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http://jp.wsj.com/Business-Companies/node_150172
【青島(中国)】高速鉄道のパイオニアである日欧企業が中国の鉄道建設で合意した時、多くの利点があるはずだった。新たな市場への参入、数十億ドル規模の契約、そして史上最も野心的な高速鉄道システムを構築したという名声。
誤算だったのは、合意からわずか数年で中国企業との競合を余儀なくされたことだ。
中国の鉄道会社はかつて、川崎重工業や独シーメンス、仏アルストム、カナダのボンバルディアといった企業のジュニアパートナーだったが、今や、急成長する超高速鉄道システムの世界市場でこうした企業のライバルとなっている。米国、サウジアラビア、ブラジル、そして中国国内で彼らが売る鉄道は、多くの場合、海外の競合相手よりも速い。カリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事は、州内の高速鉄道建設への中国による支援に関心を示している。
中国の鉄道ビジネスの発展は、外国提携企業を犠牲にしてでも、国有企業を振興し、先進技術を吸収する、という国家経済戦略の表れだ。このアプローチこそ、米国はじめ主要国への挑戦であり、中国で展開する多国籍企業の間から不満が噴出する原因となっている。
自動車、航空宇宙などの業界は、合弁を通じて中国の広大なマーケットを求めてきた。しかし、一部の企業は、技術供与により、中国のライバルに世界市場での競合への扉を開いてしまった。国際通貨基金(IMF)の朱民特別顧問は、現在世界輸出の8%に相当する中国の最新型機械の生産シェアが、10年以内に30%に上昇する可能性があるとの見方を15日のウォール・ストリート・ジャーナル主催の最高経営責任者(CEO)カウンシルで明らかにした。
中国は、自国企業が売る鉄道が外国技術によって開発されたことは認めている。しかし、当局者は、中国南車(CSR)などの中国企業は独自の技術革新を加えており、完成した製品は中国製にあたる、と主張する。中国鉄道省は、「中国の鉄道業界は、外国技術を学び、体系的にまとめ、再革新することで、新世代の高速鉄道を製造した」と本紙の質問に回答した。一部の海外企業幹部は、輸出に「再革新」の技術が含まれた場合、それは中国の契約違反だと指摘する。
港湾都市青島に広がるCSRの製造拠点で、溶接の火花が舞う中、中国の鉄道産業の未来がまさに形作られている。ここで生産される最先端の高速列車「CRH380A」は、完全に水平になるファーストクラス・シートを装備、最高時速は236マイル(約380キロ)に達する。2012年の北京−上海間の開通時には、現在10時間かかる両都市を4時間で結ぶ。
CSRは2004年、日本の高速鉄道技術を川崎重工との契約の一環として導入した。CSRのエンジニアと幹部は、日本の技術に改良を重ね、一段の高速化を実現した、としている。現在、日欧の営業運転車両の最高時速は約199マイル(約320キロ)。
CSRのシニアエンジニアのリァン・ジャニン氏は、工場内で組み立て途中の銀青色の「CRH380A」を前に、車輪とレールの摩擦抵抗をいかに減らし、空気力学の理想に近づけたかを誇らしげに説明した。
工場の広報担当主任のウー・クンリャン氏は「見てください。川崎重工の新幹線とは全く違うでしょう」と話に割って入った。別のシニアエンジニアは、「本当にオリジナルの技術革新はまれです。われわれは、先人の実績に基づいて独自の高速鉄道技術に到達したのです」と述べた。
海外企業は大抵、公の場での鉄道省批判は控えているが、川崎重工は、独自技術を開発したとの中国側の主張に異論を唱える。同社幹部らによると、現在運行中の中国の鉄道は、外国パートナーの鉄道と大差なく、外側の塗装と内装に手を加え、高速を実現するために駆動システムを強化しただけだという。川崎重工は、「中国鉄道部は海外から供与された技術を消化吸収し、それに独自の改良を加えて新しい技術を自主創造している、としている。その技術の知財を独占保有するとしているが、当社を含めて技術供与した海外メーカーは鉄道部とは異なる意見を持っており、商務的な解決を計るべく折衝をしている」と書面で述べた。川崎重工は、こうした問題が企業交渉を通じて解決されることを期待する、としている。同社は、鉄道省との間で締結した技術移転契約は、技術使用は国内に限られると定めており、中国企業は輸出にそうした技術を使うことができない、と交渉の中で強く主張している。
