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海賊祭りも前夜祭だったようで。
IISIAが読み解くマーケットと国内外情勢
去る27・28日の両日、イスラエル空軍はパレスチナのガザ地区に対し、戦闘機とヘリコプターによる大規模な空爆を実施、民間人を含む300名余の住民が死亡した。イスラエル側はガザ地区で活動を展開するイスラム系原理主義組織「ハマス」に対する非難をここにきて強め、とりわけ25日の段階でエジプトを訪問したリヴニ外相が記者会見において「ハマスによる攻撃はもうたくさんだ。状況はまもなく変わる」と述べ、空爆を示唆していただけに、1967年以来といわれるその規模はともかく、空爆自体は“想定内”の出来事であったというべきだろう。
多数の犠牲者が出る一方で、世界中のマーケットとそれを取り巻く国内外情勢の動向を見る限り、今回の“空爆”を事実上待ち望んでいたかのような「潮目」が見え始めている点が見落とせない。たとえば空爆の当事者であるイスラエルであるが、来年(2009年)2月10日に実施予定の総選挙を控え、与野党共に膠着する内政状況を打開するための「ブレイクスルー」を必要とする状況に置かれてきた。
米国発の金融メルトダウンによる深刻な影響はイスラエルにも及んでおり、今年(08年)だけで同国株式市場指数は実に49パーセントも下落してしまっている。今回の空爆を受け、イスラエル市場では株式・債券ともに大幅な下落を見せたが、今後ますます“国威発揚”が語られるようになる中で総選挙に向けた集票活動が活発となっていくことは間違いない。
他方、国際社会の反応を見ると、米国が民間人への攻撃を非難するにとどまったのに対し、EU、フランスそしてロシアが即時停戦をイスラエルに対し求め、対照的な対応を示したことが際立つ展開となっている。
今後の戦線拡大について一つの大きなカギとなるのが、米軍による支援の可能性であろう。しかし、現段階で米海軍の機動部隊の内、中東地域に展開しているのは一つだけであることから、米軍がイスラエル軍をただちに支援し、さらには参戦するという動きに出ることは非常に考えにくい。
さらにもう一つの大きなカギを握っているのがロシアだ。8月に発生したグルジア紛争において、グルジア側が持つイスラエル製最新兵器を電撃的に破壊したのが、自国製兵器で武装したロシア軍であった。そのためその後、イスラエル製兵器の脅威に悩むアラブ諸国がロシア側に武器輸出を相次いで要請。ロシアの軍事産業はにわか景気に沸いてきたが、他方でこれがイスラエル側にとって悩みの種となってきた経緯がある。
今回の空爆に先立つ今月中旬、イスラエル国防省幹部はモスクワを訪問。イスラエルが世界に誇る無人航空機(UAV)の対ロシア供与について話し合われたことがロシア軍幹部によって明らかにされている。これによってロシアとの間ではガザ空爆を控え“握った”とも言えようが、去る23日にロシアはモスクワを訪問したパレスチナ政府幹部に対し、引き続きの“支援”をラブロフ外相の発言という形で表明したばかりである。
また、イランに対してはイスラエルの恐れる最新鋭地対空ミサイルS−300を供与したとの情報もある。これを見る限り、今回の空爆とこれから続く長期化の兆しの中で、国際社会が最も恐れている「対イラン空爆」、あるいは「アラブ諸国との全面戦争」という構図への飛び火は想定しにくいと考えられよう。
そのアラブ諸国であるが、彼らもまた実は今回の空爆と歩調をあわせて行動している節がある。もちろん表向きはイランに対する非難を続けているものの、たとえば本日(29日)、オマーンで開催される湾岸諸国会議(GCC)では域内通貨統合に向けた“歴史的合意”が発表される可能性があるものと考えられている。
これら諸国の最大の悩みは何よりもまず原油価格の暴落だ。イスラエルによる空爆の“長期化”は、地政学リスクを高め、ひいては原油価格の反転を招く可能性があるため、その言葉とは裏腹に内心は歓迎すべきものととらえられている可能性がある。間もなく発表される今次会議の合意文書に要注目だ。
米国におけるオバマ次期政権の就任という決定的な「潮目」に向け、残りわずか20日余となった世界。これまでの膠着した状況を乗り越え、原油、軍事、そして金(ゴールド)と為替(米ドル)に至るまで“反転”のための理由づけとして、イスラエルによるガザ空爆が引き続き用いられることになることに十分警戒すべきだろう。(執筆者:原田武夫<原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA) CEO>)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2008&d=1229&f=business_1229_020.shtml