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ドナルド・トランプ氏のCNNインタビューの抜粋です。
本インタビューは2007年に過去記事で既出でしたが、今回の氏の「ブッシュ大統領は弾劾されるべきだった」記事に対する、私の私見「Re:大富豪であり米国人トランプ氏の限界」の補足として過去記事URLを紹介させて頂きます。
投稿場所を迷いましたが。。。とりあえずここであしからず。
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ドナルド・トランプ、ブッシュ政権を酷評 2007/03/18
http://www.asyura2.com/07/war90/msg/158.html
「まあ、私が思うに、ブッシュは合衆国史上最悪の大統領だね。」
CNNの報道番組「The Situation Room」で、ウルフ・ブリッツア(ブッシュ支持派で知ら
れるニュースアンカー)のインタビューに応じた不動産王ドナルド・トランプ氏が、ブッシュ政権を痛烈に批判している。(ビデオ)・・・・・・
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コメント:
●CNNインタビューから見えるもの
このインタビューのトランプ氏の発言は、罪悪感の無さ、悲劇も厭わず利用するあくなき欲望、他人事目線、自己中心性を見事に露呈している。その意味では支配者層の思考
が、大衆寄りポーズを見せるとき、どのような論調になるかを示してくれた好例と言える。
以下はトランプ氏発言の、そのくだりである。
引用文中( )内は筆者補足
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(引用はじめ)
「ラムズフェルドは大失敗。大統領に助言を与える立場の人たちは皆大失敗だな。」
「副大統領は、戦争が素晴らしくうまくいっているとつい数ヶ月前にも言ってる。ひどいもんだ。彼らが悪人かどうかわからないが、」
「911テロの直後、(疑惑911事件を利用して)我が国は史上初めて地球上で人気を獲得できる機会があったのに、台無しになった。」
「歴史上初めて、この国で起きたこと(疑惑911事件)に世界が共感してくれたのに、我々はそれを台無しにしてしまったんだ。」
「抜け出す方法?抜け出せばいいんだ。それだけのことだ。勝利を宣言して撤退することだ。」
「イラクでは内戦が起きているんだよ。内戦状態に対して私達ができることなど何もない。」
「内戦の途中で何もできることなど・・・ちょっとの間、目を背けるしかない。撤退する頃には、さらに拡大するだろう。」
「イラクから帰還した兵士達を招待しているんだ。私の知りうる限り最高の素晴らしい人たちだが、腕や足を失くしてるんだよ。奥さんを連れたり、恋人を連れたりしてるが、みんなの顔から涙がこぼれるんだ。」
「つまりだね・・・数千人、もしかしたら数十万人ものイラク人も、手足を失くしたり殺されているかもしれない。」
「私の勘定では、すでに40万人ほど死んで、おそらく数百万人が手足を失くしたり障害を負っているんだ。一体どうなっている?どうなってしまった?」
(引用終わり)
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トランプ氏は確かにブッシュを酷評している。私もそのことに異論はない。ただしインタビューの2007年3月時点、すでにイラク戦争の犯罪性が露呈し世界の非難にあっていたことを考えれば、氏のイラク戦争に対する認識は問題にされなければならない。なぜなら氏のような著名人の発言は、その分社会的影響力が大きいからである。
氏については、エネルギッシュな半面堅実な人生哲学を持つ不動産王であり、自己顕示欲が強く、意見を異にする相手を誹謗中傷を厭わないと言われていること、「ブッシュは好きだが、その政策には反対だ」と思っていたらしいこと、私の知る限り氏の表だったブッシュ批判は2007年頃からではないかということ、最近(2008年9月)、それまで支持していた民主党タカ派ヒラリー・クリントンから、共和党戦争屋後継人ジョン・マケインに鞍替したという程度しか私は知らない。しかしおおよその人物像は想像できる。その点と合わせて、CNNのインタビューから滲み出る気分を平たく置き換えれば、以下とたいして変わらない。
