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バラク・オバマ新大統領【ばらく・おばましんだいとうりょう】
http://www.fe-mail.co.jp/lifestyle/obaka2/81203.cfm
▼おバカ編集部
オバマ氏の大統領就任が決定して、アメリカのみならず世界的にお祝いムードになりましたよね。
▼浜田先生
そうですね。今まさに世界の歴史が「チェンジ」されて、アメリカ国民は彼とともに「Yes,we can」と声を揃えています。
彼の演説の上手さはピカイチで、みんなが引き込まれる雰囲気を作り、その熱狂ぶりはまるでスポーツ観戦のようでした。
イラクの情勢や長引くアフガニスタンとのこう着状態、そこへとどめを刺す形で訪れた金融危機と、8年間続いたブッシュ政権に対するアメリカ国民の不満や不安感は最高潮に達していました。「何とかしてこの状況をチェンジしたい!」と願っていた国民にとって、オバマ氏の存在はまさに理想的だったのです。
彼の人柄については以前、アメリカ大統領選の回でお話しましたが、まだ47歳と若いこと、黒人初の快挙を成し遂げたこと、アジアを始めとする多国籍の文化に理解があることや、ワシントンでの経験の少なさも武器になり、ブッシュとは正反対の政策を打ち出していることなどから、「この人だったら“チェンジ”をもたらしてくれるのではないか」と国民の期待を一身に集めたのです。彼の戦いはこれからが本番になるでしょう。
▼おバカ編集部
今のアメリカ政府の最重要課題は、とにもかくにも国の経済を立て直すことですよね?
▼浜田先生
はい。そのためにオバマ氏は、まず、同じ47歳のティモシー・ガイトナー氏を財務長官に指名しました。彼は史上最年少のNY連銀総裁で、金融に関する交渉ごとを得意とし必ず結果を出せるやり手です。実は、1990年代の後半に日本に住んでいて、日本にあるアメリカ大使館で経済を担当していたことがあるのですが、当時、バブル崩壊後の日本が公的資金を注入したことで金融機関を救ったという、そのプロセスを自分の目で見ていたのです。その日本での経験を踏まえ、若手ながら今この金融危機を解決させる舵取りをしている人物なのですよ。
一方で、そのガイトナー氏をサポートする形で、元財務長官のローレンス・サマーズ氏をホワイトハウスの国家経済会議の委員長に指名、さらに今回、経済回復諮問委員会を新設し、その委員長にかつてFRB議長であったポール・ボルカー氏を指名しました。また、首席補佐官には「若手のホープ」と呼ばれるラーム・エマニュエル氏を指名し、若手の力とベテランの力をうまくMIXしてこの金融危機を乗り越えようとしているのです。
▼おバカ編集部
でも、国務長官にかつてのライバル、ヒラリー・クリントン氏を指名しましたよね?これは何故ですか?
▼浜田先生
はい。選挙中にはお互い批判しあっていた中ですが、今となっては、ヒラリー氏の持つ人気度や、8年間ファーストレディを務めたうえに自身も上院議員2期目であるという経験値が必要なのです。
しかしそこはヒラリー氏もしたたかな人なので、就任するための条件を提示したのですよ。まずは、選挙期間中に自分のことを徹底的に批判したオバマ陣営の幹部を、いっさい国務省の要職につかせないこと。さらに、大使の任命権をすべて自分に与えること。この条件を飲むのであれば、国務長官になってもいいという取引をしたのです。
こうして結局のところ、ホワイトハウスに長く居ついた顔ぶれが揃うこととなり、「チェンジ」をうたう大統領にしては昔と変わらぬ人事に、早くも批判の声もあがっているようです。それでも、オバマ氏は「change(変革)」が無理なら「hope(希望)」、「believe(信じる)」、この3つをキーワードに、どうにか前向きに戦っていこうとしています。
しかし、ヒラリー氏は外交面では日本よりも中国を大切にしていますから、少なくとも日本は手放しで喜べない状況なのですが(汗)。
▼おバカ編集部
そうだったのですか。でも、オバマ氏なら何とかしてくれますよね!
