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ニューズウィーク日本版
5月29日(金) 15時46分配信 / 海外 - 海外総合
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090529-00000301-newsweek-int
アメリカに良い選択肢がない以上、北朝鮮の核保有能力を容認し続けるしかない。最善の対応は冷静にしていることだ。
スティーブン・ウォルト(ハーバード大学ケネディ行政大学院教授、国際関係論)
5月25日〜26日にかけて、北朝鮮は2度目の核実験を行い、短距離ミサイルを数回発射した。確かに良いニュースではないが、パニックに陥る必要はない。北朝鮮が核兵器能力を保持していることは既に分かっていた。今回の核実験は前回よりも少しばかり強力だったようだが、戦略環境が実質的に変化したわけではない。
北朝鮮の挑発的な態度は不快かもしれないが、核実験をしたからといって金正日(キム・ジョンイル)政権について何か新しいことが分かるわけではない。アメリカは核実験を1030回(イギリスとの共同実験はさらに24回)行ってきた。北朝鮮はちょうど2回しか核実験を行っていない。
大げさに騒ぐ必要がないもうひとつの理由は、北朝鮮の核問題についてほとんど何もできないということだ。われわれはこの問題に十数年の間悩まされてきた。クリントン政権は93年〜94年にかけて、北朝鮮の核施設に対する予防的な攻撃を真剣に検討していた。だが結局、自制した。攻撃によるリスクは計り知れないと、北朝鮮周辺の同盟国が反対したからだ。
続くブッシュ政権は、クリントン政権で重視された外交路線に反対し、当初はより強気の態度で臨んだ。それでも06年の1回目の核実験を止めることができなかった(むしろ核実験を促したかもしれない)。ブッシュ政権は結局、威圧的な政策に効果はないと気付き、外交路線に転換した。
われわれにとって打つ手が乏しい理由は2つある。まず、北朝鮮と経済的に深く結び付いていない。だから援助や貿易、もしくは投資を断ち切るぞと圧力をかけることができない。
次に、金正日政権を武装解除あるいは転覆させるために武力を行使したり経済封鎖をすることは、朝鮮半島で全面戦争を引き起こす恐れがある。そうなれば北朝鮮との国境から砲撃範囲内にあるソウルに甚大な被害をもたらしかねない。さらに北朝鮮が突如崩壊すれば、大規模な人道的問題が発生しかねないうえ、核物質が国外に流出しやすくなる。
こうした懸念から中国や韓国は、北朝鮮の行動に憤慨しているにもかかわらず制裁強化には概ね反対している。
最善の対応は冷静にしていることだ。この核実験がオバマ大統領の決意を試しているとか、アメリカの外交政策に対する根本的な挑戦だといった議論はやめたほうがいい。実際のところ、核実験は北朝鮮にとっては「いつものこと」にすぎない。アメリカは過剰に反応するより「控えめな反応」をした方がいい。
注目されたがっている北朝鮮に注目するよりも、アメリカはこの核実験を主要関係国(中国、ロシア、韓国、日本)の間での合意作りに生かし、中国にその主導権を握らせるべきだ。
オバマ政権がとりわけ避けるべきなのは、アメリカが北朝鮮の核保有を「容認しない」ことに関して大胆な発言をすることだ。実際のところ、われわれは北朝鮮による核保有を容認してきた。良い対応策がない以上、今後も容認し続けることになる。
(フォーリン・ポリシー特約)