『折角の大疑惑9・11事件を利用して、まんまとやろうとしたイラク侵略は残念ながらしくじった。副大統領以下の政権中枢を担うネオコン連中が悪人かどうか俺はしらんが、あいつらがドジを踏んでこうなったのだ。そのせいで世界中の称賛のもと今一歩で世界を牛耳れるとこだったのに、俺達米国人は逆にとんでもない目に遭わされた。そのドジの全責任は親分のブッシュにあるのは当たり前だ。
いいか、よく見てみろ。我々の兵士たちは、こんなにひどくやられて可愛そうじゃないか。どれもこれも、あいつらがドジを踏んだせいだ。
俺はイラクの惨状などろくに見てないからよく知らんが、もしかしたらイラク人だってそうかもしれん。
だいたいからして、だれがそんな風にしたのか知らんが、もう手の施しようもない内戦中のイラクなんかにいつまでも居るやつはバカだ。成功の目論見も外れ、居るだけ損なことくらい政府のやつらはわからんのか。
今回はしくじってしまったが、今俺達に最善なのは、国民には我々は勝ったと思わせておいて(国民が騒ぎ出し支配の統制が崩壊しないうちに)、そんなヤバイとこからはさっさと逃げ出すことだ。あとはイラク人同士で勝手にやらせておけばいいんだ。ほとぼりが冷めるまでイラクの惨状など知らぬ振りしてるのが一番だ。
・・・今度侵略するときはもっとうまくやれ、ダメ権力者ども・・・』
●イラク戦争の理不尽
トランプ氏の発言がダメのは、世界中からイラク戦争が非難されている、真の理由を真正面から見据えてないからだ。
ウソに基づき他国を一方的に侵略し、隠れた敵の掃討の大儀のもと、無抵抗の女子供はじめとし罪なき人々を大量に殺している犯罪戦争であることがそれだ。トランプ氏発言のダメさを指摘する上で、少し長くなるがイラクの実状の一部を述べておきたい。
米国は、最大手のブラック・ウォーターなど180にも上る、警備を専門に請け負う民間会社をイラクに送り込んだ。その実態は、米特殊部隊退役軍人やチリやコロンビアの兵役経験者を雇った外人部隊混成の傭兵集団であり、その数は10万人以上とも言われ
るが、米政府発表では4万8000人である。米正規軍のなんと7割あるいは3割に相当する一大民兵組織である。イラクやアフガン側の武装勢力を非難出来る立場か?
これらの傭兵は軍隊と同じかそれ以上の装備を施し、装備不足で防弾チョッキを米国の家族に買い送り(米国では武装備品をネット販売している)してもらっている始末の米兵たちが、うらやましがるほどだという。警備会社どころかこれでは非合法軍隊である。民間軍事請負会社は、占領軍を守るなど事実上の軍隊として暴れ回っているのだ。
2004年4月にナジャフで占領軍本部の海兵隊などの護衛に当たっていたブラック・ウォーターは、抗議群衆に対して正規軍の米兵に発砲を許可するという、こともあろうに指揮系統も無視したデタラメなことを行っている。戦闘現場にいた海兵隊員によればこの発砲で数百人が死亡したという。一方米政府の発表では2,30人の死亡としている。
また2007年9月バクダットでは、イラク民間人17人が交差点で、ブラックウォーターの傭兵たち無惨に撃ち殺された。現場に居合わせた交通整理中の警官や目撃者の証言によれば、被害者は敵対行動はとっていなく一方的な銃撃だったという。これに対してブラック・ウォーター側は、発砲など敵対行動されたので応戦したまでだとしているが、捜査にあたったFBIやイラク政府は、敵対行動は認められなかったとしてブラック・ウォータ側の主張を退けている。イラク政府は「ブラック・ウォーターによる意図的殺人」と断定する調査結果を出し、同社のイラク内での活動を禁止する声明を出したが、米政府は何も問題ないとして同社との契約を続けていた。
