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http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920021&sid=aQ2jaroFyFmk
9月30日(ブルームバーグ):「スマート爆弾」と呼ばれる米国の精密誘導兵器に利用されるレアアース(希土類)を生産する内蒙古包鋼稀土高科技のシニアマネジャー、白宝生氏の電話が鳴った。電話の相手はこの企業に関する情報を探っているウォール街の株式ブローカーだ。白氏は忙しく電話で話す暇などないし、会話が成り立つほど流ちょうな英語も話せない。
内蒙古包鋼稀土高科技は金属元素ネオジムを含んだ粉末を袋詰めし販売している。ネオジムは米軍がアフガニスタンの戦闘で空軍機から投下した爆弾のフィンの方向を指示する小さな磁石の製造に不可欠の元素だ。「今は売り手市場だ。どの大手企業も中国で商売をしたがる。ここではレアアースが手に入りやすく、コストも低いからだ」。内モンゴル自治区中部にある工業都市、包頭のオフィスで、白氏(43)はたばこを吹かしながらこう語った。
中国がこれら最新鋭兵器の製造の鍵となる元素の主な供給国としての地位を占めているということは、最重要軍事技術の利権を中国が米国の軍隊や政治指導者たちから奪い去り、独占してしまう可能性があることを浮き彫りにしている。今や米国の主要なライバルとなった経済大国中国は、あまり知られてはいないが絶対に不可欠な数十種類の希土類化合物の入手で決定権を持つようになった。
これらの物質は、米ボーイング製ヘリコプターの回転翼から発生する騒音を静め、レイセオン製ミサイルの方向を指示し、ゼネラル・ダイナミクス製戦車の銃の標的を定めるために欠かせない原材料となっている。
ケ小平の先見性
1992年、中国の指導者として影響力を維持していたケ小平氏は、ネオジムやレアアースの開発を中国の優先課題の1つとすることを宣言した。当時、ジスプロシウムやイットリウムなど17種の希土類金属元素の世界最大の供給国は米国だった。やがて外国の労働コスト低下に伴い米国内の鉱山が相次いで閉鎖され、磁石やステレオスピーカー、コンピューター回路など関連製品の製造業もアジア地域へと流出していった。
米政府監査院(GAO)によると、中国は昨年までに世界の希土類酸化物の売上高10億ドル(約840億円)の97%を掌握し、ハイブリッド自動車や風力タービンの製造にも利用されるレアアースの供給を支配している。
白氏の勤務する企業は中国国営の包頭鉄鋼集団の子会社。ロビーのピンク色の大理石の壁には、92年のケ氏の演説から引用された次のような言葉が刻まれていた。「中東には原油がある。中国にはレアアースがある」−。
早期警戒信号
オーストラリアのコンサルタント会社インダストリアル・ミネラルズ・カンパニー・オブ・オーストラリア(IMCOA)によると、内蒙古包鋼稀土高科技の施設では世界のネオジム酸化物の約50%が生産されている。その一部は中国の磁石メーカーに供給され、その顧客企業に販売される。顧客企業には米国の防衛契約企業への供給業者などが含まれている。
米国防総省で1986年から2007年まで戦略貿易担当の上級顧問を務めたピーター・ライトナー氏は「ペンタゴン(国防総省)は信じられないほど無頓着だ。中国がこれらの物質に関する影響力を武器として利用しようとしていることを示唆する早期警戒信号は数多く見られる」と指摘する。
米ロッキード・マーチン製の米海軍の艦船に装備されている多機能「SPY1レーダー」にはサマリウムコバルト磁石が使用されているが、これらの磁石は向こう35年間で交換する必要が出てくる。ゼネラル・ダイナミクス製の「MIA2エイブラムス戦車」のナビゲーションシステムに利用されているサマリウムは既に中国から輸入されている。
磁石
GAOによると、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の燃料消費を削減するために米海軍が開発しているハイブリッド車電気モーター向けのネオジム磁石は中国のある企業が製造しているという。ネオジムは、ボーイング製の誘導装置「JDAM(統合直接攻撃弾)」の制御装置にも利用されている。この装置を取り付けることにより無誘導爆弾は精密誘導のいわゆる「スマート爆弾」へと変身する。
レイセオンの広報担当者、ジョン・カスレ氏によると、同社は供給不足を経験したことがないという。防衛契約企業のロビー団体、航空宇宙産業協会(バージニア州)は「国防総省は、安定した調達能力を確保するため信頼性の高い供給先を求めて多くの選択肢を検討すべきだ」と指摘する。国防総省は今年、米国のレアアースの必要量に関する調査をまとめる予定だ。
中国政府は07年以降、国外企業に課すレアアース輸出手数料を最大25%引き上げている。今年7月には国内需要を理由にレアアースの7−12月(下期)の輸出量を72%削減するよう義務付けた。IMCOAによると、世界のレアアースの生産量は今年、12万7500トンと見込まれるが、消費急増により7500トンが不足する可能性がある。内蒙古包鋼稀土高科技で製造される粉末状のネオジムの国際価格は9月中旬時点で1キログラム当たり62.50ドルと、1−6月(上期)の平均28.85ドルのほぼ2倍に上昇し、少なくとも25年ぶりの高水準に達した。
主要供給国の地位奪還へ
プライベート・エクイティ(PE、未公開株)投資会社リソース・キャピタル・ファンズ率いる米国の投資家グループは、米モリコープが保有する中国国外では世界最大のレアアース鉱床の採掘を再開することにより、鉱物分野で優位に立つ中国に対抗したいと考えている。モリコープの鉱山はラスベガスの南西約60マイル(約96キロメートル)のモハーベ砂漠に位置する。中国企業との競争激化に加え、廃水漏れに対する規制当局の監視強化もあって、8年前に閉鎖された。
モリコープは7月に3億7900万ドルを増資した。生産施設の改修と増強に必要な5億1100万ドルに足らないため、米エネルギー省に対し、2億8000万ドルの融資保証も要請している。モリコープのマーク・スミス最高経営責任者(CEO)は、レアアースを採掘して米国でネオジム磁石の生産を再開する方針を示した。最大900人を雇用し、中国のサプライチェーンに代わる供給ルートを創出する計画だ。
スミス氏はこう警鐘を鳴らす。「中国の動きは極めて戦略的なものだった。われわれもこの米国で全く同様の戦略を実行することを目指すべきだ」。
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