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春画 アートなのに… 国内巡回展は開催難航[東京新聞]
2013年5月19日 朝刊
男女の性愛を描いた春画の本格的な展示会が今秋、英国の大英博物館で開かれる。この巡回展が日本でも計画されているが、主要な美術館などから、軒並み受け入れを断られている。春画は近年、芸術性が評価され、女性の鑑賞者も増えている。一方で「わいせつ画」のレッテルを貼られた歴史が長く、公の場での展示には難しい問題を抱えている。 (森本智之)
大英での展示は、葛飾北斎や喜多川歌麿など名だたる浮世絵師の百五十点余を紹介し、春画の起源から現代絵画への影響まで解き明かす。期間は今年十月から来年一月まで。日英交流四百年を記念し、春画だけの展示は同館でも初の試みだ。
「春画は奥深いアート。単純なポルノとは違う」。立命館大特別研究員の石上阿希(あき)さん(33)は話す。数少ない春画研究者の一人として、昨年まで大英の特別学芸員としてロンドンに駐在。出品作品の選定などに当たった。石上さんらによると、欧州では早くから春画の評価が進み、ピカソのキュービズムに影響を与えたという説まである。今回は大英、立命館大などが共同プロジェクトを組み、準備に三年以上を費やした。
巡回展も早くから計画し、交渉を始めたが、難航した。
北斎の世界的コレクターで、春画展のスポンサーも務める古美術商の浦上満さん(62)は、昨夏から大英に協力して交渉に当たる。「都内で二十カ所以上の美術館、博物館に持ち掛けたが、断られた。どこも学芸員レベルでは『やりたい』と言ってくれ、九割方決まった所もあったのですが」と残念がる。
断った側の一つ、東京国立博物館の松本伸之学芸企画部長は「公立館として芸術だから展示します、でも後は知らんぷりは難しい。ギリギリまで悩んだが、子どもらへの配慮をどう確立するかを考えると、慎重にならざるを得ない」と回答。別の美術館の学芸員は「大規模展では新聞社などが共催者として出資するが、春画ではスポンサーも付きにくい。やりたいのはやまやまだが批判は怖い」と漏らした。
浦上さんは商業施設まで対象を広げ、詰めの交渉を進めている。
春画は本来、老若男女が楽しむオープンな存在だった。一転したのは明治時代。文明開化に伴い、政府が「西洋人に見せたくない恥ずかしいもの」として禁じた。以降、学術研究の対象とすら見なされずタブー視される。象徴的なのは一九九五年、大英博物館で開かれた歌麿展。春画を含む浮世絵が展示されたが、日本での巡回展では春画を削除した。
国内での再評価はこの二十年ほど。九〇年代初頭に出版された「浮世絵秘蔵名品集」(学習研究社)が先駆けとなり、出版の世界では既に解禁状態にある。その後も平凡社の春画本シリーズがヒットするなど、ファンも増えつつある。
銀座松坂屋そばのフェルメール・センター銀座では、今年一月、北斎の浮世絵を紹介する企画展の一角で、大人を対象に春画の限定展示を始めると人気に。担当者は「若者から壮年世代まで女性が多い。驚いた」。会期を五月末まで二カ月延長し、公開日を週二日から毎日に増やした。
今回の問題についてシンポジウムの開催を計画している東京大の木下直之教授(59)は「書店では誰でも自由に見ることができるのに、どうして本物は見ることができないのか。アートには生で見てこそ分かる『実物の力』がある」と話している。
<春画> 江戸時代に流行した浮世絵の一種で、性器を含めて描写するのが特徴。ユーモアを交えた描写が「笑い絵」と呼ばれ、女性も楽しんだ。枕草子や和漢朗詠集といった古典・故事をパロディー化するなどテーマ選びも幅が広い。夫婦円満を願って嫁入り道具に持参したり、武士のお守りとして使われたりもした。名のある浮世絵師のほぼ全員が手掛けており「刷りや彫りなど当時の最高の技術は全て春画にある」といわれるほどアートとしての水準も高い。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013051902000124.html
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