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2008/08/18 【RPE】グルジア戦争、各国が得たもの・失ったもの
↓
http://www.mag2.com/m/0000012950.html
★グルジア戦争、各国が得たもの・失ったもの
全世界のRPE読者の皆さまこんにちは!
いつもありがとうございます。
北野です。
グルジアのサアカシビリ大統領は15日、ロシアのメドベージェフ
大統領は16日、それぞれ停戦合意文書に署名しました。
これで両国の紛争は、ひと段落したことになります。
今回は、この戦争に関わった国々が何をえて、何を失ったのか
を考えてみましょう。
(新規購読者の皆さまは、必ず前号をお読みください。
でないと、わけがわからなくなります。
前号 【RPE】米・グルジアVSロシア・南オセチア戦争
はこちら↓
http://archive.mag2.com/0000012950/20080810152808000.html
)
▼基本をおさらいしよう
まず基本を確認しておきます。
1、カフカスの国グルジアは、元々ソ連の一部でした
2、グルジアは、他の旧ソ連15共和国同様、ソ連崩壊時のど
さくさにまぎれて独立を果たしました
3、南オセチアは、国際法的にはグルジアの一部。
南オセチア自治州という位置づけ。
しかし、すんでいる人々はオセチア人で、グルジア人とは違う
民族です。
4、南オセチアは1990年4月、主権宣言。
つまり、この自治州もソ連の混乱に乗じて独立しようと考えた。
5、1991年1月、グルジアと南オセチアの紛争が勃発
6、1992年1月、南オセチアで、「独立」に関する住民投票が実
施され、92%が独立を支持。
7、1992年6月、ロシアの調停により停戦合意
8、同年7月より、ロシアの平和維持部隊が駐留する
つまり、南オセチアは1992年以降16年間、実質独立状態にあ
った。
しかし、グルジアも国際社会も南オセチアの独立を承認してい
ない。
それで、「国際法的にはいまだグルジアの自治州」という位置
づけなのでした。
これが、今回の戦争以前の状況。
で、何が起こったのか?
1、08年2月、セルビアのコソボ自治州が一方的に独立を宣言。
欧米諸国は、セルビアの意向を無視して、独立を承認する。
南オセチアの立場は、コソボ自治州とまったく同じ。
「コソボが独立できるのなら、俺らも独立できるだろう!」
となった。
そして。。。
2、南オセチアは、国連および独立国家共同体(CIS)に「独立
承認を求める」活動を開始する
3、南オセチア独立の動きを座視できないグルジアは8月7日、
南オセチアの首都ツヒンバリに進攻
ロシア平和維持軍にも攻撃をしかける
4、ロシアは反撃を開始し、戦争勃発
ここまでが前号でした。
で、その後どうなったか?
8月12日、フランスのサルコジさんが、6項目の和平案をたずさ
えてモスクワにやってきます。
彼はその後、グルジアにも飛びました。
グルジアのサアカシビリさんは15日、停戦合意文書に署名。
ロシアのメドベージェフさんも16日、署名。
これでメデタシメデタシとなったのです。
その内容は?
(1)武力不行使
(2)戦闘全面停止
(3)人道支援の保障
(4)グルジア軍の常駐地点への撤退
(5)ロシア軍の戦闘開始前の地点への撤退。
国際メカニズムの導入までは、ロシア平和維持軍が追加的な安全
措置を履行
(6)アブハジア自治共和国、南オセチア自治州の安全と安定に関
する国際協議の開始
▼アメリカが得たもの
RPEでは戦争開始直後から、「グルジアの背後にはアメリカがい
る」と書いてきました。
<グルジアの現大統領サアカシビリは、アメリカの傀儡である。
よってアメリカ政府の命令・あるいは許可なしで、軍事行動を起こす
ことはありえない。
つまり、グルジアと南オセチアの戦争は、アメリカの命令か許可の
もとに行われている。>
(【RPE】米・グルジアVSロシア・南オセチア戦争 08年8月10日号)
グルジアのサアカシビリがアメリカ政府の支援によりバラ革命を起
こすまでの詳細は、
「中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日-一極主義vs多極主義」)
(詳細は→ http://tinyurl.com/yro8r7 )
を参考にしてください。(うざったいほどの証拠つきです)
そして、ロシアのラブロフ外相も。。。
↓
<米がグルジア軍の進攻許す=ロ外相が痛烈批判
8月14日7時0分配信 時事通信
【モスクワ13日時事】ロシアのラブロフ外相は13日、米国がグルジ
ア軍の南オセチア自治州進攻を結果的に許したと批判した。
インタファクス通信によると、同外相はグルジア軍の進攻をめぐり、
「われわれは事前に危険なゲームが企てられていると警告した。米
側はそれを許さないと約束した」と指摘。
さらに「グルジアの冒険主義に米国の軍事支援が利用された可能
性がある」とも述べ、米国に責任があるとの見方を示した。>
そしてここ数日、日本のテレビでもようやく
「米ロ新冷戦」
という言葉が多用されるようになってきました。
RPEから遅れること、実に5年であります。。。
さて、今回グルジアは、ブッシュ政権の支持により南オセチアを攻め
た。
でなければ、グルジアのような小国が大国ロシアに戦いを挑むはず
がありません。(自殺行為)
で、アメリカは何を得たのでしょうか?
