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「小さな国家と大きな社会」へ---「底辺同士のつぶし合い」から「連帯」へ (MIYADAI.com)
http://www.asyura2.com/09/bd57/msg/576.html
投稿者 乃依 日時 2009 年 12 月 01 日 23:36:28: YTmYN2QYOSlOI
 


http://www.miyadai.com/より
11月24日

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まもなく春秋社からマル激本「格差社会編」が上梓されます!
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まえがき:「小さな国家と大きな社会」へ---「底辺同士のつぶし合い」から「連帯」へ---
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                                宮台真司

【格差問題は小さく、貧困問題が大きい】
■マル激トーク・オン・デマンドの書籍化は本書で◎冊目となった。今回のテーマは「格差社会」。格差が大問題であることは、ロールズが『正義論』で「格差原理」(詳細は本文)を論じたことからも伺える。そこでは格差は正義の問題である。
■だが実際に「格差社会」という言葉によって昨今の日本で論じられているのは、公正ないし配分正義に関むに「格差問題」と、健康で文化的な最低限の生活を営む権利が脅かされる「貧困問題」の、両方だ。だから本書でも両方が扱われている。
■ただし、最初に断っておくと、日本での議論は、配分正義の問題も、多くは貧困の再生産に関連して論じられている趣きで、CEOの年収に関わるような上方格差よりも、貧困家庭の教育機会に関わるような下方格差に、専ら焦点があるようだ。
■データで確認しよう。貧困について国際比較をすると、貧困率つまり中位値の所得の半分以下の所得で生活する人々の割合は、自公連立政権が隠していた2006年データによれば15.6%で、西欧諸国の大半が10%以下なのと比べるとすさまじい。
■これとは別に、格差の指数であるジニ係数でみると、日本はフランスやドイツとほぼ同じであり、アメリカ・イギリス・オーストリア・カナダなどのアングロサクソン諸国よりも小さい。つまり貧困ならざる格差自体は日本が大きいとは言えない。

【非正規雇用に関する議論の盲点】
■これとは別に、日本で論じられているのは雇用形態の変化だ。非正規雇用の拡大は、労働市場の流動性に晒される非正規労働者と、晒されない正規労働者との「格差」を生むようになった。前者は、従来になかったような就業形態に置かれている。
■しかし単に非正規雇用や解雇を規制するだけでは問題は解決しない。雇用弾力性のない正規雇用しか許されないことで雇用リスクが上がれば、企業は採用を手控え、雇用リスクの低い海外で労働を調達しようとするので、失業率が上昇してしまう。
■実際にフランスではそうした状況が展開しているのであるが、「多くの失業者がいる」のと、「少ない失業者と多くの非正規雇用者がいる」のと、どちらが良いのかということは、セーフティネットの貼り方も含めた政策パッケージ全体の問題だ。
■日本の場合は非正規雇用の増大と貧困率の増大が連動しているから、同一内容同一賃金制に代表されるような非正規雇用の待遇改善が図られなければならないのは当然だ。しかし私がみるところ、こうした議論でさえ問題を矮小化しているだろう。
■むしろ重要だが議論されにくい問題は、貧乏が貧困に直結してしまうようなヒドイ社会、あるいは金銭的な貧しさが不幸に直結してしまうようなヒドイ社会に、我々が生きているということだ。包摂的な相互扶助が欠如した社会になっているのだ。

【激烈にヒドイ社会になった日本】
■日本はヒドイ社会である。自殺率は英国の3倍、米国の2倍、西側先進国でダントツの第1位。単に経済の沈下が理由とは言えない。個人当たりGDPは2000年代初頭段階で2位か3位なのに、自殺率は既に先進国で突出した第1位だった。
■公的支出に占める教育費の割合は、他の先進国が5%台で日本は3・5%。子育て支援費が公的支出に占める割合は、他の先進国が3%台半ばで日本は1・3%。現行世代が次世代の育成を--子々孫々の育成を--これほど気づかわない国はない。
■就業時間はヨーロッパが1400時間前後。アメリカが1700時間台。日本はサービス残業を除いて1900時間台。サービス残業を含めると2200時間前後とされる。ひと月で50時間以上多く、労働日20日として1日に通勤時間を含めて3時間多い。
■これでは家族や地域やNPO等への社会参加の契機が削られ、そのぶん社会成員は互いに切り離されて相互扶助が薄っぺらくなり、人々は社会的に孤立する。つまり、多少経済的につまづいたり離婚したりした程度で、幸せに生きられなくなる。
■その意味で、昨今話題の「ワークライフバランス」が趣味の時間を増やすことだと誤解されがちだが、本質は「経済を回す」ための時間を減らして「社会を回す」ための時間を増やすことにある。こうした誤解が蔓延するのは日本だけのことだ。

