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玄関の扉があいた。ついでに客間のドアが、おそろしい勢いで開け放たれた。
その勢いにおどろいて、思わず鏡子はドアのほうへ振向いた。
七疋(ひき)のシェパアドとグレートデンが、一度きに鎖を解かれて、ドアから
一せいに駈け入って来た。あたりは犬の咆哮(ほうこう)にとどろき、ひろい客間は
たちまち犬の匂いに充たされた。
三島由紀夫「鏡子の家」
1958年3月17日 起稿
1959年6月29日 脱稿
------------------三島由紀夫34歳のとき書き下ろし単行本として
新潮社から、1959年の9月に、上下2巻同時に発行される。
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