1、「ロシアは悪の帝国」という洗脳に成功した(国内)
戦争の期間、グルジアのサアカシビリ大統領は、何度も何度もCN
Nなどに登場し
「ロシアがグルジアを侵略した!」
と主張しつづけてきました。
グルジアが先制攻撃したことは、一切だまっています。
そして、アメリカのテレビ局も、グルジアが先に攻めたことをだまって
います。
今回私は、世界中のニュースを見ながらグルジア戦争をどう報道す
るか観察してきました。
アメリカでは非常に露骨な洗脳が行われています。
例えば、BBCで
「南オセチアの民兵5〜6人が、グルジア人男性を腹ばいにさせ、
脅している」
映像が流れていました。
男性を取り囲んでいる人々の服装はバラバラ。
どうみても、民兵だろうと。
それがCNNを見ると、同じ映像が
「グルジア人男性に暴行を加えるロシア兵」
と報道されていました。
まあ、一般人はわかんないですからね。
ところで、洗脳工作はどの程度成功しているのでしょうか?
結論をいうと、うまくいっているのはアメリカ・イギリス・日本だけ
でしょう。
日本でも、テレビは「ロシアがグルジアを侵略した」と憤っていま
すが、新聞は客観的に報道しているようです。
フランスやドイツのニュースを見ても、「グルジアが先に攻めて、
ロシアが報復した」ときちんと伝えられています。
欧州が憤っているのは、ロシアが停戦合意後もグルジア領内に
とどまっていること。
しかし彼らは、「グルジアが先にしかけた」ことをしっかり認識し
ています。
ようするに、洗脳は世界的にうまくいっていない。
それでもいいのですよ。
アメリカ国内だけでいいのです。
なぜか?
(1)ブッシュとネオコン政策の正しさが証明(?)された
ブッシュは今まで、反独裁、世界民主化政策を推進してきました。
しかし、そこには多くの欺瞞があった。
最大のウソは、「大量破壊兵器がある」「アルカイダを支援して
いる」とし、イラクを攻撃したこと。
そして、民間人100万人を殺したこと。
この失敗で、ブッシュの支持率はグングン下がった。
しかし、最後の最後でグルジア戦争が起こり、
「ほらね。世界は実は危険なのよ。あなた方はバカだから知らな
かったかもしれないけど、ロシアやイランのような独裁国家はホ
ントに危険でしょ?
ブッシュは、こういう敵と必死で戦ってきたのよ」
となる。
(2)マケインさんに追い風
ブッシュ後、ネオコン政策を推進するのに都合がいいのは、オ
バマさんではなくマケインさん。
で、マケインさんはロシアが大嫌いなのです。
常々「ロシアをG8からはずせ!」と主張してきた唯一の有力政
治家。
今回の戦争で、マケインさんには「先見の明があった!」という
ことになるでしょう。
理想主義者のオバマより、戦争の英雄マケインだ!と。
勝利につながるかどうかは別として、今回の事件がマケインに
追い風になることは事実です。
2、ポーランドにMDを配備
アメリカはポーランドにMDを配備しようとしていたのですが、交
渉は難航していました。
理由は、ポーランドがアメリカに大金を要求していたこと。
ところが、グルジア戦争がはじまった。
かつてソ連(ロシア)の(実質)植民地だったポーランドは、ロシア
をとてもおそれています。
グルジア戦争で危機感をもったポーランドは、心を入れ替えMD
導入を決断したのです。
↓
<グルジア紛争が米ポーランドのMD合意後押し
8月16日21時0分配信 産経新聞
難航していた米国のミサイル防衛(MD)の施設配備をめぐる同
国とポーランドとの交渉が14日に急転、合意に至った背景に、
グルジア紛争でロシア発の脅威が一気に増大したことがあるとの
見方が、米メディアで相次ぎ報じられている。>
それにしても、「グルジア戦争でロシアの脅威が増したから、MD
配備に合意した」???
アメリカは、「このMDは対イランだ!」と説明してましたよねえ?
~~~~~~~~~
対イランMDなら、配備してもロシアの脅威は減らないはずですが。。。
ここでもアメリカの大ウソが明らかになっています。
▼後半へ
=================================================================
★今度は中国幕府の天領か?
