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http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=822
7月15日に発表されたアムネスティ・インターナショナルの報告書によると、朝鮮民主主義人民共和国では、手足の切断や大手術が麻酔なしで行なわれている。しかし、これは同国の医療制度が緊急事態に陥っていることを示すほんの一例に過ぎない。
先日アムネスティが発表した報告書『朝鮮民主主義人民共和国の医療制度の崩壊』では、医薬品が不足し、病院がほとんど機能しておらず、栄養失調により病気が蔓延しているという実態が、同国の人びとや医療従事者とのインタビューによって明らかにされている。
病院では消毒さないまま皮下注射針が使われ、シーツも定期的に洗濯されていないという証言がある。
「同国は、必要最低限の基本的医療や生存に必要な物資の提供すらできていません。医療費を払えないような貧困層に対しては、それが特にひどい状態です」。アムネスティのアジア太平洋部副部長キャサリン・バーバーはそのように語った。
世界保健機構の最新の統計によると、同国の医療費は世界最低で、一人当たりの年間医療費は1USドル以下である。
政府は、医療は、全ての人が無料で受けられるといまだに主張している。しかし、多くの証言者が、1990年代以降、あらゆる医療サービスについて有料になったと述べている。基本的な診察については、タバコやアルコール類、食料品などを医師に支払い、検査や手術の際には現金で支払わなくてはならなかったという。
報告書によると、多くの人びとが医師の診断を避け、自分の当て推量や市場の売り主の助言で市場に医薬品を買いに行き、医薬品を購入している。当局は、依存性が高い催眠性の鎮痛剤を最近禁止したが、多くの人びとはこれを万能薬として日常的に使用している。
「現在、同国では結核の流行への対策が必要となっていますが、薬物使用に関する基本的な教育を政府が行なってこなかったため、多くの患者が結核の抗生物質に耐性を持ってしまっており、状況が大変憂慮されます」。キャサリン・バーバーはそのように述べた。
「人びとは医薬品や食糧援助を切に必要としています。同国への援助が、支援国による政治的駆け引きに使われるようなことは、絶対にあってはなりません」。
アムネスティは支援各国に対し、人道的援助を、国連を通じて継続的に提供するよう要請している。その際、援助は、政治的な動機ではなく、必要性に基づいて行わなければならない。
同国の公衆衛生のインフラ改善には、さらに多くの国際的な支援が必要である。同国の国連世界食糧計画(WFP)事務所も、極めて財源不足の状況にあり、より多くの国からの援助と政治的な支えが必要とされている。
同国における食糧不足は恒常的である。2009年12月の通貨切り上げが失敗した後、米の価格は二倍以上に跳ね上がり、報告書で引用されているあるNGOの話によると、今年の1月から2月にかけてある道だけで数千人が餓死した。
インタビューを受けた人の多くが証言しているところでは、食糧不足によりひきおこされる慢性的な健康不良を訴え、草、樹皮や根っこを食べて空腹と闘ってきたという。栄養失調が結核の再流行に拍車をかけている。
同報告書は、2004年から2009年の間に国を離れ、現在国外に居住している40人以上の人びと、および国内で働く医療従事者へのインタビューに基づいている。
「同国が締約国となっている自由権および社会権規約を含め、国際法は、政府に人びとに適正水準の食糧と医療を提供すること、およびそれができない場合は、国際的協力と援助を求めるよう要求している」。キャサリン・バーバーはそのように述べた。
背景
1990年代初頭に同国は飢饉にみまわれ、その結果、約百万人の死者を出した。その後現在に至っても食糧不足が続いているが、政府の政策は、その危機的状況をさらに悪化させてきた。
1995年になってようやく、同国の政府は国際社会に食糧援助と支援を訴えた。
しかし国連および人道支援団体が食糧や必需品を支給し始めた後も、政府は彼らの現地での活動を妨害した。支援団体などが同国の大部分の人びとにアクセスするのを阻止したのである。
政府の食糧配給の失敗と1990年代の工場や国営企業の閉鎖による大量失業で、同国の多くの人びとは大変な困難の中、生き残るために苦闘している。
1995年から2005年にかけて、WFPの緊急活動は同国の人口の三分の一を支援してきた。「アクセスが認められない限り、食糧支援をしない」という方針を堅持することで、WFPは、同国内の多くの場所に行って食糧配給の監視システムを改善した。
2005年9月、当局はもう充分な食糧があると発表し、豊作を引き合いにWFPに人道支援プログラムの停止を命じた。政府は、中・長期の技術開発支援のみ許可すると述べた。しかしながら、WFPを通じた国際的な食糧支援は2005年にいったん終了したものの、2006年と2007年の壊滅的な洪水の後、一年後には再開された。
アムネスティ発表国際ニュース
2010年7月15日
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