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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/19600
激変するアジア社会:結婚しない女性たち
2011.08.22(月)
The Economist
(英エコノミスト誌 2011年8月20日号)
アジアでは、女性が結婚を望まなくなっている。その社会的な影響は深刻だ。
今から20年前、はっきりした「アジア的価値観」は存在するかという議論が巻き起こった。その際、注目を集めたのは、民主主義はアジア的価値観には含まれないとする独裁者たちの怪しげな主張だった。
日経新聞主催の国際交流会議、シンガポールのリー元首相も出席 - 東京
アジア的価値観を積極的に提唱したリー・クアンユー氏は、今何を思うか〔AFPBB News〕
だが、さほど注目されなかったかもしれないが、より興味深い意見として、アジアでは伝統的な家族の価値観が欧米より強く、それがアジアの経済発展の一端を担っているという主張があった。
シンガポールの元首相で、アジア的価値観の熱心な提唱者であるリー・クアンユー氏の言葉を借りれば、中国人の家族は「学問、努力、倹約、将来の利益ために今の楽しみを先延ばしすること」を奨励するという。
表面的には、リー氏の主張は今でも説得力を持つように思える。アジアの大部分では結婚することが当たり前で、婚外子はほとんどいない。これに対し、欧米の一部の国では結婚の半分が離婚に終わり、子供の半数が婚外子として生まれる。
英国各地で起きた暴動の根底には、親からの教育や親への尊敬の念の欠如があると考える人は多く、この暴動は東洋と西洋の大きな違いを浮かび上がらせているように見える。
結婚からの逃避
しかし、結婚のあり方は、各地域が異なる伝統を持つにもかかわらず、東アジア、東南アジア、南アジアの全域で急速に変化している。その変化は、20世紀後半に欧米で起きたものとは様子が異なる。離婚は、一部の国で増えているものの、欧米に比べると少ない。現在アジアで起きているのは、結婚からの逃避だ。
結婚率の低下の一因は、結婚が先延ばしにされていることにある。結婚年齢は世界中で上昇しているが、中でもアジアは際立っている。アジアの人々は欧米よりも結婚が遅くなっている。日本、台湾、韓国、香港といった特に豊かな国や地域では、平均結婚年齢がここ数十年で急上昇し、現在は女性が29〜30歳、男性が31〜33歳となっている。
多くのアジア人は結婚を先送りしているのではない。一生結婚しないのだ。日本では、30代前半の女性の3分の1近くが未婚で、恐らく、その半数は今後も結婚しないだろう。台湾では、30代後半の女性の5分の1以上が未婚で、その大部分が一生独身だ。
出生率低下に悩むシンガポールで、政府が恋のキューピッド役
出生率低下に悩むシンガポール政府は、「ロマンシング・シンガポール」と題した恋愛推進キャンペーンも実施したが・・・〔AFPBB News〕
さらに未婚率が際立っている場所もある。40〜44歳の女性の未婚率は、タイのバンコクでは20%、東京では21%に上る。シンガポールでは、この年齢層の大卒者は27%が結婚していない。
現在のところ、アジアの2大大国である中国とインドでは、こうした傾向は見られない。しかし、この傾向を加速させた経済的な要因が中国とインドに広がるにつれ、両国もいずれ同じ運命をたどる可能性が高い。
中国とインドでは1世代にわたって男女を生み分けるための中絶が行われてきたため、事態はさらに深刻化するだろう。両国では2050年までに、結婚適齢期の男性が女性を6000万人も上回る見通しだ。
シングルライフの喜び
女性たちは社会進出に伴って、結婚を避けるようになっている。アジアでは、仕事と結婚の両立が難しいことが一因だ。アジアの女性は夫、子供、そしてしばしば年老いた両親の世話をほぼ一手に引き受けなければならない。しかも、たとえフルタイムの仕事に就いても、同じ役割を続けることを期待される。
そのこと自体は世界共通だが、アジアの女性は特に負担が大きい。例えば日本の女性は一般的に週40時間働き、さらに平均30時間の家事をこなす。夫が家事を手伝う時間は平均3時間だ。また、アジアの女性は育児のために仕事を辞めると、子供が大きくなってから仕事に復帰するのが難しい。
これでは、アジアの女性が結婚に対して非常に悲観的なのも無理はない。今年行われた調査によると、日本人女性で自分の結婚に前向きな人は、日本の男性や米国の男女に比べてはるかに少なかった。
仕事は、女性の結婚を難しくすると同時に、女性に別の選択肢を与える。多くの女性が経済的に自立し、単調な伝統的結婚生活より魅力的な独身生活を求めることができるようになった。高等教育も結婚率の低下に寄与している。アジアでは、高度な教育を受けた女性ほど結婚に消極的な傾向があり、現在は高度な教育を受ける女性が増えているためだ。
つまり、アジアで起きている結婚からの逃避は、現代の女性が大きな自由を享受できるようになった結果であり、それ自体は祝福すべきことだ。
しかし、この事実は社会問題も引き起こしている。アジア諸国は欧米に比べると、年金をはじめとする社会保障にあまり投資してこなかった。身内が年老いたり、病気になったりしたら、家族が世話をするという前提があるためだ。
結婚なくして子供なし
台湾、出生率11年ぶり増加 ことし上半期
婚外子が珍しいアジアでは、結婚の減少は子供の減少に直結する〔AFPBB News〕
その前提はもはや通用しない。結婚の減少は出生率の急低下にもつながっている。東アジアの出生率は 1960年代後半には女性1人当たり5.3人だったが、現在は1.6人まで減っている。特に結婚率が低い国では1.0人に近づいている。
出生率の低下は、人口動態上の深刻な問題を引き起こし始めている。驚くべき速度で人口の高齢化が進んでいくためだ。
あまり目立たないが、問題はほかにもある。結婚は男性を社会に適合させる効果がある。結婚は、男性ホルモンと犯罪行為の減少と関連しており、結婚が減少すれば、犯罪が増加する恐れがある。
では、アジアで結婚を復活させることはできるだろうか? 男女に期待される役割が変われば可能だろう。しかし、伝統的なやり方を変えるのは難しい。政府がいくら法律を制定しても、広く浸透した偏見を取り除くことはできない。それでも、変化を促すことはできる。
法的に離婚をしやすくすれば、逆説的に、結婚を増加させられるかもしれない。今は結婚を避けている女性も、結婚を解消できると分かっていればもっと積極的になる可能性がある。うまくいかなければ別れられるだけでなく、離婚の自由があれば夫の注意を引きつけておけるということもあるだろう。
家族に関する法律を整備して、離婚後の女性が夫婦の財産をより平等に手にできるようにする必要もある。雇用主に対しては、男女双方の育児休暇を法的に義務づけるべきだ。さらに、子育ての支援や補助金も整備しなければならない。このような支出によって家庭生活を送る人が増えれば、高齢者の面倒を見る国の負担も減るかもしれない。
アジア諸国の政府は長い間、家庭生活の優越性が欧米に対する大きな利点だと考えてきた。そのような自信には、もはや裏付けがない。各国政府は自国社会で起きている大きな変化に目を向け、その結果にどう対処すべきか考えなければならない。
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