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あらゆる排外主義を克服し民族共生の展望を切り開こう本格的戦闘へエスカレート北京五輪の開会式が行われた八月八日、グルジア軍は分離独立をめざす南オセチア自治州に侵攻し、分離独立派が支配する州都ツヒンバリを攻撃、占領した。南オセチアとロシアのメディアは、グルジア軍の攻撃でツヒンバリは瓦礫の山と化し、約二千人の住民が死亡したと報じている。これに対してただちにロシア軍は大量の「平和維持部隊」を投入し、ツヒンバリを奪回するとともに、グルジアへの爆撃に踏み切った。戦火は同じグルジアからの分離独立を主張しているアブハジア自治共和国にも波及した。八月九日、アブハジアの分離派政府軍は、グルジア軍が占拠しているコドリ渓谷に侵攻し、グルジア軍を撤退させた。 ロシア・南オセチア・アブハジアとグルジアの親米派サアカシュビリ政権との戦闘に対して、米国のブッシュ政権はグルジアを支援してロシア軍の侵攻を激しく非難した。ブッシュ米大統領は、八月十一日に「ロシアの行動は劇的で野蛮な紛争拡大だ。ロシアは主権を持つ隣国を侵略し、民主的に選ばれたその政府を脅かしている」と述べた。米国はロシアのG8(主要国首脳会議)からの追放、WTOへの加盟の拒絶なども検討している、と言われる(8月14日「朝日」夕刊)。 旧ソ連・東欧ブロックに属していた親米派の諸国(ウクライナ、リトアニア、エストニア、ラトビア、ポーランド)も、こぞってグルジアとの連帯を表明し、ロシアとの対決の態度を鮮明にした。米国はこの機会を捉えて、ポーランド政府との間で、難航していた対ロシアを想定したMD(ミサイル防衛)システムの迎撃ミサイル基地をポーランド国内に置く交渉を合意に持ち込んだ。 ロシアとグルジアとの武力戦闘は、サルコジ仏大統領らの仲介で六項目合意(@武力不行使Aあらゆる軍事活動の完全停止B被害者に対する人道的支援の保障 Cグルジア軍の常駐地点への帰還Dロシア軍の戦闘開始以前のラインまでの撤退E南オセチアとアブハジアの安全保障と安定の手段に関する国際的議論の開始)が八月十三日に成立することによって停戦したが、言うまでもなく事態はなんら解決したわけではない。むしろ事態は「新米ロ冷戦」とも言うべき新たな緊迫の度を増しているのである。 石油・天然ガスをめぐる衝突南オセチアとアブハジアをめぐるロシアとグルジアの軍事的対立は、この間、一触即発ともいうべき緊張状況に達していた。アブハジアでは今年四月にグルジアの無人偵察機がロシア空軍機と見られる戦闘機に撃墜された。南オセチアでは七月三日から四日にかけて、州都ツヒンバリで激しい砲撃があり市民二人が死亡した。ロシア外務省は、この砲撃がグルジアによる攻撃だと非難する声明を発した。アブハジアのガリでは七月六日の深夜、カフェで爆発があり、四人が死亡した。分離派のアブハジア自治共和国バガプシ大統領は「グルジアが仕組んだ国家テロ」と批判し、グルジアとのすべての接触を停止すると声明した。グルジアの独立とソ連邦の崩壊を前後して、ロシアの支援の下にグルジアからの分離を求めてきた南オセチアとアブハジアとの紛争が起きたが、この間、こうした分離派の運動の活性化をもたらした一つの要因は、コソボがセルビアからの分離・独立を今年の二月に宣言したことであった。米国やEUの支援によるコソボのセルビアからの分離・独立の宣言は、ロシアと親ロ派分離運動勢力にとって「グルジアの領土的一体性」の保持を名目に、親ロ派の分離・独立運動を絶対に認めようとしない米国やEUのダブルスタンダードの欺瞞を意識させるものとなった。 こうした中で、南オセチアやアブハジアの分離・独立の動きを「ロシアの脅威」と見なしたグルジアのサアカシュビリ政権は、米国への軍事的依存を強め、NATOへの傾斜を急速に進めてきたのである。 グルジアは、米国の忠実な同盟者としてイラクに二千人の軍を派遣している。この数は米英両国に次ぐ三番目である。グルジア国内には米軍顧問団が駐在し、グルジア軍は米国の兵器によって武装されている。 米国とロシアにとってグルジアの戦略的重要性は、カスピ海からの石油・天然ガスパイプラインにとってグルジアが中継地点に位置していることもある。