彼等は民間人を虐殺しようが軍事、刑事いずれも罪を問われない。この民間軍事請負会社は米軍やイラク政府の指揮下にはなく、そのためイラク国内法でも裁けず、米国の民間法廷や軍法会議でも訴追を受けない。警備に名を借りた野放しの殺人集団だ。しかもこれらの傭兵たちは、一説によれば月3万ドル(約300万円)も稼ぐ者がいて、米兵などは足下にも及ばないという。国防長官や米軍司令官をも上回る高給を得る者もいる。積み上げ請求によって米国政府から莫大な税金を引き出している。
戦争まで一大民営化して食い物にしている。まさにハゲタカファンドの戦争版ではないか。
彼等の傍若無人な行動には、さすが米占領軍司令官も業を煮やし、民間軍事請負会社が起こした隠された犯罪を捜査したところ2ヶ月間で6件もあったという。その後の米議会報告では、民間軍事請負会社の同様の発砲事件は2007年時点で195件を数えるという。
イラクでは米国の承認のもと、これら正規軍でない手下の傭兵集団達が、軍事行動や人殺しを堂々と行っている。そしてその犯罪は誰からも裁かれず、米議会ではこのならず者殺人集団を規制する動きもあるが、ブッシュ政権はこれに難色を示し、野放しかつ擁護している状態だ。
上の事実はイラク戦争の実態のほんの一例にすぎない。アブグレイブ刑務所のイラク人捕虜虐待、イラク法廷人事に関する米国の干渉、フセインに同情的な裁判長の2度に渡る更迭、警護を緩めたことによるフセイン側弁護士3人の暗殺などで幕引きしたフセイン裁判の茶番、残虐兵器白燐弾の使用などなど、米国の戦争犯罪・非人道的所業は数え上げれば切りがない。正当な大儀を失った戦争にも係わらずである。
●トランプ発言の危うさ
今日、米国のイラク政策に対する非難は、世界の共通認識になっている。各国はブッシュ政権と距離を置くようになってきた。米国の盟友である英国、豪州でさえべってり付き合っていられないという態度になってきた。最近に至ってはイタリア、ドイツ、ロシアなどの元首や国防関係の元閣僚クラスからも、アフガンからイラクに至る戦争の口実となった9・11事件は、米国の内部工作だとする発言やその可能性を指摘する声が次々飛び出すような状況だ。9・11事件やブッシュ政権を追及する、議会や抗議活動も世界に広がっている。
そうしたうねりを、おぼろ気ながら受け止める人々は、トランプ氏の発言を聞いてどう思うか?御用マスコミを使ったブッシュ政権のブロバガンダに疑念も持たず煽動され、9・11事件からアフガン・イラク侵略へと盲進し、戦争大儀のウソが発覚した今でも騙され続け、現実を直視できないでいる人々はいったいどう思うか?
「かの著名人でさえブッシュ弾劾を声高に叫びだしたぞ」と我が意を得たりと言う一点で、発言内容を丸飲みしてしまうことはないのか? 著名人発言=優れた発言、だと短絡的に受け止めはしないか?
希釈されたイラク戦争の、氏のような発言を鵜呑みにすれば、「次ぎこそは自国民を悲惨に追いやらず、うまく侵略しそう」な権力者や経済支配層を脳天気に担ぎ上げ、そのような者達に再び操られかねはしないか?
民衆はそんなバカでない言うかも知れない。しかし、日常生活の様々な場面を見たらそんなことを自信を持って言えるか?
その積み重ねがいまの腐った状況を、野放しにしてしまった原因のひとつではないのか。
核や残虐な兵器が溢れ一瞬にして世界の破滅を招きかねない今日は、のらりくらり切り抜けられたかつての微温湯時代とは違う。不幸はあっという間に我が身に降りかかってくる。それゆえ社会的影響力ある者の発言は、その中身を幅広い情報に照らして厳しくチェックされねばならない。
私はトランプ氏のブッシュ糾弾そのものは妥当と思う。だがその理由である氏のイラク戦争に対する認識は、支配者層にしばしば見られる無責任かつ危険なものであり完全に的外れである。
私は人に聖人君子や完璧は求めてはいない。誰でも間違いや欠点はあるしそれが人間だ。しかし、ブッシュ弾劾決議案が、民主党リーダーのステニー・ホイヤー院内総務と下院議長寝返りペロシの裏切りにより、下院司法小委員会送りで棚上げされ、ブッシュの任期も残りわずかで弾劾の見込みも怪しいという今、そして、イラクやアフガンのひどさは少し見聞きすればわかる今、トランプ氏の発言は軽薄のそしりを免れない。
今回のトランプ氏の「ブッシュ大統領は弾劾されるべきだった」 発言の正しい受けとめ方を私に言わせればは、
「今更なんだ?そして人を惑わすな」である。
Takeru