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孫崎 享氏のTwitterより 〜 尖閣関連の抜粋
http://twitter.com/magosaki_ukeru
Oct 1st
断固(軍事含む)領土(尖閣)を守るべきと言う人が多い。問は「どう守るの?」。長期的に中国GDP日本の4倍。中国国防割合8%として、互角になるには日本将来GDP比32%を軍事に。ありえない。中国はすでに核保有。次第に米国の対中「核の傘」なくなる。軍事選択なし。これを踏まえ策模索。
歴史(第二次大戦):「対米英蘭戦争終末促進に関する腹案:米は民主主義の弱点から全力をあげた戦争は出来ず,占領地の相当部分を日本が保有することを認めて妥協」
今日は自分で守る能力なく米国頼み。かって米国戦闘意欲消滅に期待。勇ましさの後には確固たる力必要。それなしでの勇ましさ危険。
Oct 2nd
尖閣と米軍(総括)
日米外相会議でヒラリー「尖閣は安保の対象」と述べたと報道。これにより、多くの日本人は米国が尖閣を軍事的に守る法的義務があると了解。しかし事実ではない。安保は「米国憲法で行動」と規定。米国憲法は議会が改選を決定。よって政治的判断。中国の大国化でこの決定困難に。
尖閣に対する米国の基本的立場は(1)日中領有問題で対立。よって米国立場をとらず(中立)、(2)尖閣は日本の管轄地、よって安保条約の対象。安保条約五条は「管轄地に対する行動に自国の憲法上の規定及び手続きで行動」と規定。米国憲法は戦争宣言は議会、実施は大統領権限と明記。
具体例:ベトナム戦争時、北越米国艦艇攻撃(後マクナマラは事実を否定)、これで米軍北爆開始。その際、議会の承認をとる。従って尖閣で中国との戦いは当然議会承認案件(少なくとも政治的に)。よって米軍の尖閣で対中攻撃参加は法的な義務でなく米議会の政治的判断。これが問題点。
中国GDP、本年日本を抜く。2030年までに米国を抜く。この認識米国に存在。これをうけ米国の東アジア情勢認識変化。本年日本外務省実施の米国世論調査「米国にとり最も重要なパートナーは?」で有識者は中国56%。日本36%。この中、尖閣で日本側につき中国と戦う選択の蓋然性小。
今一つ、米国領有問題で中立。よって領有問題から派生する日中間紛糾には中立の可能性大。今回も9月20日米国務省報道官は「日中間の問題」とした。米国中立と言ったも同じ。ナイ同様発言。加えて2005年日米合意の『日米同盟未来のための変革と再編』の役割の項で島嶼防衛は日本。
岡田、前原両外相は記者懇談で尖閣の軍事衝突時当初米軍でないと認める。重要なポイントは安保条約の「管轄」。衝突すぐに米軍でない。もし自衛隊勝てばそれでいい。負ければ管轄は中国に移行。その際米軍は出る条約上の義務消滅。初動段階で米軍参加を避ければ米軍介入避けられる。見事。
Oct 4th
尖閣:10月4日毎日新聞世論調査発表。問:船長拿捕が適切であったか。適切83%、適切でない13%。よって私のtwitter発言は世論に抗する形。考えてみれば拿捕当時朝日、読売、毎日、日経は全て社説で「拿捕当然」としたことを考慮すればこの結論当然。
「釈放適切」は22%、適切でない は74%。「日本固有の領土、毅然と対応」なら当然。ただし日中関係樹立時の双方の理解は係争。「もし釈放ない時中国の反応は?」を考えれば私は拿捕反対、早期釈放支持。領土はナショナリズムに訴える可能性大。軍事衝突の最大が領土問題関連。それだけに我々領土問題を冷静に学ぶ要有り。
Oct 5th
尖閣列島有事に米軍出動につき米国の約束は、「安保条約の対象」であるまで。安保は米国は「憲法により行動」と規定。憲法では開戦権限は議会。よって米国内で一般的に出動をどう受け止めているか重要。
