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「千字文」は5世紀前半、南朝・梁の武帝の命で、千の漢字を四字句からなる韻文として編んだものである。六朝時代の周興嗣の撰である。同じ漢字を二度用いることはない。「天地玄黄、宇宙洪荒」に始まり、「謂語助者、焉哉乎也」に終わる。漢字の初学者用に、「千字」の漢字を集めて文章としたもの。書体は書聖といわれる王羲之の筆跡を模写して、書道の手本にしたと伝えられる。
「千字文」以前にも、同じ目的で編纂されたものもあるが、「千字文」はその洗練された内容で、天文、地理、政治、経済、社会、歴史、倫理などの森羅万象について述べた、6世紀以降20世紀初頭に至るまで、漢字学習の教科書および習字用の手本として、中国、朝鮮、ベトナム(1950年漢字教育廃止)、日本で広く使われた。日本には六朝末の僧智永が王羲之の書を模写したという「真草千字文」(楷書、草書二体の『千字文』)が伝えられたといわれている。
応神天皇16年に百済の王仁が「論語」と「千字文」を献上したと「古事記」に記されているが、年代に矛盾(完成するまえに伝来)がある。しかし、日本各地から見つかる古い木簡のなかに、「論語」や「千文字」書籍の文字を書き写したものがあり、「千字文」は日本に早くから伝えられたと考えられている。ちなみに、日本の常用漢字外の字が233文字あるとされる。1984年に岩波書店から『注解 千字文』(小川環樹・木田章義)が出版されている(岩波文庫本有り)。
「千字文」が朝鮮半島へ入った年代を特定することができないそうだが、仏教と並行して、漢字学習のために使用された。特に朝鮮王朝の世宗が15世紀にハングルを発布後、16世紀末頃から木版で印刷され、「千字文」は漢字の教科書として朝鮮語読みと併せて広く普及した。韓国ドラマで子供たちがハングル読みで「千字文」を教えられているシーンがよく出てくる。韓国・北朝鮮では現在ハングル文字だけの義務教育であるが、1945年の独立まで漢字の教育がなされていた。
子供たちは千字文を声に出して学んだ。日本にも韓国にもこの「読み音」の断片が残っている。中国本土にも地方によって違う「読み音」が残っている筈だ。各国、各地に残る「読み音」をもとに、漢字音の音韻変遷を辿れば、多くの新しい発見があるのではないかと思う。この過程の中で、すでに死語となった多くの古言語(百済語、高句麗語、渤海語、ツングース語系など)の概要が見えてくることになるのではないか。研究者が増えることを期待したい。
付け足しではあるが、いま韓国ではTOEICの得点に加えて漢字二千字を習得することが、就職時に有利に働くそうだ。ビジネスでは中国や日本の存在を無視できないことにつながっているようだ。なんだか変な話である。余計なお節介だが、もっと本格的に学校の低学年からの義務教育に取り入れたらと思ってしまう。近年ベトナムでも漢字の見直しの声が出始めていると聞く。自国に残された先人が遺した古文書を共有できないのはおかしいと思う人たちがもっと増えればいいと思う。
矢津陌生ブログ http://yazumichio.blog.fc2.com/blog-entry-220.html より転載
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