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http://mainichi.jp/select/world/news/20081018ddm007030037000c.html
タリバン・ショック:第2部・アフガニスタンの現実/1(その1) 偽情報に踊る米軍
武力によるアルカイダ、タリバン掃討が泥沼化し、アフガニスタン政府はタリバンとの和解を本格的に模索し始めた。米軍主導の「対テロ戦」が大きな転換期を迎えつつあるアフガンで、今何が起きているのか。現地から報告する。【ナワバード村(アフガン西部ヘラート州)で栗田慎一】
◇傷つく「対テロ戦争」 今年8月、住民90人誤爆死
昨年夏、アフガニスタン西部ヘラート州で起きた1件の殺人事件。同国ではありふれた氏族間の対立が原因のこの事件が、1年後、同州ナワバード村を米軍が空爆し、一般住民90人が死亡する「誤爆事件」につながった。
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関係者によると1年前に射殺されたのは、ナワバード村の有力一族の男性。長年、一族と対立し続けてきた隣村の男が殺害に関与したとされ、この男は近くの米軍基地での土木工事などの仕事を失った。その代わりに、被害者側のナワバード村の有力者が、基地での仕事を得た。
最近、隣村の一族の男が、米軍への「情報提供者」になった。路上の仕掛け爆弾の位置を正確に報告し、米軍の信頼を得たという。そして「ナワバード村に武装勢力タリバンの司令官が潜伏している」と報告した。
これを受けて米軍は8月21日夕、アフガン政府軍に米地上部隊の後方支援を要請。22日午前1時半、有力者宅で銃撃戦が始まり、ほどなく米軍機による空爆も開始された。
有力者は遺体で発見され、情報を提供した男の行方は知れない。「タリバン司令官潜伏」との情報の真偽も不明だが、米軍は、仕事を失ったことを逆恨みし、敵対するナワバード村の一族を攻撃させようとした隣村の男の偽情報を信じ込み、有力者の自宅をタリバンの拠点と誤認して攻撃した可能性が極めて強い。
米軍は事件について、空爆で約30人の武装勢力を殺害、5人を拘束したと発表した。アフガン政府は犠牲者のうち60人は子供だとして「空爆は誤爆だった」と批判。10月に入り米軍は、空爆で一般住民33人が死亡したことを認めたが、武装勢力の拠点を攻撃したとの立場を変えていない。
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アフガン政府軍幹部によると、米軍は各地で地元住民を情報提供者として使い、敵対するタリバンの情報を集める。だがヘラート州の警察幹部は「米軍は地域の複雑な対立関係を知らない」と指摘。氏族間の争いが絶えないアフガンで、ナワバード村同様の誤認はいつでも起こりうる。
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」によると、米軍などの空爆による民間人の死者は、06年116人▽07年321人▽08年7月までに119人に上る。カルザイ・アフガン大統領は9月、ニューヨークでの国連総会での演説で「市民の犠牲が増えることで、テロとの戦いの正当性に傷が付く」と厳しく批判した。
誤爆事件は、米軍が正確な情報も得られないまま、住民を巻き込む恐れのある激しい攻撃をする、「対テロ戦」の危うい現状を浮き彫りにする。=つづく
毎日新聞 2008年10月18日 東京朝刊