10月3日付TIMEの記述:「(前原氏はクリントンが尖閣は安保対象と述べたと発言と記載後)東シナ海のわずかの岩々をめぐって、米国が本当に中国との戦争を考えているとはとても信じがたい」安保条約の対象だ、だから尖閣有事の時米軍が出動してくれると思うのは日本の片思い。
Oct 6th
尖閣と戦略
昨日或るクラブで講義。聴衆者から「中国が軍艦出したら戦ったら良い。そうしたら日本人も覚醒する。」一理あり。しかし最適の戦略は相手の力に比し変化。孫子:、戦争の原則は、味方が十倍であれば敵軍を包囲し、五倍であれば敵軍を攻撃し、倍であれば敵軍を分裂させ、等しければ戦い、少なければ退却し、力が及ばなければ隠れる。小勢なのに強気ばかりでいるのは、大部隊の捕虜になるだけ。
では日中の力のバランスはどうなるか。本年内閣府は『世界経済の潮流』を発表、2030年のGDP(世界の割合)を中国24%、米国17%、日本6%で日本と中国の比、1対4に。
軍事費:現在日米の差1対10。中国は軍事費で米国並み志向。将来日中の軍事格差は1対10。孫子,日本包囲するだけで降参の状況。米国の支援期待できず。これを考えると日本の生きる道、非軍事で中国の軍事侵攻止められるかを真剣に考える時期。仏独の様に多角的相互依存関係構築が道。
尖閣:最近中国政府関係者の日本国会議員への内話:(1)周恩来、トウ小平主導の棚上げは日本実効支配を中国が容認した物で,維持が日本に有利。日本がなぜこの枠組みを壊すか理解困難(2)自民党時代がより慎重(注:福田官房長官時代尖閣上陸の際、単に送り返し)(3)将来の同様事態には制御困難。
Oct 13th
尖閣:棚上げ、実効支配が最も望ましい方策と論じてきたが、ある責任有る外務官僚が民主党議員に対し、あれはトウショウヘイや周恩来の思っていたこと,日本は合意したわけでないと説明したよし。驚き。90年中国外務省は橋本大使(当時)に説明。尖閣問題根底から崩す話。日中どうするつもり。
90年の動向:斉中国外交部副部長の対橋本駐中国大使(90.10.) への談話「釣魚島は昔から中国の領土、中国は主権を持つ。日本は見解を異にする。中日国交正常化交渉の時、我々双方は問題を”「後日に棚上げ”で同意。中国側、了解事項は非常に重要と認識」大使は当然同意だろう。
Oct 18th
尖閣と戦略
尖閣めぐり中国地方で反日デモ。日本に関し10月4日付zakzakは「田母神氏が主催する”がんばれ日本全国行動集会”が2日デモを呼びかけ,渋谷で2600名集結と報道。戦略の在り方から考察:国家間で対立が生じた時どう対応するか。第一のグループは「自己の主張を目一杯する」
ニコルソンはこれを「武人的外交官」と命名。目的は勝利。「完全な勝利がなくば、敗北」今日の米国。かってのローマがこの中。ローマは「彼等の意志を押しつけるのに専念した」。この際軍事力不可欠。第二グループは利益最優先。手段は欺瞞等多様。マキャベリ以降イタリアで全盛。
第三は妥協。「足して二で割れ」的思考。軍人が第一選択は自然。軍人思想の源泉はクラウゼヴィッツ。今日でも自衛隊員の指針。「戦争とは相手にわが意志を強要するための力の行使」。「この目的のため相手を無力化」。妥協を説くのは古くは孫子。相手との力関係で対応変化。
敵との比較が5(原文ママ)なれば戦い、少なければ逃れる。軍事理論ではクラウゼヴィッツ全盛の中、核兵器出現により戦わないための戦略が出現。代表的なものはノーベル賞受賞のシェリング。「勝利という概念は敵対するものとの関係でなく自分自身が持つ価値体系の中で意味を持つ」。中国古典に豊富。「囲碁十訣」
勢い孤ならば和をとれ。彼強ければ自ら保て。日中国交回復の時に周恩来が「小異を残し大同につく」として尖閣問題で日本の実行支配を容認し棚上げにしたのもこの思想。尖閣問題を考える際必要なのは日中間で「何が大」で「何が小」かを見極める事。日中で武力衝突しない、これも大。
