http://www.asyura2.com/09/china02/msg/602.html
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「衝突事件」も一応の幕が引かれたことでもあるし、ここいらで、内外の情勢を含め、今回の一連の事態を包括的に眺め、捉える視点を提示することも必要だと思い、併せて「尖閣問題」も論じておきます。
併せて、下記の方も覘いて頂ければより理解してもらえると思いますので、そちらの方も、宜しければ、お願いします。
http://www.asyura2.com/09/asia13/msg/693.html
「尖閣」の何が問題なのか?ー
先ずカイロ宣言には「満州、台湾及び澎湖島のような日本国が清国人から盗取したすべての地域を中華民国に返還すること」とあり、ポツダム宣言第8項には「カイロ宣言の条項は、履行せらるべく、又日本国の主権は、本州、北海道、九州及び四国並びに吾等の決定する諸小島に極限せらるべし」とあります。
日本はこの「宣言」を受け入れて降服したのですから、問題になって来るのは「尖閣」がカイロ宣言に抵触するかどうか、又ポツダム宣言にいう「吾等の決定する諸小島」に含まれるのか否か、です。
一方外務省の主張は国際法上の「無主地」(どの国にも属してない)に当るが故の「先占」であるとするものですが、これはもちろん、そう主張するしかない。 何故なら、国際法での国家の行為による領土取得として、割譲、併合、征服、先占、等が有りますが、「先占」以外であれば直ちにそれはカイロ宣言に抵触するからです。
ところが、日本の主張が危うくなって来るのは、肝心の「先占」を公に明らかにしたのは、なんと!1972年になってから。 つまり、明治28年1月14日の「閣議決定」のみで、小笠原諸島等他の島々は、勅令を出し各国公使に通知する等、「先占」の所定の手続きを取っているのに、尖閣諸島については公示すらもしていなかったのです。 何故おざなりになったのか? その二ヵ月後に「下関条約」が結ばれることで判る様に、日清戦争の帰趨が見え、わざわざ手続きをするまでもなく、手に入ることが明らかだったから、と考える他ない。 その辺のドタバタ、辻褄合わせを、当時マスコミは下のようにからかっております。
「中国を硬化させるのを承知で、政府が日本領有の“つじつまあわせ”や“ツバつけ”にやっきとなるのはなぜか。そこには“石油があるから”といった海底資源への先取り意識は、当然考えられる」(「東風西風」『中央公論』1972年5月号)
つまり、40年前は、マスコミも比較的冷静に事態を観ていたのです。
勿論、1970年前後、石油埋蔵が明らかになるまでは、中国も台湾も、「領有」を主張しなかったし、各々の範図にも尖閣は入れていないのだから、日本の言い分が全く通らないと迄は思いません。
しかしながら、まぁ極々贔屓目に見て五分五分、冷静に、客観的に見るなら2:8、否1:9くらいで日本が不利と見ます。 尖閣諸島が「無主地」であることの証明と中国や台湾に属していることの証明、どちらが容易か?と言ったら、明らかに後者だからで
す。
そのことを証明するのが歴史的文物です。 小笠原返還交渉では、キチンとした「先占」の手続きと共に、歴史的文物や事跡が揃い、歴史的に日本に属していたことが明らかだったからこそ日本に返って来たという点を重く見るなら、益々以って、この事は蔑ろに出来ない。
極めて簡単にですが、以下に、その辺のところを纏めておきます。
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中国
何より中国の圧倒的な強みは、一番古い歴史文書に「自国領土」として記載されてることである。
初出は1534年、明朝の琉球への使節(冊封使)陳侃によって記された「使琉球録」。
福州の梅花所から釣魚嶼(日本名魚釣島)黄尾嶼(同久場島)赤尾嶼(同大正島)と「尖閣諸島」の島伝いに渡り、古米島(久
米島)に至って初めて、そこを「琉球に属す」と書いている。
又1562年、次の冊封使郭汝霖も同様なコースを辿り、赤尾嶼を以って「中外の境」、即ち中国と外国(琉球)の境界であると書
いている(重編使琉球録)。
そして清朝にも、冊封使の記録で、その認識は引き継がれていることが判る。
(使琉球雑録)(琉球国志略)他
その他、「倭寇」が中国沿岸で猛威を振るった際にも、対倭寇(日本!)の防衛ラインに当該諸島が入っている。(籌海図編)
琉球
琉球王朝の史書である「琉球国中山世鑑」(1650)にも、陳侃の「使琉球録」を引用する形で、それが認められてる。
日本
新井白石の「南島志」(1719)でも琉球領外とされている。
決定的なのは林子平「三国通覧図説」(1738)。 日本と琉球と中国をそれぞれ色分けし、その中でハッキリと、これ等の島は中
国に属することが描かれている。
以上の様に、少なくとも江戸時代までは、当該諸国において、「尖閣諸島」は中国に属するという共通認識が有ったことは明白である。
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ご覧の通り只でさえ不利なのに、これに「海底資源問題」即ち「大陸棚」という視点を入れるなら、日本は圧倒的に不利になるのです。
それは、この「海底資源」という問題が、元々米大統領トルーマンの「大陸棚宣言」(1945)に発する様に、大陸沿岸国に有利に進められて来たという経緯があるからです。 つまり、この点では、米中は利害が完全に一致するのです。 「大陸沿岸国の
権利」という点では共通してますからね!
