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http://mainichi.jp/select/world/mideast/news/20081223k0000m030141000c.html
イラク:米軍が政府施設を誤襲撃…地位協定に不信感
イラクの首都バグダッドで17日、イラク政府関連施設が米軍に襲撃され、警備員3人が死亡した。米軍は非公式に「別の標的と取り違えた」と謝罪したが、遺族は「米軍は殺人者だ」と怒りを募らせる。来年1月から発効する米国とイラクの地位協定では、米軍の軍事行動にはイラク側の承認が必要になる。協定が順守されれば、これまでも繰り返されてきた誤認に基づく攻撃や拘束はなくなるはずだ。だが米軍への不信感が強いイラク国民の間には、協定は軽視され今後も同様の事件が続くという危惧(きぐ)が強まっている。【カイロ高橋宗男】
「米国は不公正な暴力を働き、ただ謝罪するだけだ」
18日、バグダッド東部のサドルシティーで、米軍による攻撃で死亡した施設警備サービス(省庁警備のための準警察組織)警備員、アサド・カアビさん(29)の葬儀が始まった。会場で、兄のラヒームさん(42)は毎日新聞助手に、そう怒りをぶちまけた。
攻撃があったのは17日未明。バグダッド中心部アタエフィア地区にある貿易省の小麦保管施設で起きた。遺族によると、いきなり入り口の門が爆破され、踏み込んだ米兵が寝ていた3人を射殺した。
米軍は同日午前、施設関係者に「近くの別の家に踏み込むはずだった」と、誤認攻撃だったことを認め謝罪。遺族に対しても「葬儀に参列したい」と申し出たが、遺族側は「殺人犯は受け入れられない」と拒絶した。
◇国民「米軍が守る保証ない」
「イラクで殺された者からだ」と叫んで、イラク人記者がブッシュ米大統領に靴を投げつけてから3日後の事件。葬儀の参列者からは「攻撃は、靴投げへの報復ではないのか」とのささやきがもれた。
ラヒームさんは「強者が弱者から許可を求めるものか」と吐き捨てるように言った。地位協定に定められたイラク側の承認を得たうえでの軍事攻撃という約束を、米軍が守る保証はないという意味だ。
大部分のイラク国民が米軍早期撤退を望むなか、オバマ次期米政権は、対テロ戦の主戦場をアフガニスタンに移し、イラク撤退を進める方針を明確にした。だがイラク政府には、治安の空白を恐れ早期撤退を望まない声もある。
政府報道官は11日、「さらに10年間の米軍駐留が必要になるかもしれない」と述べ、オディエルノ駐留米軍司令官も13日、「来年6月以降も市街地に残るかもしれない」と、地位協定の内容を否定するかのような発言が相次いだ。
「協定は尊重されないのではないか」。国民に広がる不信感に、今回の事件は拍車をかけている。
◇米イラク地位協定
今年末に期限切れする国連安保理決議に代わり、米軍が合法的にイラクに駐留する法的根拠となる協定。来年1月1日に発効する。米軍は11年末までに完全撤収▽市街地からは来年6月までに撤収▽米軍の軍事行動はイラク側の了承が必要−−などと定めた。イラクのマリキ首相は「国家主権の回復」と強調している。
毎日新聞 2008年12月23日 2時30分