【経済回って、社会回らず】
■日本では「経済回って社会回らず」の状態だ。日本は経済を回すために社会を犠牲にしてきた。経済が回っている時は社会の大穴が辛うじて埋められた。経済が沈み始めたら「金の切れ目が縁の切れ目」。山一や拓銀が倒産した97年が切れ目だ。
■同年度決算期から自殺者が急増。従来年間2万人台半ばの自殺者数が3万人以上に跳ね上がる。大きなニュータウンでは年間20人前後が孤独死する。孤独死と自殺は似る。仕事を失い家族離散した男が困窮して死に至る。まさに金の切れ目が…。
■現時点では既に個人あたりGDPは20位前後。国単位のGDPでも中国に抜かれて第3位。経済成長があればすべてウマくいくという竹中平蔵の図式は、裏を返せば「金の切れ目が縁の切れ目」のポンチ絵。経済次第で人が死ぬのは変わらない。
■たとえ経済が上向いても、ヨーロッパの人々に比べて一日3時間も仕事時間が長く、家族や地域やNPOや教会での活動時間が削られるのであれば、人は幸せになれない。その証拠に各種の幸福度調査によれば日本は世界で75位から90位である。

【竹中平蔵的なポンチ絵を排する】
■ヒドイ社会を放置したまま経済格差に視線を集中させるのでは竹中平蔵的ポンチ絵と大差がない。こうした杜撰な思考はグローバル化(資本移動の自由化)を理解していない。グローバル化は放っておくと経済と社会の連動を途切れさせてしまう。
■つまり「経済回って社会回らず」の状態が帰結されがちだ。よく知られるように1997年から2007年の間に、企業の経常利益は28兆円から53兆円に増えたが、労働者の給与は147兆円から125兆円に減った。経済さえ回れば…は、完全な虚構だ。
■むろんグローバル化に反対するのも馬鹿げている。BRICS諸国の経済的伸長はグローバル化の賜物だ。世銀統計によればグローバル化は豊かな国の国内格差を拡げても国際格差の一部を縮める。反グローバル化は豊かな国のエゴイズムに過ぎない。
■グローバル化が進むことは、資本移動の自由化ゆえに、日本の労働者がBRICS諸国の労働者と同じ労働市場で競争するようになることと同じだから、必ず国内労働市場が流動化して国内格差が拡大する。それを完全に抑止することは全く不可能だ。
■だから先進各国の政治課題は、グローバル化に棹さしつつ「経済回って社会回らず」の状態にならぬよう「社会の自立」を国家が支援するというものになった。外需で回る経済圏と内需で回る経済圏を分離した上で統合する発想も不可欠になった。
■本文では、こうした課題を「小さな国家と大きな社会」と表現している。大きな社会とは包摂的な相互扶助のある社会のこと。誰でもあずかれる助け合いということだ。小泉・竹中的な「小さな国家と小さな社会」では国民は不幸になるしかない。

【2ちゃん的ウヨ豚を排する】
■「小さな国家」は「大きな社会」を支援する。「社会投資国家」という。「社会を保全するべく国家を警戒する」のが米欧に共通する保守の原理だが、グローバル化で「大きな国家」が不可能になり、かつ経済が社会を空洞化させがちになった今日、「小さな国家と大きな社会」の保守の原則が、どんな国でも採用されはじめた。
■社会に投資をするのは国家だけでなく、国民の役割でもある。「ウマイ早い安い」もいいが、あえてスローで高いものを買うことが地域保全の投資機能を果たしすことが、80年代に先進各国で気付かれるようになった。気付かぬのは日本だけ。
■こうした認識は、80年代に、南欧のスローフード運動、カナダ発で大英帝国圏に拡がったメディアリテラシー運動、米国の反ウォルマート運動などによって先進国に広がったが、日本だけは「対米追従による国土荒廃」へと舵を切った。
■保守を名乗るのであれば、外交問題に感情的に噴き上って国益を害する「2ちゃん的ウヨ豚」を排し、社会的に良き機能を果たすプレイヤーが市場を通じて選別されるように、紙幣を(その余裕があれば)投票券として使う者とならねばならない。
■「2ちゃん的ウヨ豚」は、底辺が拡大する社会の中でありがちな、浅ましき者どもによる「底辺同士のつぶし合い」に過ぎぬ。「ゼロ年代批評」が「底辺同士のつぶし合い」傾向を示したことも否めない。ガス抜きで誰がほくそ笑むのか考えるべきだ。
■こうした誤ったステアリング(舵切り)の延長線上に、日本的「格差社会」の問題がある。「経済格差が持つ意味が尋常でなく拡大されがちな病的な社会」という焦点をも逃さず、本論では問題を考察した。一石を投じられれば何よりも幸である。

投稿者:miyadai
投稿日時:2009-11-24 - 09:13:03
カテゴリー:お仕事で書いた文章 - トラックバック(0)


 

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コメント
 
これって100%宣伝じゃないか。削除対象じゃないのか?
2009/12/06 17:10
02 2009 年 12 月 06 日 21:35:55
資料として引用しました。
宣伝にあたる箇所を削除しようとも思いましたが、
文章をいじる(改変する)ことになるので、この形で引用しました。

彼のこの主張(「底辺同士のつぶし合い」から「連帯」へ)は客観的な意味でも参考になると思います。
(乃依)


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