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「ブタから人工インフルエンザ・ウイルス発見」の謎
2005年3月10日
Kristen Philipkoski 2005年03月10日
韓国のブタから採取されたウイルスに、数十年前に科学者が人間のインフルエンザ・ウイルスから人工的に作り出したウイルスの遺伝子が含まれていた。米国のあるインフルエンザ研究者によると、今回見つかった遺伝子は人間にとって危険な状況を表しているかもしれないという。
全世界のインフルエンザの蔓延を監視する世界保健機関(WHO)は、ブタのサンプルの調査が終わっていないという理由からコメントを控えている。
人工のインフルエンザ・ウイルスがブタの体内に存在することは、いくつかの理由から問題となるおそれがある。まず、人工ウイルスがブタの体内で発見されること自体おかしい。自然感染したのだろうか? それとも、研究所で偶発的にサンプルにウイルスが混入しただけだろうか? 可能性こそ低いものの、バイオテロというさらに恐ろしい原因も考えられる。そして、第2の問題は、ウイルスがブタを媒体として人間に感染することが多い点だ。今回見つかったインフルエンザ・ウイルスに関しては、これまでこれに感染した人が誰一人いないため、人間にはまったく免疫がないか、あっても少ししかないだろう。
WHOの広報担当者は「インフルエンザに関して言うと、ブタはつねに人間への危険を表している。というのも、ブタはさまざまなインフルエンザ・ウイルスの混合容器として働いているのだ」と話す。
それでもWHOは、もっと多くの研究所がサンプルを確認するまで、データが真実であることを――つまりこの遺伝子が研究所での混入などではなく、ほんとうにブタの体内に人間に感染するウイルスが存在していたのだと――認めるつもりはないという。
リコンビノミクス社の創立者であるヘンリー・ナイマン社長(写真)によると、目下行なわれているブタのサンプル調査は進め方が遅すぎるという。研究者でもあるナイマン社長はこの2年間、鳥インフルエンザの拡大と変わりゆくウイルスの遺伝子構造を追跡しつづけてきた。もし韓国のブタが人工のヒトインフルエンザに感染しているとしたら、当局はただちに感染拡大の防止策を講じなければならない。
韓国のデジョン(大田)にあるチュンナム(忠南)大学のソ・サンヒ教授は昨年10月下旬、ブタのサンプルから取り出したウイルスの遺伝物質の塩基配列断片を『ジーンバンク』に登録した。ナイマン社長は11月にこのデータと偶然出会い、6つの断片に『WSN/33』ウイルスの遺伝子が3個から7個含まれていることに気付いた。このウイルスは、1918年のインフルエンザの流行を調査していたロンドンの研究所が1933年にはじめて分離し、それをマウスに感染させて作り出したもの。ナイマン社長によると、このウイルスは人間への感染もありうるという。ナイマン社長は12月上旬、ソ教授のサンプルにWSN/33ウイルスの遺伝子が含まれていることをWHOに報告した。
『サイエンス』誌の記事によると、WHOは当初、聖ユダ小児研究病院(テネシー州メンフィス)の研究者がWSN/33ウイルスのサンプルをソ教授の研究所に送ったと述べた事実を受け、ソ教授のデータを研究所での混入として片付けたという。ところが、ソ教授はサイエンス誌に、WSN/33ウイルスを受け取ったことはないと話している。
聖ユダ小児研究病院は韓国のブタについてのコメントを控えており、ソ教授にも電子メールでコメントを求めたが、回答は得られなかった。
ソ教授はブタのサンプルのデータをサイエンス誌に掲載してもらおうと同誌に送ったが、編集部はこれを却下し、第三者機関の検査によってデータの正当性を証明するよう求めた。現在、香港の研究所とウィスコンシン大学マディソン校の研究所がサンプルの検証を進めている。WHOもこの結果を待ってから、このブタが人間にとって危険かどうかを判断することにしている。
ナイマン社長は「韓国の農場にいるブタの体内、そしてひょっとすると鳥の体内に、WSN/33の遺伝物質が本当に存在するとしたら、とてつもなく大きな問題になる」と話す。
ナイマン社長によると、データの正当性が認められた場合、理由としては次のいずれかが考えられるという。どこかの研究施設から人工ウイルスが流出したか、ウイルスの遺伝子が組み換わり、インフルエンザ研究者のほとんどが不可能だと思っている方法で変異したかのどちらかだ。
「どこかの研究所から流出した可能性がもっとも高いが、(WHOは)そのような現実を考えたく(ないはずだ)。もちろん、遺伝子の組み換えについても想像したくないだろう」とナイマン社長は語った。
[日本語版:米井香織/岩坂 彰]
WIRED NEWS 原文(English)
http://www.wired.com/news/medtech/0,1286,66824,00.html
http://wiredvision.jp/archives/200503/2005031002.html