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http://mainichi.jp/select/world/news/20080719ddm007030007000c.html
イスラエル:ガザ停戦1カ月 物資入らず住民失望 封鎖解除遠く、ハマスにも
【ガザ市(パレスチナ自治区)前田英司】パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム原理主義組織ハマスと、イスラエルの停戦は19日、発効から1カ月を迎える。イスラエルはこの間、ガザ境界の封鎖を緩和し、流通を禁じてきた建設物資などの搬入も認めた。しかし、ガザ住民らが期待した封鎖解除の見通しはなく、物資不足が深刻化する現地ではイスラエルだけでなくハマス政府へも不満と失望感が広がっている。
ガザでは停戦発効後も、一部武装勢力によるイスラエルへのロケット弾攻撃が散発的に発生。イスラエルはその報復として短期的な境界ゲートの開閉を繰り返してきた。
「2日もしたら工場閉鎖だ」。17日、ガザ随一の老舗アイスクリーム工場で経営者のムスタファさん(58)が肩を落とした。既にアイスキャンディーの棒がなくなり、製造を中止。カップ入りアイスを出荷する箱も入手できず、果物用の箱を再利用している。原料から包装材まですべて海外から調達してきたが、07年6月のハマスのガザ制圧を受けた境界封鎖で搬入量は激減。停戦後も状況は変わらず、ついに在庫が尽きたという。ムスタファさんは「停戦で経済が良くなるなんて、大うそだ」と声を荒らげた。
一方、サラミさん(37)が営むガザ市の衣料品店には品物があふれ、客足も絶えないが、「これは私が本当に売りたいものじゃない」と表情はさえない。輸入品を取りそろえた高級店と評判だったが、今は店内の7割がエジプト境界の地下に掘られたトンネルから仕入れた密輸品だ。「停戦なんて最初から期待していない」。サラミさんの憤りはガザを「敵地」とみなすイスラエルだけでなく、ハマスにも向かった。
ハマスはイスラエルとの停戦交渉時、「封鎖解除が不可欠」(ガザ・ハマス政府のシアム内相)と強調。ガザの他の武装勢力にも同様に説明し、イスラエル領へのロケット弾攻撃の中止を迫った。だが、一向に見えない解除の兆しに、ハマスへの反発も高まっている。
ハマスと対立する穏健派ファタハ系の武装組織「アルアクサ殉教者団」幹部で、ガザを統括するアミル司令官は「イスラエルを利しただけの停戦だ」と批判。停戦の範囲外のヨルダン川西岸自治区を含め、「イスラエルのいかなる(軍事)行動にもロケット弾の発射命令を下す」と言明した。
イスラム原理主義組織「イスラム聖戦」の戦闘員(26)は停戦後にロケット弾を撃ち、ハマスに拘束された。イスラエル軍が西岸地区で聖戦メンバーを急襲したことへの反撃だと訴えたが、「停戦破りだ」と天井からつるされ、暴行を受けたという。戦闘員は「ハマスは『封鎖解除』を盾に力で停戦を押し付けている。イスラエルと協力しているかのようだ」と吐き捨てるように言った。
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■ことば
◇ハマスとイスラエルの停戦
エジプトの仲介で合意し、6月19日に発効。停戦範囲はガザ地区のみ。相互の暴力停止とともに、ハマスはガザ境界の封鎖解除を、イスラエルはガザでとらわれている自国兵士の解放を要求している。ハマスに対抗するアッバス・パレスチナ自治政府議長は、停戦によるガザ情勢の改善をテコにパレスチナの再融和を進め、イスラエルとの和平交渉の弾みにしたいと狙うが、ハマスとの「和解」は進んでいない。
毎日新聞 2008年7月19日 東京朝刊