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http://mainichi.jp/select/world/news/20080804ddm007030039000c.html
アングル:現実の“かけら”を提示=アジアプレス・ビデオジャーナリスト玉本英子さん
◇アジアプレス・ビデオジャーナリスト、玉本英子さん(41)
今のイラクは、誰が正義で誰が悪なのか分かりにくい。だが、人を殺したり首を切ったりしているのが、私たちと同じ普通の人間であることを知ってほしい。
米同時多発テロ(01年9月)以降に8回、イラクで取材した。今年4月には武装勢力が流入したモスルへ入ったが、市民が公園でピクニックを楽しんでいた04年当時の様子は一変していた。ある女子中学校の学級では、半数以上の生徒が親友や家族を米軍やイラク軍の兵士などに殺されたと答えた。日本が支持した「自由のための戦争」が人々を苦しめている。
イラク軍の夜間パトロールに同行した。「テロリストをたくさん殺した」と語る兵士は、携帯電話の娘の写真にキスをした。4年前、バグダッドの武装勢力は布で顔を隠し「自衛隊も米軍同様に攻撃する」と気勢を上げたが、彼らも普通のおっちゃんで、下着のシャツとステテコ姿でビデオに映っている。普通でないのは、無抵抗の家族を米軍に殺されるような体験を持っていることだ。
政府側に拘束された武装グループの副隊長に話を聞いた。日雇い労働で家族4人を養う生活は苦しかった。爆弾を1発仕掛けて100ドルという高報酬にひかれたという。彼の仲間は05年5月に自爆攻撃を行った。狙いは警察官の採用面接会場。犠牲になった50人の多くは職を求める貧しい家庭の青年たちだった。
私は現実の“かけら”として映像を持ち帰り、提示し続けている。戦争は何をもたらすのか、断片をつなぎ合わせ、考えてもらいたい。【聞き手・花岡洋二】
毎日新聞 2008年8月4日 東京朝刊