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千葉邦雄のニュースの落とし穴
http://www.chibalab.com/news_otoshiana/
■世界恐慌の原因は日本のゼロ金利の廃止?
3月のベア・スターンズ救済に始まったウォール街の危機は 、9月15日のリーマン・ブラザーズの倒産によって、世界恐慌への序章となる流れが突然やってきた。元ゴールドマン・サックスCEOのポールソン財務長官とバーナンキFRB議長は、さらなる危機の拡大を恐れたのか、根拠を説明しないまま、ファニーメイとフレディマックを救済しただけではなく、さらにAIGをも救済した。ベア・スターンズやゴールドマン・サックスがOKで、なぜリーマンだけがダメなのか?
どうにも不可思議な流れである。2008年7月28日、アメリカ政府の2008年度の財政赤字が4820億ドルになる、と行政管理予算局が発表した。もちろん、これから金融機関を救済していく費用は入っていない。2009年度は、軽く1兆ドルを超えることは間違いない。それでも、今もなおアメリカ国債の格付けは最優良の「トリプルA」(AAA)なのである。ちなみに、他国に一切借金をしていない日本の国債の格付けはといえば、2003年、ムーディーズよってボツワナ並みに引き下げられている。世の中の正義とはそういうものなのだ。
しかし2007年11月、アメリカ会計検査院GAOは、衝撃的な内容を国内向けに発表していた。内容は「累積赤字は53兆ドルを突破。回復の可能性はゼロ」という死亡宣告に近いものである。その発表を受けて、機を見るに敏なジョージ・ソロス氏やウォーレン・バフェット氏等の投資家やヘッジファンドは、すでにドルに見切りをつけていたらしく、ユーロや原油先物市場へと方向転換をはかって、我先にと急カーブを切ってしまっていたのだ。その結果が、史上空前のユーロ高と原油高の流れである。
とはいえ、その前にもっと大きな原因が最初にあるのだ。その最初の原因は日本のゼロ金利の廃止である。日本の金利がゼロからわずかに上がっただけでも、円キャリー・トレードの巻き戻しが世界的に起きてしまうのである。なぜなら日本円を借りて、安全な米国債に投資するだけで、低く見積もっても3%の利益が最低出るのだ。つまり、世界を貪欲なギャンブラーにさせてしまったのは、日本のゼロ金利そのものなのである。もちろん、あくまで日本はそうさせられたのであって、主犯ではない。
■ベア・スターンズのヘッジはなんと168倍だった!
それはさておいて、当然ヘッジファンドはプロだから、こんな単純な投資をするわけではない。彼らは、資金を借りたら必ずレバレッジを利かせる。プロは10倍から100倍のレバレッジを利かせるだろうから、年間3 %セントの金利差なら、30%から300%のあいだで儲けることが可能となるわけだから、円キャリーは止められないわけである。
私が思うに、もし日本がゼロ金利を今でも続けていたなら、2007年夏頃からの住宅ローン危機である。サブプライム問題は間違いなく発生していなかったと思うし、たぶん、投資銀行ベア・スターンズの破綻も、起こっていなかったと思うのだ。
大手投資銀行ベア・スターンズが破綻することで、サブプライム問題からアメリカ帝国の金融危機へと流れが大きく変化してしまう。当然、ニューヨークの株式市場にもパニックが伝染し、その資金の逃避先として、最初は、ユーロ高とコモディティ等の原油先物市場高へと方向転換して行った。
紙に印刷されただけのペーパーであるドル紙幣と株式市場にパニックが走ると、当然の成り行きとして、原油や金等の実物資産高へと、流れが変化しシフトしていったわけである。そして実物資産である原油1バレル=147ドルまで一時高騰させたのである。一方破綻した投資銀行ベア・スターンズは、自己資本8兆円の168倍ものヘッジを賭けることで、莫大な利益を貪ろうとしていたのだ。
この金額は、全世界のGDPの4分の1にも四滴する途方もない額なのである。そして今回破綻に陥った投資銀行のデリバティブの運用の総額は、今のところ約516兆ドルだったとされている。驚くなかれ、これは世界のGDP総額の10倍以上も上回っている。
■気になるポールソン財務長官の動き
