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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080905-00000009-mai-int
【ニューデリー栗田慎一】アフガニスタン東部で非政府組織「ペシャワール会」メンバーの伊藤和也さん(31)が拉致、殺害された事件で、アフガン国家保安局(NDS)は、「パキスタン軍情報機関(ISI)が事件の黒幕だ」と発表した。だがこれまでもNDSは、国内のテロ事件の責任を明確な根拠を示さないままパキスタンに負わせる言動が目立ち、事件はパキスタンの責任だと世界に印象付けたい思惑も垣間見える。伊藤さん殺害事件の真相はアフガンとパキスタンの確執に巻き込まれ、解明されないまま終わる可能性も出ている。
NDSは3日、事件で拘束されたアーディル・シャー容疑者(25)が、「ISIから報酬支払いを条件に拉致を依頼された」と供述したと発表した。ただ直接依頼を受けたのは逃走中の共犯者で、その人物がシャー容疑者に拉致話を持ちかけたという。
シャー容疑者は伊藤さんが拉致された8月26日、拉致現場付近に潜んでいるところを拘束された。地元ナンガルハル州警察のパチャ本部長は29日、毎日新聞に対し同容疑者が、「パキスタン北西部のペシャワルで(反政府武装勢力の)タリバンから拉致を命じられた」と供述していると語った。
NDSは州警察の調べが終了した30日から、シャー容疑者の取り調べに着手したとされる。州警察は同容疑者の国籍について「アフガニスタン難民」としたが、NDSは「パキスタン市民」、容疑者の動機についても「復興支援の中止」(州警察)、「金銭目的」(NDS)とするなど、両者の食い違いが目立っている。
NDSは4月のカルザイ大統領暗殺未遂事件や、7月にインド大使館付近で起きた自爆テロについても「ISIの犯行」とした。真相は不明だが、「カルザイ政権はカブールすら統治できていない」との批判が国際社会で高まる中、治安悪化の責任をパキスタンに転嫁するために、ISI関与を強く主張している面が否めない。
パキスタン軍幹部は4日、NDSの発表について「アフガンの現実逃避だ」と否定。ナンガルハル州警察幹部は「(NDSの発表内容には)我々の知らない部分があるが、コメントは控えたい」と口を閉ざした。
【ことば】▽ISIとNDS▽ パキスタン軍情報機関(ISI)はアフガンの武装勢力タリバン発足に深くかかわり、その後もタリバン政権を強く支援してきた。一方、01年のタリバン政権崩壊後に発足したアフガン国家保安局(NDS)は、タリバンと戦った「北部同盟」の故マスード司令官の側近が幹部を占め、ISIやパキスタンへの敵対心が特に強いとされる。