今のマスコミの論調が如何に異様か、もう一度、石油資源で騒がれた40年前当時のマスコミのスタンスを伝えておきます。
「問題なのは、この大陸棚資源のうちどこまでが日本ものかということである。東中国海大陸棚は、中国大陸が伸びている大陸棚で、琉球列島との間には深いミゾがあってそこで切れている。尖閣列島や男女群島は、その大陸棚の先端にある。距離からいえば日本(琉球列島)に近いが、中国大陸から伸びた大陸棚だけに、日本に所有権があるかむずかしい」「特集海洋開発──海底はだれのものか」『別冊週刊読売』(1970年8月号)
今回、「尖閣」を巡って、中国の方から仕掛けて来たという説が100%有り得ないのは、放って置いても、中国に有利になる状況はあっても、逆はないからです。
では、今回の事態をどのように見るのか?ー
国内要因と国際要因、この場合どちらがというより、双方が一致したところに在ると言えます。
国内要因については に書きましたので、ここでは主に国際要因について書いておきしょう。
私は、東アジアの国際関係というのはこの百数十年間変わっていないと思っていまして、米中関係が主であり、他は従属変数ー日本の対外関係(日米、日中、日韓、日露他)は元より、朝鮮戦争やベトナム戦争、もちろん日米戦争(太平洋戦争)もーと見ております。 従って今回も、米中関係の現在から出て来たものと見るのが正しい。
アメリカの対中関係の”飴”の部分は国務省中心に、”鞭”の部分は国防総省中心にと、ある種役割分担的にやってるところがあるようですが、今回は”鞭”の部分、国防総省のラインに沿う形で出て来ていると見ます。
つまり、日(鳩山政権)韓(盧武鉉政権)と、アメリカの対中カードが弱まって、その立て直しの為に3月(韓国哨戒艇沈没事件)9月(尖閣)ーこれに8月の米越の「軍事演習」、9月の東南アジア諸国との「共同声明」を加えーと、一連の「中国の海洋(進出)封じ込め」という狙いに沿った「地政学的戦略」だった、ということです。
こうして、日(鳩山政権)韓(盧武鉉政権)の米国離れを押し止め、「極東安保体制」に再び組み敷き、引き締め直して、これまで曖昧なレベルに止め置いた軍事の色を増すことによって、対中カードを強めようとしたアメリカの意図が浮かんで来るのです。
他方、中国も同じ様に、アメリカのかかる戦略に危惧の念を抱く周辺諸国と連携し、それに対抗して行こうとしている。
金正日の中国東北部訪問(8月28日)、中台の「合同海難救助訓練」(9月16日)、「中ロ共同声明」(9月27日)と、上記のアメリカの動きとつき合せたらその意図が見えて来るはずです。
極めて異例の金正日の2度目の中国訪問は、「哨戒艇沈没事件」を頂点に、盧武鉉政権とは真逆に、南北関係を犠牲にしてまで対米依存を深める李明博政権に対抗したものであると共に、その背後にいるアメリカに対して、最早米朝関係の進展は求めず、当面、(韓国との関係も含めて)見限ったということでしょう。(韓国側が慌てて軌道修正して、関係の回復に努めてるようですが、李明博政権では無理でしょうね)
中台の「合同海難救助訓練」と「中ロ共同声明」は、対日本(尖閣)に加え、各々米越の「軍事演習」と米国と東南アジア諸国との「共同声明」に対応したものでしょう。
「領土問題」に関する限り、中台は立場や利害を共有しており、これにロシアも加えることにより、この「問題」の始原を第二次大戦後の戦後処理、「カイローポツダム宣言」に迄遡ってアピールすることになり、結果として、中国の正当性を浮かび上がらせることになるからです。
見られる通り、中国自身も、中国へと舵を切った北朝鮮に積極的に対応することも含め、従来以上に(日米韓)「極東安保」重視に傾いた韓国や日本に対して、旧来の中朝露関係を深めることで対抗したもの、と言えます。
ゲーツ国防長官の来年1月訪中が決まり、「米中軍事交流」が再開される見通しのようですが、お互いに「体制」を踏み固めて、ゲームの仕切り直しといったところなのでしょう。
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