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急速な経済発展を遂げた中国に対して、国際社会から政治的軋轢への指摘も聞かれる。近著で「中国の台頭は西側(欧米)の脅威にはならない」と主張する、中国問題の専門家に話を聞いた。
──懸念されている「中国脅威論」とは、どういったものですか。
いくつかの脅威や問題が誤解によって生じている。中でも、中国の発展が世界の資源やエネルギーを奪い、環境破壊にもつながっているため、中国をグローバルな発展の舞台から除外しようとする力が大きい。これは中国が自分たちの中だけで成長できる「自立した経済」だと思っているからだが、間違いだ。日本や米国と直接対決できる経済レベルに、中国はまだ達していない。
中国は、グローバルな枠組みに非常に強く自分たちを結び付けることによって、発展している。中国と諸外国とは真っ向から勝負している対立構図にあるのではなく、大きなネットワークの中で、作業分担や役割分担をしながら協力し合っている関係。具体的には、中国の企業が製造と設計に特化し、日本や欧米企業がイノベーション的な作業に携わるといった間柄だ。
このようなモデルを基に、中国が発展していくことが、私たち先進国にさらなるグローバルな発展のチャンスを提供する。それによって、資源・エネルギー、環境といった問題の解決策を見つけることもできるだろう。たとえば、風力発電など再生可能エネルギーの機器も、中国と先進国が分業・専業化すれば、イノベーションや製造のサイクルが短縮化され、これまで夢でしかなかったようなソリューションを提供できるようになる。
中国を製造分野から閉め出してしまえば、私たち先進国の経済発展を支えているイノベーションも、減退してしまうだろう。
──現在の政治体制、一党独裁を維持したままで、中国が経済発展を続けていけると思いますか。
中国は経済的な変化は遂げたが、政治的には何も変化していないと考えるのは大きな誤解だ。確かに、今でも中国共産党による一党独裁という政治基盤にあるが、ここ15年間で二つの大きな変化が起きた。
第一に、過去には党員になれなかった人たちにも、党は門戸を広げている点だ。私が中国に住んでいた1989年当時は、高度教育を受けた、いわゆる知識人階級は党のメンバーには決してなれなかった。彼らは同年6月の天安門事件後、中国から離れよう、とりあえず子どもは中国から出国させようとしていた。今は、こうした知識人も党員になれる。
二つ目の大きな変化は、一般市民社会が非常に花開いたことだ。かつての中国国民は、すべて国の刷り込みをそのまま映し出していた。特に都市部の住民は、どこそこの国営企業に勤め、この仕事をしなさいと、国から割り当てられ、何をするのにも国の許可が必要だった。ヒエラルキー(階層)社会の中で、最下層として生きるのが中国国民の人生だった。今は、このヒエラルキーは壊れてしまった。階層社会がオープンマーケットに取って替わったのだ。
政府として、いちばんやらなければいけない問題は、一般国民が政府のルールに従う、コンプライアンス社会を構築することだ。普通の生活を秩序をもって送れるようにする社会の構築だ。それには、政府は国民に対して、しっかりとしたパフォーマンスを届けなければいけない。国民が求めているものを与えなければいけないのだ。そうしなければ、国民は国に従わないからだ。
また、昔は中国で成長といえば、国家の成長と決まっていたが、今では、個人に成長をもたらすと政府は言っている。政府が本心から言っているのか、それともある意味、皮肉を込めて言っているのかわからないが、中国国民が個人としての成長を期待しているのは確かだ。
──「個の目覚め」により、政府に対する不満は広がるのでは。
今は、所得格差の拡大や医療費、教育費が高いことなど、機会が均等に与えられていないという個々の不満が多い。かつてのような制度・体制に対する反論ではない。多くは「質」に対する問題で、これは米国が抱えている問題と同じだ。
私は、中国共産党という「秩序」は崩壊しないと思う。独裁的な支配やルールは、すでに崩れつつある。中国政府は、「オープンガバメント・イニシアチブ」ということを、国民に訴えている。それにより国民は、たとえば、地元政府に情報提供を要求したり、新たなルールを要求したり、国営企業や地元政府を訴える権利さえも持つ。中国の国民一人ひとりが、まるで一人の独立した政治力を持つ人間であるかのように振る舞える存在に、なってきている。ただ中国政府が奨励する権利は個人に対してであって、団体には与えていないという事実も厳然としてある。
中国政府はグーグルに有能な才能を提供した
──今、中国と台湾の関係が経済的に親密になってきています。これが政治的な結び付きの発展につながっていくのでしょうか。
確かに、経済的には密接に結び付いた商業圏を作っているが、中国本土と台湾は政治的にはまったく違う野心を持っている。中国は本土と台湾の再統一を希望しているが、台湾与党は政治的な独立については時間をかけて進め、1世代後、2世代後には少し違った意識がお互いに生まれてくると踏んでいる
再統一したい中国もまだ抽象的な概念を持っているにすぎない。が、台湾が独立宣言をすることには大きなおそれを感じている。もし、台湾が独立を宣言してしまうと、中国では一般の国民からナショナリズムの声が台頭してくる。その声が大きくなれば、今度は政府が何らかの対応を迫られる。たぶん中国政府はそういった事態を避けたいのだと思う。
つまり現時点で、中国と台湾の政府は同じスタンスにあるのかもしれない。両者の政治的な主権についてはとりあえず、今は話し合わないことにしようとの思いだ。しかし、台湾の野党は中国におもねっていると激しく批判している。台湾は民主主義国家なので、中国との政治的主権の問題を主張すれば、政権基盤を大きく揺るがすことになってしまう。
──中国は国際社会においても自国のルールをかたくなに守っています。特に、グーグルが中国から撤退した一件についてどう見ますか。
先進国も個々の国を見ると、独自のルールを持っているわけで、中国に限った話ではない。グーグルは中国の事前検閲制度に抵触することになったわけだが、非常に興味深いのは、北京にグーグルの研究開発センターを設置し、清華大学のような優秀な大学の卒業生を働かせている点だ。表面的には大きな問題となったが、中国政府は自国の才能を外資系企業に使うことを許可しているのだ。中国のためではなく、あくまでも外資のために行っている。
(聞き手:鈴木雅幸・週刊東洋経済編集長 =週刊東洋経済2010年9月4日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
Edward S. Steinfeld
1996年ハーバード大学政治学部博士号、同年マサチューセッツ工科大学(MIT)スタローン経営大学院准教授。2004年から現職。MITの中国プログラムなどのディレクターも務める。近著は『Why China’s Rise Doesn’t Threaten the West』。
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