「・・・僕がうまれたのは、中華人民共和国
小日本省です。。。」
~~~~~~~~~~~~
アメリカ幕府の衰退により、強制自立を迫られる日本。
はたして、自立できるのか?
北野が「日本自立」への秘策の数々をまとめました。
こうご期待!
「いつでるのですか?」
CKOPO!
=================================================================
▼後半
▼ロシアが得たもの
今回グルジアが攻撃してきたとき、メドベージェフさんは休暇中。
プーチンさんは、オリンピックの開会式に出るため北京にいた。
そんな都合が悪いとき、グルジアが攻めてきたのです。
これについてサアカシビリさんは、
「ロシアは、世界の目がオリンピックに集中しているときを狙って、
グルジアへの侵略を開始した」
などといっています。
しかし、信じているのは、洗脳されている米英の国民だけ。
結果的にロシアは、いろいろなものを得ることができました。
1、南オセチアを実質支配下に
グルジアは南オセチアに進攻し、2〜3日間で1600〜2000人の
民間人を殺したと報じられています。
南オセチアの人心は完全にグルジアから離れ、憎しみばかりが
残った。
このことについて。
毎日新聞の杉尾さんが、南オセチアの首都ツヒンバリを実際に
見てきました。
杉尾さんには私も何度かお会いしたことがありますが、プロパガ
ンダに踊らされず客観報道に徹する、
超一流の記者といえるでしょう。
~~~~~~~~~~~~~~~
↓
<グルジア 南オセチア州都破壊 住民「露軍は解放者」
8月14日15時12分配信 毎日新聞
【ツヒンバリ(グルジア南オセチア自治州)杉尾直哉】ロシア、
グルジア両軍が激しく交戦したグルジア南オセチア自治州の州
都ツヒンバリに13日入った。
欧州連合(EU)の和平案にグルジア、ロシア双方が合意する中、
グルジア軍の攻撃にさらされた住民らは街中を行き交うロシア
軍装甲車に手を振り、グルジア軍を追い出した「解放軍」として歓
迎していた。>
う〜む。
グルジア軍を追い出したロシア軍は「解放軍」だそうです。
< 露国防省の外国人記者向け現地視察に英BBCなど9社の
特派員15人と参加。
日本からは毎日新聞だけだった。
ツヒンバリはロシア軍が完全に掌握。戦車の砲撃で破壊されたロ
シア軍平和維持部隊の駐屯地やロケット弾の猛攻を受けた住宅
密集地、ロシア軍の歓迎ムードなど、欧米メディアが伝えきれな
い現実の一端が見られた。>(同上)
う〜む。
ロシア軍の歓迎ムード。
たしかに欧米メディアは伝えていませんね。
< 「ロシア軍が助けてくれた」
−−。砲撃の衝撃で自宅アパートの一部を破壊された女性、フェ
ーニャ・ジャビエワさん(60)はそう語った。
男性のユーラさん(70)も「ロシア人が来てくれて本当にうれしい。
そうでなかったら街は消滅していた」と話した。>(同上)
どうですか?
皆さんが普段得ている情報は、全部ロンドン・NY経由で入ってき
ます。
(そこではロシアは完全悪、グルジアは完全善の犠牲者。)
しかし、現地に行ってみれば別の視点が開けるのですね〜。
とにかく、グルジアが南オセチアを再統合することは、今回の戦争
で非常に難しくなった。
そして、ロシアは堂々と南オセチアにとどまることができます。
なぜか?
「私たちがいなければ、グルジアが再侵攻して、民族浄化をする」
という口実ができたから。
2、アプハジアを実質支配下に
グルジアから独立したがっているのは、南オセチアばかりではあ
りません。
もう一つアプハジア自治共和国がある。
ロシアはグルジアが攻めてきた機会を逃さず、アプハジアでも戦争
を開始。
同自治共和国からグルジア勢力を一掃しました。
今回の戦争で、ロシアは南オセチア・アプハジアに対する支配力を
強化しました。
3、欧州を分断
旧ソ連では、バルト3国が既にNATO入りを果たしました。
その他、ウクライナとグルジアがNATO入りを目指しています。
しかし今回の戦争で、グルジアのNATO入りは、遠のく可能性があ
ります。
なぜでしょうか?