欧米諸国はカスピ海沿岸地域からの天然ガスパイプライン(BTCパイプライン)をアゼルバイジャン―グルジア―トルコというロシアを経由しないルートで稼働させている。他方、ロシアのメドベージェフ大統領はG8サミット直前の七月初旬にアゼルバイジャン、トルクメニスタン、カザフスタンのカスピ海沿岸三カ国を歴訪し、トルクメニスタンのベルディムハメドフ大統領との会談で、同国、カザフスタン、ロシアの三カ国を通る「沿カスピ海ガスパイプライン計画」の推進で一致した。こうしたロシアのガスバイプライン戦略は、EUに対する「エネルギー安全保障」によるロシアの影響力の拡大をねらったものであることは言うまでもない。 七月にロシアのメドベージェフ大統領が発表した新政権の外交指針となる「対外政策の概念」は、「新欧州安保条約」の締結の提言など、ロシアが大きな役割を果たす新しい国際秩序を模索するものになっている。「新概念」は「パートナーに協調の用意がなければ、ロシアは国益を守るため国際法に基づいて独自の行動を取る必要がある」と強調し、「新しい国際体制の形成にロシアは大きな影響力を発揮する」としている。 ここではウクライナやグルジアのNATO加盟の動きを牽制しながら「もはや伝統的な軍事政治同盟(NATOを指す)が、現在の挑戦や脅威に対抗できる保障はない」とクギを刺し、ロシア・EU・米国の「対等な関係」を基礎にした「新欧州安保」が打ち上げられている。つまりロシアの「大国」としての復活を背景にしたEUの分断、米国との「対等」な関係の構築という戦略的構図が描かれているのだ。 米国にとってそれは、明らかに国際的な「新冷戦」という「米ロ対決」の危機感を増幅させるものであり、グルジア・ロシアの軍事紛争はその例証として現れているわけである。 自決権の承認と諸民族和解われわれはグルジアのサアカシュビリ政権による南オセチア自治州への軍事的攻撃と住民虐殺を非難する。「グルジアの領土的一体性」の保全を名目に、南オセチア、アブハジアの自決権を認めず、分離・独立運動を軍事的・強権的に押しつぶすことを許してはならない。また「グルジアの主権」を理由に少数民族の自決権を認めず、コソボに対するものとは正反対のダブルスタンダードをもてあそぶ米国の姿勢を厳しく糾弾する。サアカシュビリ政権の南オセチアへの軍事侵攻を支えたのは、ブッシュ政権なのである。同時にわれわれはロシアのメドベージェフ・プーチン政権の、南オセチア・アブハジアへの「保護者」としての姿勢を楯にした、グルジアに対する大国主義的軍事侵攻をも厳しく批判しなければならない。 南オセチア、アブハジアの地位は、住民の自由に表現された意思に基づいてのみ決定できる、という原則を改めて確認することが必要である。その上で排外主義を克服した「民族和解共生」こそが問われている。 しかしロシアもまた民族自決権の擁護者どころではないことは言うまでもない。 「ロシアは何世紀もカフカス地方で安全と協力、進歩の保証人だった」。この言葉は、グルジアへの軍事侵攻にあたってロシア軍の攻撃を指導するために急きょ訪れた先で、プーチン・ロシア首相が語ったものだという(「朝日」8月16日)。 この発言に、カフカス民族を踏みにじってきたツァーリ帝国以来の「大ロシア排外主義」が露骨に表現されている。そしてまさに「グルジア問題」において、スターリンやオルジョニキッゼに代表されるボリシェビキ指導部内の大ロシア排外主義に対して生命をかけて「最後の闘い」を挑んだのがレーニンであった。これは決して過去の話ではない。プーチンの言葉の中にこそ、ツァーリ帝国からスターリニズム支配の時代を経て、今日まで綿々と貫かれてきた傲慢きわまる「大ロシア排外主義」が最悪の形で示されているからだ。何よりも彼らは、チェチェンでのジェノサイドの当事者である。 われわれは、米ブッシュ政権に支援されたグルジア・サアカシュビリ政権の南オセチアへの軍事侵攻に反対するとともに、メドベージェフ・プーチン政権のグルジア軍事攻撃にも反対する。平和・人権・民主主義・共生を求める労働者市民の声を、ロシア、カフカスの民衆に届けよう。 (8月17日 純) |