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5月25日11時1分配信 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090525-00000001-mailo-hok
◇原点に戻り運営のあり方探れ
第18回を迎える今年のYOSAKOIソーラン祭り(組織委員会主催)は、6月10〜14日に札幌市内で開催される。92年に北海道大の学生の発案で始まり、昨年は330チーム、3万3000人が参加、延べ約202万人の観客動員数を記録(主催者発表)した。冬のさっぽろ雪まつりと並ぶ札幌市を代表するイベントだが、市民や参加者からは「騒音がうるさい」「参加の敷居が高い」といった批判が聞こえてくる。取材を進めていくと、「この祭りは広く道民に開かれているとは言いにくいのではないか」との思いが強まってきた。
札幌市観光企画課などによると、昨年の祭りでは市に14件、組織委に76件の苦情が寄せられた。この中には、騒音や交通規制に関する苦情のほか、「桟敷席の有料はおかしい」というのもあった。
桟敷席は大通会場に設置された観覧席で、時間帯によって1000〜4000円で販売している。観客からは「チケットが高すぎる」「商業主義の象徴」などの声が出ているが、批判は観客からだけではない。あるチームの元代表は「時間帯によっては観客がほとんどおらず踊りにくい。踊る側にも不評」と明かす。
本来、祭りとは誰にでも開かれたもののはず。だが、大通会場では桟敷席以外から踊りを見るのは難しく、桟敷席で囲まれた演舞空間はあまりにも閉鎖的だ。組織委は「安全・警備上からも必要」との立場だが、市民、参加者双方から批判が上がる中、別の方法を検討してもいいのではないか。
道内チームの減少も問題化している。組織委によると、祭りの参加チーム数は01年の408チームをピークに、その後は330〜350チームで推移。だが、内訳を見ると、08年は道内チームが01年の半分以下の172チームに減少。このうち札幌市外の地方チームは237チームから94チームまで激減した。
背景にあるのは、人数不足と資金難だ。組織委は02年、40人未満のチームは1市町村1チームしか参加できないとする制限枠を設けた(09年は撤廃)。参加費も一般チーム15万円、企業チーム25万円と決して安くはない。
06年に解散した夕張市の「ゆうばり寅次郎」は、学生の進学などでメンバーがピーク時の半分以下の約40人まで減少。参加費や移動費などの経費負担も大きく、やむなく解散を決めた。元代表の武部一憲さん(40)は「うちに限らず、どのチームに聞いても人と金の問題が出てくる。参加費は分かるが、敷居を低くして楽しい祭りにしてほしい」と話す。
組織委が今年、1市町村1チームの参加制限枠を撤廃したことは評価したい。この際、参加費をもっと安くしたらどうだろうか。道民や参加チームが訴える「金もうけ主義」「お金の使途もよく分からない」などの批判は、高額な参加費も原因の一つだろう。例えば、参加費をチームごとではなく、人数ごとに徴収するなどのやり方もあるはずだ。
一方、コンテストの競争過熱を批判する声もある。祭りでは審査員が各チームの演舞を採点。上位チームが最終日のファイナルステージで大賞を目指して争う。参加者が競い合うのは確かに祭りを盛り上げる要素の一つだが、回数を重ねるにつれ、常連チームが出てきたのも事実だ。採点式の審査方法や、組織委の支部長が長い間審査員を務めていたことなどが影響しているとみられる。大賞を獲得することだけが目的となり、「人数と金がないと勝てない」と参加を取りやめる少人数チームもあるという。
祭りの運営方法に反対して、9年前から地元の砂川市で独自に「The祭」という同様のイベントを開催している「すながわ夷(えみし)」の佐野真由美さん(43)は、「1位、2位を争うのが祭りではない」と批判する。
地方チームの代表でもある名寄市立大学保健福祉学部の大坂祐二准教授(社会教育)は「YOSAKOIソーラン祭りは地域活性化の起爆剤としての期待が大きかった。しかし、規模が肥大化して地域から離れたイベントになりつつある。祭りを今後も長く続けていくためには、参加のハードルを下げて地域に根ざした運営をすべきだ」と指摘する。
祭りから道内の地方色が消えていくのは寂しい。組織委はもう一度原点に戻って、運営のあり方を探る必要があるのではないか。
【金子淳】
◆反論
◇誰もが参加できる祭り目指す
桟敷席の設置は一義的には安全・警備上のため。桟敷席がないと通り道が確保できず、安全上問題があった。有料にしたのは設置費用がかかるためで、全国各地でやっている他のヨサコイなどと比べても高くはないはず。商業主義との批判があるが、決して営利目的ではない。
地方チームの減少については、確かに人数・資金不足があるのは事実。ただ、最大の理由は個々のリーダーのマネジメント力がないということだと思う。チームの運営方法には確立されたものはないので、今後はシンポジウムなどで運営方法の提案をしていきたい。
資金面では、ヨサコイの1人当たりの年間費用は3万〜4万円ぐらいと言われており、他の趣味や習い事と比べてそれほど大きいとは思えない。参加費も1人当たり1000〜2000円の設定だ。ただ、少人数では負担が増すので金額や取り方は検討している。予算の使い道が不透明との指摘もあるが、決算の公開を拒否したことはない。ただ、事務局員が少なく、うまく公開できていないのは事実。早急にホームページでの公開を含めて検討したい。
コンテストについては、上位チームを大きく扱うメディアの責任もあると思う。本来、多様性こそがヨサコイの魅力であり、参加者も観客も成熟する必要がある。審査方法では数年前から審査員を公募するなど参加の窓口を広げた。今後は採点方式の簡易化も含めて検討したいと思っている。
組織委としては、誰もが参加できる祭りを目指している。そのために40人未満のチームは1市町村1チーム限定だった制限も撤廃した。今後も批判はしっかり受け止めて、変えるべきところを変えていきたい。
(YOSAKOIソーラン祭り組織委員会)
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■ことば
◇YOSAKOIソーラン祭り
札幌市内で毎年夏に開催される祭り。参加チームは大通公園や路上などで「よさこいソーラン」と呼ばれる独特のダンスを披露する。踊り子は鳴子(なるこ)と呼ばれる小道具を持つのがルールで、曲の一部にソーラン節のフレーズが入っていなければならない。昨年の北海道洞爺湖サミットでは、札幌市内の2チームがG8首脳らの前で演舞を披露した。
5月25日朝刊