欧州は二つに分裂しています。
一つ目の陣営は、(アメリカ)・イギリス・東欧諸国。
これらの国は、ロシアを敵視しており、「反ロ軍事同盟」であるNAT
Oにグルジアを加盟させたい。
東欧諸国は、1989年まで実質ロシアの植民地だったので、非常に
恐れているのです。
もう一つは、フランス・ドイツを中心とする西欧諸国。
これらの国々は、石油・ガスをロシアに依存していることから、対立
を望んでいない。
「グルジアなんて遠い国のために、俺たちがとばっちりをくらっては
たまらない」と思っている。
考えてみてください。
グルジアが既にNATO加盟国だったとしましょう。
すると今回の戦争はNATO(アメリカ + 欧州)軍 対 ロシア軍
の全面戦争ですよ。
当然ロシアは欧州むけの石油・ガスを止めたでしょう。
そして、戦場が拡大した場合、犠牲になるのは遠いアメリカではな
く欧州です。
この戦争は、西欧の恐怖が現実化することもあり得ることを証明し
た。
独仏は今後も、グルジアやウクライナのNATO入りに反対していく
ことでしょう。
ここまで、ロシアがえたもの。
ロシアが失ったものは?
1、一部の国で、ロシアは「悪の帝国」になった。
2、今回の事件によりアメリカで「ロシア脅威論が高まる。それでマ
ケインさんが勝てば、「G8から除外される」可能性が出てくる。
3、アメリカ・グルジアは、ロシアのWTO加盟に反対するだろう。
ロシアはWTOに加盟できない。
4、今後さらなる紛争が起これば、2014年のソチオリンピック開催に
支障が出る可能性がある。
う〜む。
どれも、深刻な打撃です。
▼グルジア
アメリカにそそのかされ、南オセチアに進攻したグルジア。
この国には明確な目的がありました。
つまり、南オセチアの独立を阻止し、再併合を果たすこと。
ところが、ロシア軍の猛反撃により、まったく逆の結果になった。
それどころか、アプハジアの独立も加速させる結果となった。
サアカシビリは得たものがなかったのでしょうか?
あります。
グルジア国民はロシアに憎しみを抱き、彼の元に一体化することで
しょう。
それと、ロシアに対抗するため、アメリカは軍事面・資金面の支援を
強化するでしょう。
▼日本の教訓
遠いカフカスで起きたこの戦争。
日本にも重要な教訓を与えてくれます。
そもそも今回の紛争は、「領土問題」により起こったのです。
領土問題といっても、「南オセチアはグルジア領なのかロシア領な
のか?」という話ではありません。
南オセチアは、「グルジア領なのか?独立国家なのか?」という話。
国際法上は、もちろんグルジア領。
それでグルジアは、アメリカをあてにして、大国ロシアがバックにい
ることを承知で南オセチアに進攻したのです。
ところが、アメリカがグルジアのために軍隊を動かすことはありませ
んでした。
1995年、中国とフィリピンが軍事衝突したときも、アメリカはフィリピ
ンを見捨てています。
ここから出てくる大きな疑念。
アメリカは日本の同盟国だが、
例えば中国が台湾を侵略したとき、
例えば中国が尖閣諸島を侵略したとき、
はたして軍隊を動かしてくれるのだろうか???
アメリカが、日本や台湾のために、核大国の中国やロシアと争うこと
はないのではないか?
もちろん日米同盟は、日本の安全保障の要です。
しかし中国が、「これまでの例を見るに、アメリカは日本や台湾のた
めにリスクを背負うことはない」と確信したら???
日本は、軍事的自立を急ぐ時期にきているのです。
(おわり)
↓
▼米ロ新冷戦のすべてを
●資料つきで全部知りたい欲張りな方はこちら。
=================================================================
●え”〜中ロ同盟が米幕府を滅ぼす???
仮想敵同士だった中国とロシア。
アメリカの執拗ないじめとカラー革命に激怒したプーチンは、ついに東の
ジャイアントパンダ(中共)と提携することを決意します。
日本人が知らないうちに(悪の?)薩長同盟は成立し、米幕府体制は崩
壊にむかいます。
素人目にもアメリカの覇権後退が明らかになってきました。
その真因を、中学生でもわかるように解説する(豊富な資料つき)
★ロシア政治経済ジャーナル 北野幸伯の新刊!
★★オンライン書店ビーケーワン社会・政治・時事部門1位!
★★★大新聞からも絶賛の嵐!
例
●朝日新聞07年11月18日
「ロシアの揺さぶり策から、アメリカの世界戦略に改めて気づくことができ
る本だ」
●産経新聞07年11月27日
「混迷する世界情勢についてユニークな視座を提供する書物が登場した。」
●読売新聞07年12月17日
「「日本は、いわば米国の天領。米国がしっかりしているうちはいいが、
中国やロシアが台頭したらどうなるか・・・。」
憂国の情に根ざしたロシア発の言論活動を今後も続けていく構えだ。」
▼
「中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日-一極主義vs多極主義」(草思社)
(詳細は→ http://tinyurl.com/yro8r7 )
PS2 「あとがき」からお読みください。
2008/08/18 【RPE】グルジア戦争、各国が得たもの・失ったもの
↓
http://www.mag2.com/m/0000012950.html