「自己の意志を押しつける」戦略を実行できるには軍事力不可欠。中国は2030年には日本に経済力で四倍、軍事力で一〇倍以上。孫子をみても対中軍事衝突の選択は日本にない。でなければまさに真珠湾攻撃のように「暴れて見せます」だけ。領土問題は今勝っても無意味。将来再発不可避。
対中戦略は今重大な局面。幸い尖閣では日本に有利なルール存在。棚上げ実効支配。すっきりさせたいという国民感情はわかる。世論80%は「断固」を支持。留意すべきは中国にも自国領という考え存在。無視できないのは日本の同盟国米国ですら「中立」。領土問題なしで対応は極めて危険。
Oct 18th
尖閣:中ソ国境紛争等領土問題は下手をすると軍事的緊張にまで発展する問題。米国が必ずしも出て来ない中、将来を含め日本はどこまで覚悟している?政府ビデオ映像を今国会に提出する方針確認。中国側は日本側官憲の過剰対応を船員証言で出す可能性あり。互いに国内騒擾を煽り,何を得るつもりか。
尖閣2:重要なことは国際的にみて,尖閣は係争地。日本の同盟国米国は「係争。よって領有権問題に米国は立場を取らない」の立場に要留意。さらに米今回9月20日拿捕問題は二国間問題として日本支持の立場をとらず。よって「尖閣にはそもそも領有権問題なし」との政府の立場は日本国内だけ通用の論。
尖閣3:中国主張の論点(9月28日人民網):中国固有の領土。1561年明の地図に中国福建省海上防衛区域として記載。清朝時代沖縄訪問の冊封使記録『中山伝言録』では琉球側が尖閣を中国側とみなしている見解記載。日本側に1968年以前の記載なし。『日本外交文書』第18巻尖閣を中国領と記載。
これらで「尖閣が中国領」ではないが、係争地で有ることを示すには充分。日本政府は「そもそも領有権問題ない」との認識は改めるべし。そして係争地にどう望むかを考えるべし。実効支配の継続は領有主張に有利。日本の実効支配を認めた「棚上げ」は日本に有利。自ら手放す方なし。
Oct 20th
尖閣と歴史
1978年4月12日約100隻の中国国旗を立てた漁船が尖閣に接近。約10隻が尖閣島12海里内水域に入って操業。日本側は立ち退きを命じたが中国漁船は「中国領である」と主張し対抗、約2週間後の4月25日一斉に引き上げ。
この事件につき永野信利著『天皇とトウ小平の握手』で 次の記載:「上海水産局の漁船出航前の会議で同市革命委陳主任が日本の資源奪略を攻撃、会議は「祖国防衛,侵略反対」のスローガンを採択。漁船尖閣に接近した時、「襲撃を受けたらどうする」と打電。水産局は「中国領で漁業するものを誰が銃撃出来るか。反撃せよ」と応答。
このため民兵副団長は「中国領土死守」の戦闘命令を出した。しかし事件表面化後、上海市党委は党中央の名で『24時間以内に立ち退け」と撤退命令を出し、「撤退をしない者は党籍除名をする」と通告したとされる(香港紙引用)。この事件日中で白熱。事件78年8月12日日中平和友好条約調印の直前。
条約は第2条に反覇権条項を持ち、中国は対ソ連包囲網の意図。トウ小平この条約の実現を強く望み、事件鎮圧。日本国内でも激しい反発が発生。しかし当時の米国はカーター政権。ブレジンスキーが補佐官。米国も対ソ包囲の日中条約成立を望み日本に沈静化を要請。これら歴史は何を物語る?
中国船が十,百の単位で尖閣12海里内で漁業を行う、中国領と主張する、軽装備の武力を使用し抵抗する、という事態は充分想定される。この時日本は「日本領海内、粛々と国内法で対処出来るか」出来ない。ではどうする?棚上げ、中国政府との合意より優れた策ないはず。各種事態想定すべし。
かつて対中国政策に関与した元大使(在中国大使は経験せず)に何故「棚上げの利点を説明しない。何故棚上げ尊重路線から領土問題なしに方向転換したのか。何故抵抗しなかったのか」と問う。「結局国内世論です。世論(政治家を含め)に抵抗できなかったということでしょう」
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