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佐々木中〔生への侮蔑、「死の物語」の反復〜この小説は文学的に間違っている〕
この小説は間違っています。フィクションにそういう「正誤」が問題になるのか−という、そんな疑問以前のレベルで、これは決定的に間違っている小説です。何故か。
以前、村上春樹は、オウム真理教に強い衝撃を受け、麻原彰晃が語った強力な物語に抵抗するような物語、原理主義的なカルトが語る物語に抵抗するような物語を紡いでいかなければならないし、それが自分という小説家の責務だと言っていた。
確認します。新左翼崩壊以後出現したカルト教団に共通の、特にオウム真理教において典型的な形で出てくる言説がある。…オウム真理教的な終末論は自分が生きている間に終末が来ることを望む。彼らの論理の底流としてあるのは「どうせ死ぬのだから今死にたい。そして自分の死とこの世界全体の絶対的な死すなわち滅亡を一致させたい」という奇妙な欲望です。
村上春樹はオウム的な物語に抵抗するとはっきり言っていた。だからこの死の物語にこそ対抗しなければならないはずです。しかし、この『1Q84』がそのような小説になっているか、なっていない。逆です。この「死の物語」を反復し、そして強化するような物語になってしまっている。
この小説は政治的や倫理的に間違っているのではない。文学的に間違っているのです。村上春樹は麻原彰晃的な死の物語に抵抗するために物語を紡いでいると自分で言っていた。しかし、これまでの青豆(女主人公)の物語は何の抵抗にもなっていないどころか、オウムの死の物語の強化にしかなっていない。
村上春樹自身は、この小説を世界中に散布することによって、一体どんな現実を作り出そうとしているのか。…村上春樹のやっていることは麻原彰晃のやっていることと変わらないのではないか。何度も繰り返します。この小説は倫理的に政治的に間違っていると言いたいのではありません。物語を語ることによって現実を作り出すという「文学」の戦いにおいて、自ら対抗すると語った筈の死の物語を反復強化しているという意味で、この小説は文学的に完全に間違っている。
平井玄〔並行世界と小人たち〜反復強迫をめぐって〕
そういうalterな世界性の中に置くと、この小説は死に取り憑かれた人ばかり。新左翼的な終末論の反復強迫に村上春樹は呪縛されている。グレーバーのいうような「革命観の認識論的転換」が必要でしょう。悪魔祓いしたいという気持ちはわかるんだけどね。
【出所】「村上春樹 ”1Q84”をどう読むか」河出書房新社‘09年
(ヤブ人)
評論は、book2までのもん(book3は未だ出ていねがった)。
拙者、book3まで読んだが、上の評価は変わらねえと思うな。book4がねえと物語完結しねえね。book2で「さきがけ」のリーダーが希望して刺客青豆に殺られた時(同時進行で天吾とふかえりがセックスし、この射精で青豆が妊娠するという超常現象が起こる)、この小説はオーム的なもんに屈してしまった。村上はんの当初の目的は、何故かここで突然挫折してしまった。謎だねえ〜。
book4でこの流れ断ち切って、オーム的なもんを作家の感性で見事に押し返していけるんかどうか、それも読者の心を揺り動かすてー。容易ではねえべえなぁ〜(book1〜3はエンタメ性あるが、感動はねえ)。村上はんの勝負どころだねえ〜。そすて真に才能があるかどうかも見極められる。このまんまでノーベル文学賞はねえんでないかえ?
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- Re: 世界は幼稚化してるんでねえかえ? 藪素人 2013/5/16 06:59:03
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