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(書評)浮世絵に映える囲碁文化 藁科満治/著
http://www.asyura2.com/09/bun2/msg/637.html
投稿者 矢津陌生 日時 2012 年 12 月 27 日 13:27:21: fqfGCq6zf5Uas
 

囲碁は中国の堯帝時代に出現したと中国の書『書経』にある。日本には遣唐使に加わった吉備真備が伝えたとされる。しかし、論語などの漢字文化と一緒に韓半島(百済)経由で軍人や貴族によって伝えられた可能性が高い。平安時代には貴族の間で流行し、源氏物語にも重要な場面で囲碁が登場する。戦で作戦を立てる武士や陰謀をめぐらす貴族などには必須科目と言ってもよかったようだ。

鎌倉幕府の武家社会確立後、荒くれ武者より武略に優れた教養人として、武士たちの間でもてはやされた。これが囲碁文化を日本で根付かせた大きな要因となる。本因坊算砂が徳川家康から棒禄を受けて家元本因坊家の始祖となり、有名な5人の名人を輩出し、囲碁の隆盛を誇ったのは囲碁ファンに広く知られている。

江戸時代も平和な世の中になるとメディアとして発達した浮世絵に、人気の高い歌舞伎や浄瑠璃での一場面を切り取って、プロパガンダの役割を果たす。そんな浮世絵の秀作がこの本に紹介されている。我々の知らなかった武将と囲碁の取り合わせがなんとも新鮮である。『碁盤忠信』は想像だに(囲碁との関わりを)しなかった秀作である。佐藤忠信は兄継信とともに終生義経の家来となった奥州武士(藤原秀衡の命により源氏挙兵のために随行)、最期は伝説の壮絶な死を遂げる。

歌舞伎の題材として格好の武士であったため広く浮世絵に登場した。智謀の将として印象付けるため、碁盤や碁石が配されている。こういった武将たちの凛々しい姿や悲劇的な状況に、碁盤や石を配して演出した場面の浮世絵集である。華麗な浮世絵の魅力もさることながら、囲碁にまつわる幾多の物語にいざなってくれる。今までなかった囲碁の蘊蓄を深めさせてくれる楽しい本である。囲碁ファンには「ぜひ一読を」の一冊である。

矢津陌生ブログ http://yazumichio.blog.fc2.com/blog-entry-256.html より転載

 

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