだ。米紙ニューヨーク・タイムズはウィキリークスを引用し、中国当局の支援を受けたハッカーらが米政府機関やグーグルなどの米企業に対して、大規模な攻撃を仕掛けたと報じた。
サイバー戦争はもはや想像上のものではなく現実だ。中国の軍備拡大も問題だが、このサイバー上の軍拡競争はもっと差し迫った脅威となっている。
最後にアジアの将来をめぐる問題がある。米韓両国が自由貿易協定(FTA)交渉で合意に達したことは米国にとって、世界の地域で最も高成長を遂げているアジアではめったにない勝利となった。それは米国が10年ぶりに再びアジアとの貿易を重視している表れだ。
アジアは動揺している
アジアの国・地域は、中国が領海や領土をめぐって近隣諸国に示した過剰な反応に動揺し、レアアース(希土類)輸出割当枠や北朝鮮への支持継続にもショックを受けた。さらに世界各国にノーベル平和賞授賞式の欠席も呼び掛けるなどの中国の外交姿勢を受け、アジアは同地域に米国の影響力が戻ってくるのを歓迎する可能性がある。
米中両国間には、市場の不均衡是正やソマリア沖の海賊対策、テロとの戦い、アフガニスタンと中央アジアへの投資、カリフォルニア州高速鉄道建設、自由貿易拡大など協力すべき多くの問題がある。今後1年間に想定されるリスクは、協力する分野よりも対立する問題が急ペースで増えることだ。
米上院外交委員会のケリー委員長は7日、米議会が中国の重商主義的な方法にいら立っており、行動を取る可能性があると述べた。議員らは、中国の胡錦濤国家主席の来年1月の訪米前に人民元に関する進展を求めている。
米国は注意深く前進する必要がある。中国は脅しに長けているからだ。ひょっとしたら来年にも中国が影響力の強い行動を起こす可能性もある。すなわち米国債保有の削減だ。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
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