▼浜田先生
いえいえ、そう簡単にはいかないでしょう(苦笑)。実りのある変革が短期間ですぐに出せるとは限りませんからね。
アメリカ人には、車でも家電でも家でも、欲しいものがあったら借金やクレジットカードでポンと気軽に買ってしまうという、長年に渡って身に付いた借金体質があります。そういった価値観やライフスタイルを変えなければ今の厳しい状況を克服できないということを、どれほどの有権者が理解しているでしょうか。一番怖いのは、有権者の多くが、「オバマ氏に任せておけば何とかなる。この金融危機から逃れられる」と思い込んでいることです。1月20日の就任後、少なくとも数ヶ月、半年以内に目に見える改善が実感できないとなれば、逆に有権者たちは多いに失望するでしょう。期待値が異常に高い分、その反動も大きいわけです。こういった状況を見越して、オバマ就任後の1月に、アメリカや世界を揺るがす大きな危機が起こるのではないか、と予測している人もいるのですよ。
▼おバカ編集部
えー!これ以上、新たに危機が訪れるなんて怖いです!
▼浜田先生
そもそも、アメリカの金融危機に陥っている背景には、米ドルに対する信頼の失墜があります。ドルの価値が、戦後半分以下になり、さらにはアメリカの国庫もからっぽの状態になっているのです。そこで自国で物作りをしないアメリカが、いかにして国内経済を回すのかというと、政府が発行した国債を外国に買ってもらうことなのです。つまり、アメリカは国家も借金体質で、赤字国債を発行して日本や中国、中東の産油国に買ってもらって、お金を還流させるしかないのです。
今、ドルを最も多く持っているのは中国で、額にして2兆ドル、それに赤字国債を6000億ドル持っており、日本も1兆ドルと赤字国債を6000億ドル持っています。しかしこのままでは、ドルを持っていてもいずれ紙くず同然になってしまうのではないかと懸念されていて、一部の国ではすでに、アメリカの国債の購入停止、あるいは手放し始めています。これは当然、アメリカにとっては大ピンチですよね。
この状況を打開するために考えられている対策に、アメリカ、カナダ、メキシコに共通通貨「AMERO」を新しく作ろうという動きがあります。同時にこれは、アメリカ合衆国の事実上の消滅と、カナダ、アメリカ、メキシコが一体となった新国家「北米連合国」の誕生を構想するものでもあります。つまり、ドルを廃止しアメロを流通させることで、今まで抱えていた米ドルでの借金をチャラにしようとしているのです。当然、ドル建ての資産もすべてなくなってしまいますから、日本や中国は大損をすることになりますよね。しかしアメリカは、これも「危機的状況だから仕方ない」と訴えているのですよ。
▼おバカ編集部
そもそもは身から出たサビじゃないですか!ますますアメリカへの不信感が募ります。では、今後日本との関係はどうなるのでしょう?
▼浜田先生
そうですね。アメリカ兵の一日も早いイラク撤退を望むアメリカは、「日本にもっとお金を出して欲しい」、「自衛隊をもっと派遣して欲しい」と、日本に本格的な協力を求めてきているのです。もしそれを承諾すれば日米関係は今まで以上に友好的になるけれど、もし断ったら、「日米関係にも“チェンジ”が必要だ」と言っているのですよ。日ごろ日本よりも中国の方が大事だと言っておきながら、こうして都合のいい時だけ、お人よしな日本にすがりついているのですよ(汗)。
それに、幼い頃から苦労してきたオバマ氏と、お坊ちゃん育ちの麻生総理が仲良くやっていけるかも、正直なところ微妙でしょうね。
▼おバカ編集部
どこまで自分勝手なのですか、アメリカは!そこまでして、日本がアメリカと仲良くしておくメリットはあるのですか?
▼浜田先生
皮肉な事に、アメリカは3億人の人口をかかえる巨大マーケットで、日本も自動車など多くの物をアメリカに買ってもらっています。今、アメリカ経済が狂い日本製の車が売れなくなり、「トヨタショック」を引き起こしました。アメリカはこの巨大なマーケットを武器にしていて、「もし日本がアフガニスタンの支援をやめるのであれば、日本製の輸入品を売れないようにする」ということを、今までもしばしばやってきているのですよ。
アメリカ式の経済に塗り替えられてしまった日本が、アメリカに振り回されないしっかりとした国になることを期待したいものですね。
取材・文/皆川夕美