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http://mainichi.jp/select/world/news/20081018ddm007030048000c.html
タリバン・ショック：第２部・アフガニスタンの現実／１（その２止）急増する空爆難民
◇１万人、都市部漂流 捨てた村、タリバンの手に
アフガニスタンの首都カブール北西部チャライカムバール。約２キロ四方に粗末なテント群がひしめく。１年ほど前から自然発生的にテントが並び始め、今では約１０００家族、１万人が暮らしている。イスラム武装組織「タリバン」の拠点となり、米軍や北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）軍の攻撃が続く南部カンダハル州やヘルマンド州からやってきた「空爆避難民」たちのキャンプだ。
「半年前に自宅が空爆され、家にいた妻と１歳の息子が死んだ」。ヘルマンド州サンギン地区から避難してきたというサドーさん（５８）は、Ａ４判の紙を手に涙を流した。紙には被害の状況が記されている。下部にあるサインは、地元有力者や宗教指導者らが内容が正しいことを「証明」したものだ。「カブール（中央政府）は、（タリバンが多い）南部から来た私たちのことを信じない」と嘆く。
テントからどんどん人が出てきて、手に手に紙を掲げる。３時間かけて一人一人話を聞くうち、彼らが「空爆をタリバンが巧みに誘導して支配域を広げている」「米軍はうその情報を信用して攻撃する」と主張していることがわかった。
半年前にサンギン地区で起きた米軍の空爆。村外から四輪駆動車で来たタリバンのメンバーが、アフガン軍の車列を攻撃した。その３０分後に米軍のヘリが飛来して、空爆を始めた。しかし、ヘリが到着したのはタリバンが逃走した後。空爆された村はほぼ全滅し、生き残った人々はタリバンに参加したり、都市部に避難民として流出する。そうして米軍が壊滅させた村にタリバンが進出し、支配地域の拡大に利用しているというのだ。
南部は治安が極度に悪化しており、現場で事実関係を調べる手立てはない。しかし、キャンプ住民が意図的に口をそろえてうそをつく理由も見当たらない。
避難民キャンプと言っても、国連などの支援は入っていない。「空爆避難民」という新ジャンルに支援する側の態勢作りが間に合っていないためだ。１年前に妻と妹をカンダハル州であった空爆で亡くしたワリージョンさん（３０）は「政府が一度、食用油や小麦粉を配給したが、それだけだ」とやせ細った肩を落とした。
生活苦が住民たちを犯罪に駆り立てる。キャンプ付近の住民は「治安が悪くなった」と撤去を求める。避難民は毎日のように増え続ける。政府幹部は「支援したいが資金がない」と嘆く。【カブールで栗田慎一】
◆アフガン麻薬対策相に聞く
◇ケシ農家から徴税タリバン資金源に
世界の９割以上の麻薬の生産地といわれるアフガニスタンで、北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）軍主導の国際治安支援部隊（ＩＳＡＦ）による、空からの麻薬撲滅作戦が始まる。アフガンの旧支配勢力タリバンや、国際テロ組織アルカイダのテロ活動の資金源と指摘される麻薬ビジネス。アフガンのフダエダト麻薬対策相に対策と展望を聞いた。【カブールで栗田慎一】
−−麻薬ビジネスで生み出される利益は。
年推定４０億ドル（約４０４０億円）だ。これはアフガン国内分だけで、国境を越えた後の取引は含まない。少なくとも国内で稼ぎ出される半分がタリバンへ流れているはずだ。
−−根拠は。
タリバンは、ケシ栽培の農民に、栽培を認めるかわりに「徴税」などを行っている。さらにタリバン支配の強いパキスタンやイランとの国境地域は（麻薬密輸で）タリバンが事実上の関税をかけている。これらを調べた結果、タリバンの収入額を算定した。武器や地雷、自爆装置などの購入に充てられている。
−−麻薬ビジネスをどう撲滅しますか。
国民に国づくりのために、麻薬を認めない憲法の順守を呼びかけるしかない。政府関係者の汚職もビジネス拡大の背景にある。ただ、同時に国際的な犯罪組織も取り締まらなければならない。イランとパキスタンとは、水際での取り締まり作戦の実行で、協力協定を結んだばかりだ。
−−ＩＳＡＦには、何を期待しますか。
我々はこれまで１８州で撲滅に成功し、約１５００人を逮捕した。だがヘルマンドやカンダハルなど南部５州は難航している。警官への麻薬取り締まりの特殊訓練が始まったが、態勢が整うには長い時間がかかる。ＩＳＡＦの空からの支援は、警察の人員と能力不足を十分補うはずだ。
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◇アフガンでの主な誤爆事件
（外国軍側が誤爆を否定しているものも含む）
０１年１２月 パクティア州 １０７人死亡
０２年 ７月 ウルズガン州 結婚披露宴、４８人死亡
０３年 ２月 ヘルマンド州 女性・子供ら１７人死亡
４月 パクティカ州 民家、女性・子供ら１１人死亡
１０月 ヌリスタン州 住民８人死亡
１１月 パクティカ州 住民６人死亡
１２月 ガズニ州 子供９人死亡
０４年 ５月 ホスト州 住民３人死亡
０７年 ３月 カピサ州 民家、９人死亡
６月 ヘルマンド州 民家、２５人死亡
０８年 ７月 ナンガルハル州 結婚式車列、女性・子供３９人など４７人死亡
８月 ヘラート州 子供・女性ら９０人死亡
毎日新聞 2008年10月18日 東京朝刊
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