ところで今回の金融恐慌の原因ともいえるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という債務保証保険の総額は、およそ6200兆円だと言われている。これらのヘッジファンドが解約されて、円キャリーの巻き戻しが起こった。その内11月までに解約されたのは約11 %程度で、今後2009年に向かって、まだ約40%位は解約されていく流れだと予測されている。
大量のCDSという金融商品が、これからも破綻していくということは、インターバンク間で信用収縮と疑心暗鬼が相変わらず拡大していくわけだから、政府やFRBが、大量のお金を必死になって流し込んでも、先物市場や株式市場からはどんどんお金が吸い上げられて、実体経済は、世界恐慌に向かってより加速していくことになる。いったん始まってしまった世界恐慌の流れは、バーナンキFRB議長や次期オバマ大統領がどんなに力んでみても、大枠ではもはや変わらない。
それより気になるのは、元ゴールドマン・サックス出身のポールソン財務長官の動きである。彼の動きを見ていると、もしかしたら、今回の世界同時多発的な金融恐慌は、ゴールドマンを中心とした金融グループが、世界的な金融恐慌以降の金融再編を、自分に都合のいい流れになるように、911同時多発テロのように、自作自演のやり方で計画されたのではないか、と勘ぐってしまうのだ。
金融関係に詳しい浜田和彦氏も「ゴールドマン・サックスとポールソン財務長官と言えば、江沢民・朱鎔基・胡錦濤ら中国共産党幹部たちと濃密な人間関係を作り、中国の国営企業の上場を独占して来ている。チャイナ・モバイルにはじまり、平安保険、ペトロ・チャイナ、中国銀行等の大型上場案件は、ほぼ例外なくゴールドマン・サックスが主幹事を務め、ニューヨークや香港市場で莫大な利益を上げてきた」と、最近の著書『「大恐慌」以後の世界』で勘ぐるように述べている。ちなみにポールソンだけじゃなく、サマーズもルービンも皆元ゴールドマン・サックスの会長なのだから…。
■世界恐慌以降の「勝ち組」はゴールドマン
ポールソン財務長官の金融の実質的な支配力は、ある意味でアメリカ大統領以上なわけだから、この金融危機を利用して、ヨーロッパや中国を中心としたアジアの金融機関を支配下に入れて、アメリカ一極支配以降の金融支配を、虎視眈々と目論んでいると思われる。私にはそうとしか思えない。
2010年か2009年の終わり頃に、たぶんドルの下落と同時に、対外債務を一気にチャラにするために「新ドル札発行」と「預金封鎖」が行なわれる可能性が高い。アングロサクソンは、基本的には、個性的でやんちゃな性格だから、都合が悪くなると、必ず『ルールの変更』を行なってくるのだ。それも必ず劇的なサプライズを演出して。いまのところ、私のこんな話は誰も信用しないかもしれないけど。
CDSが、先進国と新興国を問わず、大量破壊兵器として金融システムを破壊することで、世界恐慌後の世界で、まちがいなくゴールドマン・サックス等のグループが支配力を強めるのだ。そういったシナリオが予定されているからこそ、日本の低金利が長いあいだ放置され続け、貪欲なカジノ資本主義の象徴ともいえる怪しげなサブプライムローンやCDSが拡大していくのを、ゴールドマン等の勢力は、見て見ぬフリをしてきたにちがいないのだ。
今回起こるべきして起こった金融危機で、一気に莫大な借金をチャラにできるばかりか、世界中のライバルである金融機関等を始末してしまうことが可能となる。そして思いどおりの金融再編に向かって、強力な再スタートをすることができるわけである。そんな流れの中で、世界一の富豪である投資家ウォーレン・バフェットからゴールドマン・サックスに50億ドル引き出すことに成功し、ポールソン氏は、ゴールドマンの市場感覚が優れていることと、ゴールドマンこそが、世界恐慌以降の金融経済の中で、唯一生き残れる「勝ち組」であることを、巧みに演出して見せている。
《主な参考文献および記事》
(本記事をまとめるにあたり、次のような文献および記事を参照しました。ここに、それらを列記して、著者に感謝と敬意を表すると共に、読者の皆様の理解の手助けになることを願います。)
★「大恐慌」以後の世界 浜田和幸 光文社(2008 11月25日)