アジアで活動する複数のロビー活動団体が結集して「Samsung Accountability Campaign」という運動を始めた。この運動のメンバーは、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)社の半導体製造工場の安全性に疑問を示し、そこで働く作業員の間でがんが異常発生していると主張している。 そして、この運動を通して、半導体チップの製造に携わる労働者が健康を損なう危険性があると認め、健康被害を受けた労働者に賠償金を払うようにSamsung Electronics社へ求めるという。 この運動には、Asian Network for the Rights of Occupational Accident Victims(ANROAV:労働災害被災者の権利のためのアジア・ネットワーク)や、Korean Institute of Labor Safety and Health(KILSH:韓国労働安全衛生協会)傘下のSupporters for the Health And Rights of People in the Semiconductor Industry(SHARPs:半導体産業における労働者の健康と権利を守る会)、Korean Metal Workers’ Union(KMWU:韓国金属労働者組合)などの団体が参加する。 この運動は、Samsung Electronics社の半導体工場に勤務し、2007年3月6日に白血病により、22歳の若さで亡くなったYu-mi Hwang氏の四回忌に合わせるように始まった。Yu-mi Hwang氏の死因は当初、先天異常によるものと考えられていたという。 SHARPsが作成したビデオによれば、Yu-mi Hwang氏は、ソウル南部に位置する器興(Giheung)区の半導体工場で、ウエハー清掃を担当していた。彼女の父親であるSang-gi Hwang氏が娘の死について調査したところ、彼女の同僚の中に、同じような原因で亡くなった労働者がいることや健康状態に異常をきたした労働者が多数確認できた。作業員の死亡や健康被害は労働条件と関連がある、と同氏は主張する。 Sang-gi Hwang氏はビデオの中で、Yu-mi Hwang氏と2人1組で同じ装置を操作していた同僚が流産で職場を去り、交替要員として入った別の女性作業員は白血病で死亡した、と明かす。このビデオでは、さまざまな人物が証言しており、Samsung Electronics社のコメントも収録している。しかし同社は、こうした健康被害は「個人の健康問題」であると主張し、一切の責任を負わないとしている。Samsung Electronics社の作業員が訴える健康被害と、工場内で使用している化学薬品との関連は、生化学と統計学のいずれの側面においても、いまだ科学的に証明も反証もされていない。 半導体製造工場で、ウエハーの製造などで使用する化学薬品が、作業員の健康に悪影響を与えていると言われることは過去にもあった。2003年には米IBM社を相手取った訴訟に発展している。同様に、米National Semiconductor社のスコットランドのGreenockにある工場でも、がん発生率の高さが問題となった。 世界中がこの問題に初めて関心を示したのは、1986年6月の裁判だ。この裁判では、米国の法律事務所Boccardo Law Firmが、土壌汚染と地下水の潜在的汚染を引き起こしたとして、米Fairchild Semiconductor社を相手に訴訟を起こし、和解金を勝ち取っている。和解金の額は非公開だ。数百万米ドルを費やして工場近隣に開発された住宅地では、住民の間で先天性異常やがん、流産といった汚染に起因する健康被害が多数発生したといわれている。 SHARPsのビデオは、このウェブ・ページで視聴できる。 http://www.vimeo.com/8973527