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●ケン・ローチ監督『ジミー、野を駆ける伝説』
一世紀前の小さな事件を素材に「表現の自由」描くケン・ローチ
http://www.labornetjp.org/news/2015/0116eiga
イギリス映画の社会派の第一人者、ケン・ローチ監督は今年79歳。これまで30本近くを手がけているが、その情熱は衰えることを知らない。世界の映画祭で受賞歴多数、2006年にはアイルランドの内戦を描いた『麦の穂をゆらす風』でカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞している。その彼が『ジミー、野を駆ける伝説』で、再びアイルランド問題を撮った。脚本は常連のポール・ラヴァティ。
冒頭の字幕に「ジミー・グラルトンと村のホールを巡る物語」とあるように、主人公が造ったコミュニティーホールを巡る、若者らとカトリック教会を中心とする地主層の対立が描かれている。
主人公のジミーは実在の人物で、名もなき労働者。20代の時に家の近くにホールを建てたことから地元の神父らの怒りを買い、外国で職を転々とするが、10年後に老いた母と暮らすため故郷に戻る。
映画はそこから始まるが、荒涼とした草原の廃屋が印象的。それが彼のホールだった。
村に娯楽場はなく、若者たちはジミーに頼んでホールが再開される。彼がニューヨークから持参した蓄音機からジャズが流れると、彼らは新しい身ぶりを教わり、ダンスに興じる。教区の精神的支柱である神父は「悪しき企み」をもった連中として監視を始め、教会で参加者の名前を一人一人読み上げる。新しい
文化はせめぎ合いのなかから生まれるのだ。
ジミーは「ホールは一緒に人生を考えることができる場所で、問題があると思うなら委員になってくれ」と神父の家にのりこみ直談判するが、神父は「教会に権利書を譲るなら」と答える。ジミーは「あなたは、ひざまずく者の話しか聞かない」と拒否、次第に対立を深めていく……。
映画は1世紀も前の小さな事件を扱いながら、人間が自由に生きるために集会や表現の自由がいかに大切かを教えてくれる。日本と世界の今を考えさせられる。(『サンデー毎日』2015年1月25日号)
*1月17日より東京・新宿ピカデリーほか全国公開。
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