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7月15日23時27分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090715-00000644-san-ent
名作文庫の夏商戦で、若年層をターゲットにした「ジャケ(ジャケット)買い」争奪戦が過熱している。グラビアのような女性アイドルの表紙写真でファン心理をくすぐったり、有名写真家のスナップを使って名作の新たな魅力を引き出したり。太宰治の生誕100年に当たる今年は新規参入組も増加しており、例年以上に個性的なカバーが店頭をにぎわしている。(海老沢類)
ぶんか社文庫は6月、「夏の3冊」と銘打って、太宰の『人間失格』、夏目漱石『坊っちゃん』、堀辰雄『風立ちぬ』から成る名作シリーズを刊行した。表紙を飾るのは、すべて女性アイドルグループ「AKB48」のメンバー。大きめの文字と読みやすい広めの行間も奏功し、『人間失格』は発売からわずか2週間で重版がかかった。
第四編集部の小川将司さんは「ターゲットは名作文学になじみが薄い10代。競合が激しい名作文庫だが、若い世代が軽い気持ちで手に取れるように装丁で差別化したかった」と話す。
角川文庫が5月に刊行を始めた太宰作品の新装版10冊は、すべての表紙写真を若手写真家、梅佳代さんが撮影した。日常に潜むユーモラスな瞬間を巧みに切り取る梅さんのスナップが、「人間のばかばかしさやおかしみを描く太宰作品と共通する」(郡司聡編集長)と企画した。写真はすべて横位置。他社が売り場で縦に並べられる中、「横向きに平積みされて目立つ」という意外な利点もあった。
人気漫画家の書き下ろしイラストを使う集英社文庫は今年も、「テニスの王子様」で知られる許斐(このみ)剛さんらを新たに起用した。光沢感のある単色カバーで差別化を図るのは新潮文庫だ。昨年夏に限定4作品で始めたところ、売り上げが前年比2、3倍に上昇。今年は山田詠美さんら現代作家を加え、計10作品に広げた。「ピンクや黄色のカラフルな10冊がまとめて並べられると壮観」(広報宣伝部)と、売り場でのインパクトを狙う。
出版科学研究所によると、文庫の年間販売額はこの10年間ほぼ横ばいなのに、新刊点数は平成10年の5337点から20年は7809点と5割近くも増加。綾部二美代研究員は「求められているのは多大なエネルギーのかかる新刊作りよりも、既刊本を効果的に売る仕掛け。(各社の異色カバーは)古典作品につきまとう『難しい』というイメージを払拭(ふっしょく)する効果がある」と指摘する。国内作品は、カバーや帯が数少ない差別化の手段。各社の知恵比べは今後も続きそうだ。