★阿修羅♪ > アジア13 > 419.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
出典 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1706
【国から逃げ出し始めた韓国人? 超格差社会の隣国は日本の未来か〜書評】
2009年09月07日(Mon)
川嶋 諭
韓国は日本をお手本にして、日本に追いつけ追い越せで突っ走っているとばかり思いきや、日本のはるか先を走っていっているようだ。近い将来の日本の姿を見せられているような気がして怖くなった。『“超”格差社会・韓国〜あの国で今、何が起きているのか〜』(扶桑社新書)という本を読んだ後の素直な感想だ。
■ 教育費の半分が塾費用、8年前の3倍に膨れ上がった
まずは子供の受験。日本でも年々受験戦争が激しくなっているが、お隣の韓国は想像を超える。昨年(2008年)、韓国の世帯支出で突出した伸びを示したのが教育費だった。
その額は40兆ウォン(約2兆8000億円)に上り、そのうち塾にかかった費用だけで19兆ウォン(約1兆3300億円)に達しているという。塾の費用は8年前の3倍にも達している。
子供たちは学校の自習室で午後10時頃まで自習した後、塾に向かい、午前1時頃に帰宅の途に就く。ソウルのある繁華街では、2次会を終えたサラリーマンたちが目を赤くして集団で帰り始める頃、目の血走った別の集団がぞろぞろとビルを出てくる。
塾を終えたばかりの中学生たちだ。受験戦争の過熱に、韓国政府は今年、夜10時以降の塾の営業を規制する法案まで考えたとこの本は伝えている。
昨年来の不景気で就職難になったことも受験熱を煽っている。また、韓国経済も国際化が進み、別な受験戦争も生まれている。海外への留学だ。ソウル大学は日本の東京大学よりも入学が困難なことで知られるが、最近は教育熱心な家庭にはソウル大学では不満で、海外の有名大学へ高校から直接留学するか、あるいはもっと小さい時から海外へ渡り、有名大学を目指す子供が増えているという。
そうした子供たちは、例えば米国のハーバード大学やエール大学、スタンフォード大学、英国のオックスフォード大学、ケンブリッジ大学などを目指している。
今から5〜6年前、知り合いの韓国人から留学熱のことは聞いたことはあった。「子供と母親が米国に渡り、父親が韓国からせっせと仕送りをするんです」という話に当時、悲しい父親の気持ちを考えて胸を締めつけられる思いだったが、今やそれは珍しいことでも何でもなく、当たり前なのだそうである。
■ 1クラスから10人が忽然と姿を消した謎とは
例えば、ソウルのある小学校では夏休みが終わった2学期、1つのクラスで突然、10人ほどが学校に来なくなるという事件があったという。
よく調べてみると、親が子供を連れて海外に留学してしまったのだ。学校に何の連絡もせずに勝手に留学に行ってしまうことから「勝手留学」と呼ばれているそうだ。
小学校で一度に10人も、しかも同じクラスから留学に出てしまう。どう考えても正常な姿には見えない。もはや韓国の国民は、国家を信じられなくなってしまったのかと思う。まさか日本ではすぐにこんなことは起きないと信じたいが、果たしてどうか。
自分の胸に手を当ててみれば、日本の教育を信じている自分の姿は目に浮かばない。これからも進むであろう格差社会、超競争社会を前に、せめて英語だけは流暢に話せるようになってほしいと願う親の姿がある。
そして、この狭くガラパゴス化が進んでいると言われる日本に頼らず、世界中で働ける場所を見つけられるように、可能な限りしてあげたいと思う。韓国の現象を決して笑えない自分がいる。
そして、この狭くガラパゴス化が進んでいると言われる日本に頼らず、世界中で働ける場所を見つけられるように、可能な限りしてあげたいと思う。韓国の現象を決して笑えない自分がいる。
留学で母子に去られた父親のことを韓国では「ギロアッパ」と呼ぶそうである。ギロとは韓国語で雁のこと。アッパはお父さんという意味だ。
雁は雛のために遠くまで餌を取りに行く習性があることから、母子が海外に去り、餌を取る(給料を稼ぐ)ために残された父親のことをこう呼ぶらしい。
そして、韓国で “単身赴任” となった彼らは群れをなす。仕事がない土曜日になると寂しさを紛らすために夜はバーに集まって大酒を飲む。時には朝まで飲み明かして、日曜日は夕方まで寝ている寂しい父親もいるという。そうしたギロアッパたちの数は3万人とも5万人とも言われている。
■ 米国に留学している学生の数は3年連続で韓国が一番
実際に韓国の留学熱は数字でも示されている。2007年、米国に留学している人の7人に1人は韓国人で3年連続で国別の1位。
しかも、その数は年々増えているそうだ。日本でも何かのタガが外れたら、雪崩を打って同じような現象が起きる可能性はあるだろう。
こうした教育熱の背景にあるのが拡大する格差社会と競争の激しさだ。韓国では大学進学率が84%にも達する。53%の日本よりはるかに高い。
自ずと大卒者の競争は激しさを増す。韓国では大学を出ても正規雇用されるのはわずか20%あまりしかないという。残りの80%は非正規雇用か就職浪人である。
しかも、幸運にも一流企業に入ることができたとしても、38歳で定年を迎えてしまうと著者はこの本の中で指摘している。韓国の企業の多くが55歳定年制を取っているのだが、社員の査定が厳しく、業績が悪いと「名誉退職」という “勲章” を得て自発的な退職に追い込まれるのだそうだ。
40歳までに役員に上がれるような人材でないと、この勲章をいただくことになり、会社を去らなければならなくなる。そのため38歳が実質的な定年になっているのだという。日本的な経営が今では過去のものになり日本でも労働環境は厳しくなっているとはいえ、日本とは比較にならない競争の激しさと言えるだろう。
もっとも、日本でも東京駅近くに本社を構える就職情報誌から始まった大企業では似たような例がある。日本の大半の企業がその会社のようだったらと勝手に想像すると、少し背筋が寒くなってしまった。しかし、日本の企業も着実にその方向に向かっているのは間違いない。
■ 日本以上のスピードで進む少子高齢化
韓国は高齢化の勢いも激しい。2005年の時、65歳以上のお年寄りの比率は、日本が約20%で韓国は9%。日本よりはずっと若い国である。ところが、高齢化へ向かうスピードは日本以上に速い。
韓国が日本より高齢化社会になるのは時間の問題だと著者は見る。一方で、出生率は1を切る危険性もあるという。少子高齢化へ向かうスピードは日本以上だ。
こうした現実の裏返しとして、韓国では女性の社会進出がある。儒教の影響が濃い韓国では男性優位の風潮は相変わらず強いが、このところの女性の社会進出の勢いは激しい。つい先日、米国のゴールドマン・サックスが出したリポートでも指摘されている。
既に韓国の小学校では教員の9割が女性になって男性教員の採用が年々難しくなっているという。国会でも1990年代は議員の女性比率がわずか3%だったものが2008年には14%にまで増えているとこの本では紹介している。
韓国は、変化の遅い日本に比べると、その数倍の速さで変化している感がある。この本でも紹介されているネット社会でも、日本よりはるか先に進んでしまっている。もちろん、日本と韓国では文化的には大変近い国同士ではあっても、異なっている点も多い。韓国の進んでいる道がすべて日本の近未来と重なり合うとは思えないが、日本にとって参考になる国が意外に近い所にあることは事実だろう。
日本の政治が歴史的な転換点を迎えた今、日本の向かうべき道を一から考え直すよい機会でもある。その意味でも読んでみて損はしない1冊だと思う。