同社幹部から漏れ聞かれる中国に対する不満はもっとあからさまだ。ある幹部は、最近開発された高速鉄道の大半が中国独自の技術だと言うのは、国家のプライドにとっていいのかもしれないが、それはうその宣伝にすぎない、と述べた。同幹部は、こちらから供与した技術を持ち、コストが格段に低い相手とどうやって闘えるのか、と頭を抱える。
諸外国も海外技術を利用してきた。戦後の日本は、外国製品を分解して研究するなどして苦難の道を切り開き、ハイテク、鉄鋼、造船、自動車などの業種で多くの企業を抱える技術大国となった。韓国も似たような道を歩んできた。
中国の異なる点は、巨大な国内市場を持ち、海外企業が技術供与に協力してしまうということだ。国内企業保護を強化する中国は、市場でのビジネスと引き換えに、さらに高度な技術移転を要求することが可能だ。「新たな技術やアイディアを持つ中国参入企業は、『泥棒文化』とも言うべき文化に対処しなければならない」とニューヨークのコモドー・リサーチ&コンサルタンシーのアナリスト、アンドリュー・フォーブス・ウィンクラー氏は語る。「携帯電話から自動車に至るまで、中国企業は、堂々と他人の知的財産を使って改良を加える、または模倣する」とウィンクラー氏は言う。
中国の高速鉄道への野心はすでに世界に向かっている。建設会社の中国中鉄(チャイナ・レールウェイ・グループ)は、ベネズエラの高速鉄道プロジェクトに参加する。また、中国鉄建(チャイナ・レールウェイ・コンストラクション・コープ)は、トルコのアンカラとイスタンブールを結ぶ高速鉄道の建設を支援する。中国鉄道省は、ブラジルの高速鉄道の入札に中国企業が参加すると明らかにしている。高速鉄道網の建設に80億ドルを投じるオバマ政権は、中国企業に入札の資格があるとの見方を示している。米運輸省の報道官は、川崎重工と中国の問題についてコメントを拒否した。
中国政府は2004年、アルストムおよび川崎重工との間で鉄道車両の購入契約に署名した。納入車両第一陣は組み立てられた状態で出荷された。その後両社は、中国の製造拠点の設立を支援。中国人エンジニアを訓練する一方、国内の部品のサプライチェーンの構築も助けた。シーメンスとボンバルディアは、アルストムと川重と同様の契約を締結した。是非とも契約を取りたかったし、中国と契約しなければ、ほかのライバルに負ける懸念があった、とシーメンス、川重の幹部は指摘する。彼らは、中国企業がライバルとして自分たちを脅かす存在になるには数十年程度の長い年月がかかるとみていた。
当時の為替換算で7億6000万ドルの川崎重工が04年に結んだ取引には、新幹線「はやて」の広範な技術とノウハウをCSR傘下の青島四方機車車両に供与することが含まれていた。この車両の中国名は「和諧」(調和の意)。胡錦濤国家主席が掲げる政治スローガンと同じ言葉だ。最高時速は155マイル(約250キロ)。
川崎重工は新幹線「はやて」を9編成、中国に輸出した。その後、中国国内での51編成の「はやて」の生産を日本からの部品輸送を含め支援した。また同社は、CSRのエンジニア数十人を日本で育成。そのエンジニアの一部が、現在年間200編成の生産能力を持つ青島工場の設立に貢献した。その後何年にもわたって、中国は、さらなる高速化のための追加的な技術供与を川崎重工などに要請した。そのたびに川崎重工は契約を締結し、数百万ドルの手数料を得た、と同社の幹部は話している。
企業の幹部には、中国との取引の妥当性に疑問を示す向きもある。JR東海の葛西敬之会長は、中国への輸出事業に参加しなかったと語り、技術移転の条件が好ましいものではなかったことを理由に挙げた。
CSRやそのほかの中国の車両メーカーは、一段と高速な鉄道システムの生産を始めた。北京オリンピックを控えた2007年末、中国は北京と天津を結ぶ高速鉄道を開通させた。同鉄道の最高時速は205マイル。昨年は時速217マイルの別の高速鉄道が開通した。
中国の鉄道産業の発展には、問題ばかりでなく、交通網の充実などの恩恵もある、との指摘も聞かれる。調査会社APCOワールドワイドの鉄道アナリスト、マリー・キング氏は言う。「中国を少しは評価してもよい」
記者: NORIHIKO SHIROUZU
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